表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/134

第76話 EP10-2 少年→青年

自分が読みたい物語を、趣味で書いてます。

オリジナル小説のみです。

 魔物まものあふれるまえ時代じだい。このくにが、まだ王国おうこくだったころ物語ものがたり

 北部ほくぶちいさなむらちかくに、魔物がる森があった。森には、わすられたちいさくふるほこらがあった。祠には、満月まんげつよるひかる、といううわさがあった。

 村にらす幼馴染おさななじみの男の子と女の子が、うわさたしかめに、よるの森にった。


   ◇


 洞穴ほらあななかは、ほのかにあかるかった。不思議ふしぎ神秘的しんぴてき光景こうけいだった。

 本来ほんらいは、昼間ひるまでもくら場所ばしょだ。ぐちだけがひかりで明るい、が精々(せいぜい)だ。

「うわぁっ! ほらっ! 本当ほんとうに、ほこらひかってるよ!」

 プリシアが、はしゃぐ。ほお紅潮こうちょうさせ、ひとみをキラキラとかがやかせる。

 いえ一軒いっけんほどのひろさの洞穴ほらあなである。おく岩壁いわかべそばに、つち地面じめんからいわを、はこかこっただけの、簡素かんそつくりのほこらがある。手入ていれするものもなく、ボロボロで、おそなえも、蝋燭ろうそく一本いっぽんもありはしない。

 本来ほんらい意味いみは、わすられてひさしい。それが信仰しんこう対象たいしょうだったのか、禁忌きんきたぐいだったのかすら、むらるものはいない。ただ、ほこらがあると、満月まんげつよるひかると、不思議ふしぎスポットとしてだけかたられる。

本当ほんとだ! ひかってる!」

 リードは、ビックリした。困難こんなん宝物たからものを見つけたような、興奮こうふんがあった。

 ほこらではなく、祠のなかいわひかっている。岩にはたて亀裂きれつはしっていて、そこからひかりれる。確信かくしんはなく、そんながする。

 ほかには、ほこらちかく、地面じめんあないている。子供こどもならとおれる、大人おとなおおきくない女の人なら通れそうな、せまい穴である。穴のおくは、くらくて見えない。

 おとこえる。よるの森の音ではなくて、はげしい水音みずおとに聞こえる。

 興味きょうみかれて、ちかづいた。リードは、この洞穴ほらあなをほとんどらなかった。

「そのあなは、地下ちか水脈すいみゃくつながってるんだって。魔法まほう先生せんせいってたわ」

 プリシアが、リードのよこからのぞむ。

 やっぱり、水音みずおとだ。暗闇くらやみからこえる水音は、なんだかこわい。

「それより、ほこらよ。どうしてひかってるのか、調しらべてみよ」

 プリシアが、はしゃぐこえでリードの手をいた。

「うん。そうだね」

 リードもたのしくて、こえはずんだ。

 洞穴ほらあなぐちから、小石こいしおとがした。

 このさきは、なぜか視界しかいがぼやける。あかいろおおわれて、おもせない。


   ◇


 リードは目をました。

 板塀いたべい鎧戸よろいどのある、リードのいえよりは小綺麗こぎれい部屋へやだ。やわらかい布団ふとんの、小綺麗なのベッドのうえだ。

 ベッドがもう一つと、木のちいさなテーブルが一つある。むら一軒いっけんだけある宿屋やどやていて、あれをもっと小綺麗こぎれいにしたかんじである。

 キィときしんで、とびらひらいた。

かった、目をましたか、少年しょうねんきずいたまないか? 自分じぶん名前なまええるか?」

 大人おとなの女の人がはいってきた。ハスキーなこえをしていた。見覚みおぼえのないような、ほんのみじか時間じかんだけ見たことのあるような人だ。

 なぜか、視界しかい安定あんていしない。目の焦点しょうてんわない。世界せかいがふわふわとれる。

「あ、あの。プリシアは。……えっと、その、一緒いっしょにいた女の子は」

 部屋へやを見まわす。プリシアはいない。リードと女の人だけがいる。

 自分じぶんたしかめる。むね包帯ほうたいかれる。ふくが、自分のとはちがう。

 女の人が、悲痛ひつう面持おももちでうつむく。くやしげにくちびるむ。

「シュッツをめられず、まなかった。いいや、ちがうな。帝国ていこく暴挙ぼうきょに、断固だんことして反対はんたいする気概きがい影響力えいきょうりょくもない将軍しょうぐんで、本当ほんとうに済まなかった」

 その謝罪しゃざいは、リードには意味不明いみふめいだった。それよりも、プリシアをさがして、部屋へやを見まわした。

「あ、あの、プリシアを。……えっと、その、一緒いっしょにいた女の子を見なかった? どこにいるか、らない?」

 リードのうつろな質問しつもんに、女の人が、いよいよくやしげにくちびるむ。

「あの洞穴ほらあなは、証拠しょうこ隠滅いんめつのためだろう、くずされていた。さがしてはみたが、見つけられたのは、これだけだ。たしか、その女の子がくびにさげていただろ?」

 女の人のが、リードのまえされた。てのひらに、半分はんぶんれた不思議ふしぎ模様もようのコイン、みたいな綺麗きれい金属板きんぞくばんがあった。プリシアが大事だいじにしていたペンダントだった。

