表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/134

第79話 EP10-5 急襲

自分が読みたい物語を、趣味で書いてます。

オリジナル小説のみです。

 このくに数年前すうねんまえまで、王国おうこく統治下とうちか安寧あんねい平和へいわ享受きょうじゅしていた。

 帝国ていこくぐん侵攻しんこうで、それはもろくもくずった。

 帝国は魔王まおう復活ふっかつさせ、魔王配下(はいか)魔物まものの力をり、圧倒的あっとうてきつよさで王国を征服せいふくした。国には魔物があふれ、秩序ちつじょうしなわれてしまった。

 魔物が見境みさかいなく人間にんげんおそい、人間はとりでみたいな町をつくってを守る、無法むほう世界せかいがここにはある。


   ◇


 オレはリード。十六(さい)の男で、茶色ちゃいろかみ魔物まものハンターだ。武器ぶき長剣ロングソード鉄板てっぱん補強ほきょうした灰色はいいろ革鎧かわよろい装備そうびし、あかいマントをまとう。

「ジラルド団長だんちょう! 帝国ていこくへいです! かずは百前後(ぜんご)全員ぜんいん武装ぶそうしてます!」

 軽装けいそう金板鎧ラメラーアーマーた男が大慌おおあわてでいきらせて、教会きょうかいんできた。二十(だい)前半ぜんはんほどで、こしには小剣ショートソード帯剣たいけんしていた。

 僻地へきち小砦しょうとりで自警団じけいだんにしては、武器ぶき防具ぼうぐととのっている。正規せいきぐん兵士へいしみの装備そうびである。

け! 患者かんじゃ民間人みんかんじんうらから避難ひなんさせろ! 帝国ていこくへいは、自分じぶん応対おうたいする!」

 ジラルドが、するど口調くちょう指示しじはっした。教会きょうかい神父しんぷではなく、まさしく騎士団きしだんひきいる騎士きし威厳いげんだった。

 オレは、なになにやらからず、狼狽うろたえる。こんなときこそ行動こうどう指針ししんをくれるはずの師匠エレノアさんは、なぜかたのしげに微笑びしょうしている。こんなときにかぎっててにならない師匠ししょうである。

うごくな! 反乱はんらん分子ぶんしども! 抵抗ていこう無駄むだだぞ!」

 こわれかけの両開りょうびらきのとびらそとから、えらぶった中年ちゅうねん男の怒鳴どなごえこえた。外のひかりから薄暗うすぐら室内しつないへと、黒鋼こくこう金属鎧プレートメイルまと帝国ていこく騎士きしんできた。ひくくて、ひたい禿げあがって、で、威厳いげんかんじさせない四十(さい)くらいのふとった男だった。

 つづいて、黒鋼こくこう軽金属鎧ライトプレート帝国ていこくへい十人ほどがはいってくる。手には、短めの槍(ショートスピア)にぎる。外に、もっとたくさんいるのが見える。

「これはこれは、帝国ていこくぐん皆様みなさま。そのように大勢おおぜいで、このような貧乏びんぼう教会きょうかいに、どのような御用件ごようけんでしょうか?」

 ジラルドが、ニコやかな笑顔えがおで、丁寧ていねいおだやかな口調くちょうで、深々(ふかぶか)あたまをさげる。

 いつのにか、こっちがわはジラルドとオレとエレノアしかいない。簡易かんいベッドにていた人たちも、治療ちりょうしていた人たちも、手伝てつだっていた人たちも、ハルシアも、いなくなっている。

 たぶん、オレたち二人だけがおくれた。たぶん、エレノアさんがうごかなかったせいだ。たぶん、エレノアさんが避難ひなんしようとしなかったから、オレまで避難ひなんそこねた。

いまさら、しらばっくれても無駄むだだ! おまえらが王国おうこくぐんのこりだと、密告みっこくがあった! 露呈し(バレ)ないとでもおもったか、おろかな反逆者はんぎゃくしゃどもめ!」

