第46話 EP8-6 フェトの戦い
自分が読みたい物語を、趣味で書いてます。
オリジナル小説のみです。
この国は数年前まで、王国の統治下で安寧と平和を享受していた。
帝国軍の侵攻で、それは脆くも崩れ去った。
帝国は魔王を復活させ、魔王配下の魔物の力を借り、圧倒的な強さで王国を征服した。国には魔物が溢れ、秩序は失われてしまった。
魔物が見境なく人間を襲い、人間は砦みたいな町を造って身を守る、無法の世界がここにはある。
◇
フェトは、受付カウンターに張りついた。受付嬢に、依頼要項を記入した書類を差し出した。
「こちらの内容で、募集をかけてくださいませ。報酬は、わたくしが独断で動かせます金額ですから、すぐに準備できますわ。通信魔法用の宝石を提供しますので、指定しました小砦にも募集をかけていただけますかしら?」
小柄で背が足りなくて、背伸びしてカウンターに両腕でしがみつく。巨乳が圧迫される。
フェトは、ロリ巨乳の魔物研究者である。見た目は女の子で、小柄で華奢で普段着の上に白衣を着て、長い金髪を上品に編み込んで、細い銀縁の丸眼鏡をかけ、薄化粧で小綺麗にして、胸が大きい。
「フェト様、重大な情報の提供、ありがとうございます。上からは、協力を惜しまぬように指示されております」
二十歳手前くらいの若い受付嬢が、お辞儀をして、書類を確認する。整った緑髪、濃い化粧、解れ一つない制服と、新人職員っぽい身嗜みの固さが見て取れる。
「北の大砦の危機とのことですので、最優先で手続きさせていただきます。ですが、周辺の小砦に資金の提供を要請して、十分な報酬を確保してからの募集をお勧めします。初見で条件の悪さに敬遠した依頼を再確認する魔物ハンター様は少ない、と聞いていますので」
「いいえ、すぐに募集をお願いいたしますわ。三日で救助すると明言しましたから、悠長に資金集めに裂く時間はありませんの。このような、規模と難度を考えますと雀の涙の報酬で、依頼を受けてくださる方がいらっしゃらないのは、重々承知でしてよ」
フェトは、凛とした口調で、迷いなく断言した。
◇
「ほら、ソイユニ! 見なさい、ロリ巨乳ちゃんです! こんなに早くロリ巨乳ちゃんと再会できるなんて、奇跡です、これはもう結ばれる運命です!」
清楚なる白百合が、キンキンと高く響く声をあげた。
「二人が戻るまでギルドに居座る、って言って聞かなかっただろ、清楚。もう、ただのストーカーだろ」
ソイユニが、少年のガラガラ声でツッコミを入れた。
清楚なる白百合は、最強の魔物ハンターのうちの一人と評される、ロリ巨乳好きである。二十歳くらいの華奢な美女で、聖職者を思わせる純白の清楚なドレスローブを纏い、銀色の柔らかく膨らむ長い髪で、人の頭よりも大きな白い鈍器ハンドベルを腰にさげる。
ソイユニは、清楚なる白百合の唯一の固定パーティメンバーで、人間の子供に近い容姿の、少し耳の尖った亜人種、ホビットである。掠れた茶髪で、分厚い布の服に分厚い布のマントで体を覆う。
「で、北の大砦の危機ってのは、何だ?」
ソイユニと清楚が、横から依頼要項を覗く。
「おいおい、マジか?! あの辺りのホワイトウルフの群れって、大きいのは千頭じゃあ済まないだろ? また面倒ごとに首を突っ込んだもんだな」
ソイユニも清楚も、驚く。驚くで済むのは、逆に驚く。北の大砦がホワイトウルフの群れに占拠された、なんて、まずは誤報を疑うべき一大事である。
「大砦から魔物の群れを排除するなら、ハンター百人は必要だよな。ホワイトウルフ単体は強くないから、並のハンターでも戦力になるのが救いか。それでも、これっぽっちの報酬じゃあ、一人も集まらないだろ?」
「ソイユニ! つまり、ロリ巨乳ちゃんが困っています! グランゲーターの宝石を提供して、少しでも助けになってあげなさい!」
「あれは、清楚の提案で、地下水路の補修用に寄付しちまっただろ」
ソイユニが、呆れ顔で肩を竦めた。
