表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/134

第29話 絶体絶命の籠

自分が読みたい物語を、趣味で書いてます。

オリジナル小説のみです。

 このくに数年前すうねんまえまで、王国おうこく統治下とうちか安寧あんねい平和へいわ享受きょうじゅしていた。

 帝国ていこくぐん侵攻しんこうで、それはもろくもくずった。

 帝国は魔王まおう復活ふっかつさせ、魔王配下(はいか)魔物まものの力をり、圧倒的あっとうてきつよさで王国を征服せいふくした。国には魔物があふれ、秩序ちつじょうしなわれてしまった。

 魔物が見境みさかいなく人間にんげんおそい、人間はとりでみたいな町をつくってを守る、無法むほう世界せかいがここにはある。


   ◇


 見張みはやぐらから、おりられなくなった。

 アタシはユウカ。まだ十六(さい)可憐かれんな少女で、両刃りょうば大斧おおおの白銀はくぎんのハーフプレートメイルを愛用あいようする魔物まものハンターだ。ピンクいろ長髪ちょうはつで、女にしてはたか筋肉質きんにくしつむねがなく、『ピンクハリケーン』の二つ名でばれる。

 かべかこ工事中こうじちゅうのホトクの森に、多数たすう魔物まものはいんだ。千足氷虫せんぞくひょうちゅうばれる、天候てんこうゆきえるレベルの魔物も、見失みうしなったけれどまだどこかにいるはずだ。

 見張みはやぐらは、ホトクの森をかこむために建設中けんせつちゅうかべの、上端じょうたんにある。籠型かごがたで、四隅よすみはしらたかめに三角さんかく屋根やねがつけられている。ここには、アタシと、フェトと、ジョッテンと、オッサンがお用心棒ようじんぼうの四人がいる。

 フェトは、ロリ巨乳きょにゅう魔物まもの研究者けんきゅうしゃである。見た目は女の子で、小柄こがら華奢きゃしゃ普段着ふだんぎの上に白衣はくいて、なが金髪きんぱつ上品じょうひんんで、ほそ銀縁ぎんぶち丸眼鏡まるめがねをかけ、薄化粧うすげしょう小綺麗こぎれいにして、むねが大きい。

「あちらは、北部ほくぶでは中堅ちゅうけんどころの魔物まものですわね。あちらは……」

 フェトが爪先立つまさきだちで背伸せのびして、見張みはやぐらかご三角さんかく屋根やねあいだ空間くうかんから、下方かほうの森をのぞく。そらから無数むすうゆきが、森へとまれてえる。しばらくすると、ゆかすわり、えた小さな手をこすわせ、このあたりの地図ちずなにやらむ。

 ジョッテンは、せてこしひくい、建設けんせつ現場げんば職員しょくいんである。みじか黒髪くろかみ七三しちさんけ、黒縁くろぶち眼鏡めがねをかけ、たび道中どうちゅうのようなあつめの布服ぬのふくる。休暇きゅうかにハイキングに役所やくしょ職員しょくいんっぽくもある。

神様かみさま、どうか、どうか、いのちばかりは……」

 デスクワーク専門せんもん職員しょくいんに、この絶体絶命ぜったいぜつめい状況じょうきょうはキツい。ひざまずき、手をわせて、ずっとかみいのっている。

 オッサンがお用心棒ようじんぼうは、ゴツいオッサンがおで、不愛想ぶあいそうで、鎖鎧チェインメイルにハルバードで武装ぶそうした大男おおおとこである。ハルバードが普通ふつうのハルバードよりも一回ひとまわおおきいので、こうランクの魔物まものハンターにちがいない。

「……」

 オッサンがお用心棒ようじんぼうは、ゆか胡坐あぐらをかいて、無言むごんとおす。

「あー、やっぱり、もうわけないけど。あのなかを、フェトとジョッテンさんをれて、きて突破とっぱできるがしないわ。アタシひとりなら、まだしも」

 アタシは、だまっていられなくて、あたまの中に渦巻うずままよいを口にした。

「かとって、ここにかくれてても三日とたずに魔物まものに見つかるわよね。ちかくの小砦しょうとりでから救助隊きゅうじょたいるまでなんて、えられるわけがないのよ」

 アタシの中に、自暴自棄じぼうじきちか思考しこうめぐる。

 フェトをまもりきれない。フェトだけでもがす手段しゅだんすらない。護衛ごえいやとわれたのに、なさけない。

 昨日きのうしハンターの少年は無事ぶじだろうか。今朝けさ食堂しょくどうで、ってはなした。

 昨日きのうはたくさん報酬ほうしゅうもらえた、とよろこんでいた。今日きょう魔物狩まものがりにく、とりきっていた。たくさんかせいで故郷こきょうむら凱旋がいせんする、と息巻いきまいていた。