 帝国ていこく騎士きしが、ジラルドを恫喝どうかつした。

 王国おうこく帝国ていこくやぶれてから、まだ数年すうねんだ。かつては王国の騎士きし兵士へいしだった民間人みんかんじんなんて、めずらしくもない。

 魔物まものあふれたせいで、人間にんげんたい人間の戦争せんそう曖昧あいまい決着けっちゃくだったともく。王国おうこく軍人ぐんじんたたかいのつこともなく大勢おおぜいのこり、王族おうぞくいのちとした人数にんずうほうすくなかったらしい。あくまで、うわさである。

 ようするに、この帝国ていこく騎士きしのは、ただのかりだ。ジラルドが反乱はんらん分子ぶんしかどうかはいておいて、王国おうこくぐんの生き残りだとか、もと王国おうこく騎士きしだとか、よしんば王族の生き残りだったとしても、反逆者はんぎゃくしゃである根拠こんきょにはならないのだ。

 たたかいをてて農民のうみんになった王国騎士もいるとおもう。あたらしい人生じんせいもとめて教師きょうしになる王族おうぞくだっているかもれない。かつての身分みぶんとか、いまの身分とか、ほとんど意味いみさないほどに、この帝国くにわっている。

 だからつまり、この帝国ていこく騎士きし相手あいてに、はないは成立せいりつしない。はじめっから、コイツに釈明しゃくめいはない。コイツは、この教会きょうかいの人たちを、反乱はんらん分子ぶんししょうして排除はいじょしにた。

「そっちは、森の魔物まものハンター親子おやこだな?! あやしいとはおもっておったが、やはり、おまえらも反乱分子の一味いちみだったか!」

 帝国ていこく騎士きしが、オレたちをゆびさして怒鳴どなった。

あねよ」

師匠ししょうな」

 エレノアの渾身こんしんのボケに、素早すばや正確せいかくなツッコミをれた。

 ジラルドが、もうわけないとかおす。

んでしまってまない。こんなつもりではなかったのだ。ただ、自分じぶん留守るすあいだ、ハルシアさまたのみたかった」

あやまらなくていいわよ。こっちは、レジスタンスの手をりたくてさがしてたから。手間てまはぶけてたすかるわ」

 エレノアがハスキーボイスで、意味深いみしんにククッとわらった。完全かんぜんに、からぬことをくわだてているときのかおだった。


   ◇


 エレノアさんは、こわい。たたかいにおいて、一切いっさい容赦ようしゃのない戦闘狂せんとうきょうだ。

かたるにちたな、女! 帝国ていこくさからうおろものめ! この手で成敗せいばいしてくれる!」

 帝国ていこく騎士きしが、こしさやから長剣ロングソードく。黒鋼こくこうよろい黒鋼こくこうの長剣も、本人ほんにん不格好ぶかっこうゆえに不格好にしか見えない。

「おお、なんと、ズユギではないか! ひさしいな、見違みちがえたわ!」

 エレノアが、大仰おおぎょう身振みぶ手振てぶりで、帝国ていこく騎士きしこえをかけた。おもいがけず知人ちじん再会さいかいした、知人が出世しゅっせして立派りっぱになっていた、みたいなあかるい表情ひょうじょうだ。