「そうでした! でしたら、私が、その依頼を受けます! ロリ巨乳ちゃんのために、北の大砦の人々のために、この命を懸けて戦います!」
清楚が、キンキンと高く響く声で宣言した。
周囲の魔物ハンターたちの視線が集まる。広いフロアは混雑して、人が多い。ほぼ一般人のフェトでは、視線の多さに気後れしてしまう。
「受けるのは、いいぜ。だが、正当に、高額の報酬を貰う。清楚は、こんなでも、最強の一人だからな」
ソイユニが、真顔で告げた。
「報酬は、ロリ巨乳ちゃんの添い寝です! 昼寝の、添い寝、二時間、一回分で、手を打ちます! 減額は、一分一秒たりとも、一切の交渉を受けつけません!」
清楚も真顔で、キンキンと高く響く声で告げた。
周囲の魔物ハンターたちから、笑い声が漏れる。嘲笑ではなく、苦笑である。清楚なる白百合は、ここでは信頼が厚く、人気者で、ロリ巨乳好きで有名でもある。
ソイユニが、呆れ顔で頭を抱える。気苦労が多そうである。
「だ、そうだ。最強の一人の報酬としては、破格の安さだと思うぜ。どうする?」
「そのお申し出は、遠慮させていただきますわ」
フェトは、微笑して答えた。
「だよなあ。清楚と添い寝は嫌だよなあ」
「いいえ。そうではなくて、そういう意味でもありませんけれど、正当な金額の報酬を用意したいと、わたくしは考えておりますの」
フェトは、言葉の意味を深読みして赤面興奮する清楚を見あげ、微笑した。
◇
フェトは、内容はそのままで依頼を出した。張りつく受付カウンターから跳ねるように離れ、混雑するフロアの隅の待合席に移動した。
「わたくし、魔物ハンターの皆様は、もっと利己的で、お金のためにしか動かない、強欲な方ばかりだと思っておりましたの」
ガタつくイスに行儀よく座り、木のカップに注がれた紅茶を飲み、ボロいテーブルにカップを置く。小さな手が微かに震えて、カタカタとカップが鳴る。
「でも、ユウカさんと出会いまして、一緒に小砦を巡りまして、認識が変わりましたわ。少なくとも、ユウカさんは、各地でお会いした皆様方は、情に厚くて、命懸けで周囲の人々を助けようとなさいます、心優しい方ばかりでしたもの」
出した依頼がどうなるかは、待って経過を見守るしかない。フェト自身にできることは、全てやった。
「そりゃまあ、清楚やアイツは、そうだがなあ」
ソイユニが、困り顔で頭を悩ませる。最強の一人の相棒ゆえに、知識も経験も多いゆえに、この依頼が良い結果になる可能性は低い、と見えてしまうに違いない。
「確かに、北の大砦の危機、多くの人命の救助、ピンクハリケーンの名前、と注目される要素は少なくないぜ。だが、命を懸ける決め手は、やっぱり報酬だ。金で命を懸けるヤツらは、結局、金でしか動かないんだぜ」
「ソイユニ!」
厳しい口調のソイユニの頭を、清楚が叩いた。スパァンッ、と軽快な音がした。
「わたくしも、ソイユニさんのおっしゃる通りだと思いますわ」
フェトは微笑して、木のカップを両手で持って、小さな口に運ぶ。紅茶は甘く、温かい。
「でも、だからこそ、信じていますの。一緒に巡りました小砦にも、同じ依頼を出していただきますの。ですから、ユウカさんが今日まで積み重ねていらしたものが、ここで実を結びますと、そんな予感がいたしますの」
予感というよりも、期待とか、希望的観測と呼ぶべきかも知れない。信じているのではなく、そうなってほしいと望んでいるだけかも知れない。
もしも三日では救助できなかったら、手遅れになってしまったらと、不安がある。不安に負けそうで、気を紛らすために、考えを言葉にする。責任の重圧に堪らず、声を出す。
フェト自身、微かに震える小さな両手を、自覚せざるを得なかった。
帝国に征服されて魔物が蔓延る国で女だてらに魔物ハンターやってます
第46話 EP8-6 フェトの戦い/END
読んでいただき、ありがとうございます。
楽しんでくれる人がいると、書く励みになります。