 リードは、ペンダントを凝視ぎょうしする。ふるえる両手りょうてをそっとばす。てのひらにあるペンダントを、簡単かんたんくずれてしまう珠花たまはなるみたいにやさしくつつむ。

「……う、うっ、うっ、うわぁぁぁっっっ!」

 く。ペンダントを両手りょうてでギュッとにぎって、泣く。視界しかいなみだにぼやけて、でも、れるのをやめる。

まない、少年しょうねん本当ほんとうに、済まない」

 女の人も、いていた。リードをやさしくきしめて、ともかたふるわせていた。

 そして、リードは、仲良なかよしの幼馴染おさななじみも、故郷こきょうむらも、平穏へいおんらしも、うしなったとった。大事だいじなものすべて、このときに失ったのだった。


   ◇


 王国おうこく帝国ていこく征服せいふくされた世界せかい魔物まものあふれる時代じだい。リードの少年しょうねんは、精悍せいかん青年せいねんとなっていた。

まいったな。森のおくまでたのに、とり一羽いちわもいやしないぜ。ぶらでかえったら、エレノアさんにおこられるよなあ」

 リードは、びた茶色ちゃいろ前髪まえがみきあげながらボヤいた。

 故郷こきょううしなったリードは、エレノアとらしていた。帝国ていこくとなった王国おうこく北部ほくぶきたはしで、魔物まものハンターとなった。

 長剣ロングソードあつかいは、エレノアにおそわった。二人の拠点きょてん、というか小屋こやみたいな簡素かんそいえのある森で、魔物まものりまくった。魔境まきょうばれる帝都ていとからはとおく、よわ魔物ヤツしかないけれど、相応そうおう実力じつりょくについたはずだ。

 いまでは、魔物まものあふれるこんな時代じだいでも、この森にはほとんど魔物がない。ちかくの小砦しょうとりでひとたちも、比較的ひかくてき安心あんしんして森にはいれると、感謝かんしゃしてくれる。

 正直しょうじきなところ、帝国ていこくへの復讐ふくしゅうなんてだいそれたことは、どうでもくなっている。このまま魔物まものハンターとしてきるのもわるくない、とおもう。プリシアの存在そんざいも、年月ねんげつ経過けいかおもわりつつある。

「くっ……」

 くびにさげたペンダントを、ギュッとにぎる。プリシアのペンダントが、リードにおもさせる。プリシアとともごした日々(ひび)が、やさしい微笑ほほえみが、リードをまもろうとした背中せなかが、鮮明せんめいおもかぶ。

「それでも、シュッツの野郎やろうだけは」

 リードは、いかじりにつぶやいた。プリシアのかたき、シュッツだけは、みずからのたなければまなかった。つよさをもとめる原動力げんどうりょくに、きる意味いみすべてになっていた。

「きゃーっ!」

 森のなかで、少女しょうじょ悲鳴ひめいこえた。ちかい。

ちかくの小砦しょうとりでのヤツか? まさか、護衛ごえいもなしに森にはいったんじゃないだろうな」

 リードは、こしさやから長剣の鯉口こいくちり、あかいマントをひるがえしてした。悲鳴ひめい方向ほうこうは、木々(きぎ)こうでも、あるれた森だからまよわない。

「グワゥッ」

 木々(きぎ)隙間すきまから、魔物まものごえこえる。姿すがた垣間かいま見える。よごれた黒灰色くろはいいろの、おおかみっぽいヤツだとおもう。

 リードはける。素早すばやみき合間あいまう。長剣をきつつ、りあげで、とおりすぎざまに魔物をる。

 魔物まものえて、宝石ほうせきちた。よくいるザコだ。退治たいじ容易たやすい。

「おい、アンタ。無事ぶじか? 怪我けがはないか?」

 こしかしてすわ少女しょうじょに、こえをかける。リードとおなじ十六(さい)くらいの少女が、一人だけである。比較的ひかくてき安全あんぜんな森だからと、護衛ごえいもつけずにはいったのなら不用心ぶようじんぎる。

魔物まもの滅多めったないが、るときはるんだぜ。つぎからは、ちゃんと自警団じけいだん護衛ごえいたのめよ」

 善意ぜんい忠告アドバイスした。数年すうねんを口のわるいエレノアにそだてられたから、やさしい言葉ことばらない。こわったばかりの少女しょうじょには、きつい物言ものいいかもれない。

 まあ、口の悪いエレノアに育てられたから、仕方しかたない。

「あ、あのっ、かっ、感謝かんしゃいたします。おかげで、たすかりましたわ」

 少女しょうじょが、リードを見あげて、感謝かんしゃした。そだちのさそうな、おしとやかで気品きひんのある言葉遣ことばづかいだった。見た目も、はかなげに華奢きゃしゃで、教会きょうかいくろいシスターふくで、薄緑色うすみどりいろながかみだ。

 いや、いや、そんなことより、リードはおどろいた。そんなはずがない、ありないとかっていても、プリシアが成長せいちょうしたらこんなだったろうなと、プリシアの面影おもかげかんじさせるかおをしていた。



帝国ていこく征服せいふくされて魔物まもの蔓延はびこくにで女だてらに魔物ハンターやってます

第76話 EP10-2 少年しょうねん青年せいねん/END

読んでいただき、ありがとうございます。

楽しんでくれる人がいると、書く励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