なんだ、女? ……えっ、ええっ?! エっ、エレノア将軍しょうぐんっ?!」

 ズユギがおどろいた。傍目はために、ショックで心臓しんぞうまるのでは、くらいのリアクションだった。

【エレノア将軍しょうぐんって、まさか、あの『冷血れいけつのエレノア』か?】

【そんな、『帝国ていこく鬼女きじょ』はんだっていたぞ?】

 エレノア将軍しょうぐんに、帝国ていこくへいたちもザワつく。こころなしか、蒼褪あおざめて見える。

 ジラルドもおどろいている。オレも、エレノアさんの自称じしょう本当ほんとうだったのか、とビックリする。

 エレノアのかおには、微笑びしょうだけがある。帝国ていこくへい百人なんぞ眼中がんちゅうにない、みたいな余裕よゆうさえかんじられる。

「ねぇ、ジラルド神父しんぷさまいまたたかえる戦力せんりょくは、どのくらい?」

「こうなっては、けんまじえるほかあるまい。十分じゅうぶん練兵れんぺい装備そうび仲間なかまは、三十人ほどだ」

 ジラルドが、教会きょうかい裏手うらて視線しせんながした。そとに仲間がひかえているようだ。

「たったったったっ、たたった三十人で、なにができる?!」

 ズユギのこえ裏返うらがえる。同情どうじょうするほど動揺どうようしている。

「こっ、ここっちはっ、ひゃひゃっ、百人だぞ!」

真面目まじめ訓練くんれんつづけてる? 最後さいご実戦じっせん形式けいしき模擬戦もぎせんをしたのは? わたし指揮しきする三十人に、たった百人で自信じしんがあるの?」

 エレノアが、微笑びしょうのままいた。ながの目も、はしりあがるくちびるも、つめたい。対峙たいじすれば、なみ騎士きしではこころてつき、恐怖きょうふあしすくむだろう。

『ヴギィィィィィ!!!』

 教会きょうかいそとに、たかにぶ耳障みみざわりなごえひびいた。

大変たいへんだ! まち魔物まもの侵入しんにゅうしたぞ! いそいでげろ!」

 おびまど悲鳴ひめい複数ふくすうとおくにこえた。

「ばっ、馬鹿ばかめっ! このズユギさまに、なんさくもないとおもったか?! さあ、どうした、民間人みんかんじん魔物まものからまもらなくていいのか?!」

「まさか、小砦しょうとりでなかに、魔物をれたのか!? なんたる非道ひどうを! はや討伐とうばつせねば、おおきな被害ひがいるぞ!」

 今度こんどは、ジラルドが動揺どうようした。

 ズユギは、立場たちば逆転ぎゃくてんしたとばかりに上機嫌じょうきげんで、ガハハと大口おおぐちけてわらう。

「どうせ、税金ぜいきん満足まんぞくはらえん壁近かべちかくの貧乏人びんぼうにんどもだ! いくらのうが、ったことか! ついでにゴミ掃除そうじができて、一石二鳥いっせきにちょうだろう?!」

「このっ! 騎士きし風上かざかみにもけぬ卑怯者ひきょうものめ!」

 さきにジラルドがいきどおったから、オレはタイミングをいっした。まあ、いいけど。オレにはオレにできることがあるのだ。

ごえは、哭猿こくえんだとおもう。黒雲くろくもみたいなゴワゴワむくじゃらの大猿おおざるで、きにくい魔物ヤツ。ここらのザコよりはおおきくてつよいけど、たぶん、オレ一人でたおせるぜ」

 魔物まもの相手あいてであれば、オレのほうつよい。オレのほう知識ちしきおおい。

「リード、自警団じけいだんを十人同行(どうこう)させなさい。武器ぶき長槍ロングスピア実戦じっせん経験けいけんませるには、ちょうどいいでしょ」

「エレノアさんのほうは、二十人で大丈夫だいじょうぶ? 戦力差せんりょくさ(ばい)は、マズくない?」

「わざわざ敵地てきちんで、のこのこと狭地きょうち間抜まぬけに、わたしけるとでも?」

 でも、人間にんげん相手あいてであれば、エレノアさんのほうつよい。しくも、てき客観的きゃっかんてき証拠しょうこをくれた。

 エレノアが微笑びしょうする。かおわらっているのに、目はつめたく獲物えものを見つめる。

 エレノアさんは、こわい。たたかいにおいて、一切いっさい容赦ようしゃのない戦闘狂せんとうきょうだ。冷酷れいこくさにおいてならぶもののいない、味方みかたさえもふるえあがる、かつては帝国ていこく将軍しょうぐんだった人だ。



帝国ていこく征服せいふくされて魔物まもの蔓延はびこくにで女だてらに魔物ハンターやってます

第79話 EP10-5 急襲きゅうしゅう/END

読んでいただき、ありがとうございます。

楽しんでくれる人がいると、書く励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