 それが、こんな状況じょうきょうになってしまって、無事ぶじでいるか心配しんぱいだ。

 ……いや、しハンターの少年が、こんな状況をきてげきれるわけがない。結末けつまつは、かんがえるまでもなくあきらかだ。

 じゃあ、建設けんせつ現場げんばほうは、どうだ。せる魔物まものづいて、警笛けいてきっていた。避難ひなんっただろうか。

「あぁもうっ。どうしろってのよ」

 アタシはあたまかかえてうずくまった。かんがえるのは苦手にがてだ。むずかしいのは苦手だ。


   ◇


「あああっ……。もう、もう、駄目だめだぁ……。神様かみさま、神様……」

 ジョッテンが、ブツブツブツブツと、かみいのりをかえす。いよいよひたいゆかこすりつける。

「ジョッテンさん。わたくし、すこめずらしいしなっておりますの。ごらんになってみませんかしら?」

 フェトがゆかすわって、微笑ほほえんで、小さな手でジョッテンのふるえる手をにぎった。フェトのこえも少し震えていた。

 ジョッテンがわずかにかおをあげる。視線しせんさきに、フェトが小さなてのひらす。

 てのひらには、小指こゆびさきほどの大きさのしろ宝石ほうせきめられた、きんくさりのペンダントがる。

「これは、おと記録きろくできます、魔法まほうしなですのよ。わたくしの卒業そつぎょういわいに、ははがプレゼントしてくださいましたの」

 しろ宝石ほうせきから、おとながれる。

『エングレイス シュムル レリシモ♪ エフィミア シュターク レリシア♪』

 数年すうねんまえ流行はやうただ。アタシでもっていた。

「……ああ、ああ。もうわけありません、みだしてしまって、申し訳ありません。だいおとこが、おずかしいかぎりです」

 ジョッテンが、ふるえる両手りょうてで、フェトの小さな手をにぎった。いていた。

 フェトは、もしかしたら、この四人の中で一番いちばんいている。みだすジョッテンを気遣きづか余裕よゆうまでのこす。アタシにもオッサン用心棒ようじんぼうにも、そんなものはない。

 アタシは、あたまかかえたまま、横目よこめにフェトのほうを見た。フェトと目がった。ジッとこっちを見ていた。

宿泊しゅくはく施設しせつ避難ひなんしますのも無理むりですわね。大門だいもんまえも、魔物まものだらけでしてよ。とてもではありませんが、ちかづけませんでしょう」

「あー、あっちも魔物まものにバレちゃったか。となると、宿泊しゅくはく施設しせつほうげるのも、なしね。もし魔物のかこみを突破とっぱできても、大門だいもんけてもらえないだろうし」

 いまのアタシの口からは、絶望ぜつぼうしかてこない。魔物まものハンターだからこそ、今が絶望(てき)だとかってしまう。

 不甲斐ふがいない。こんなロリ巨乳きょにゅうの、ともだちのようないもうとのような、見た目は子供こどもすらまもれない。ランクSの魔物まものハンターとはやされても、いざというときにやくてない。

「あぁっ、もうっ! こうなったら、したにおりて、魔物まものを一体でもおおたおしてやるわ! ちかくに魔物がいなくなったら、アンタらはいちばちか、ここからおりてげて!」

 アタシは自棄やけになった。ちあがり、背負せお大斧おおおのまと白銀はくぎんよろいかる点検てんけんした。

「ユウカさんでも、それは無謀むぼうぎますわ」

 フェトが、ひろげた地図ちずを見つめて、冷静れいせい意見いけんした。

無謀むぼうひゃく承知しょうちよ!」

おれともこう、ピンクハリケーン。ランクAハンターとして、依頼いらいたすために、最後さいごまで力をくしたい」

 オッサン用心棒ようじんぼうちあがった。鎖鎧チェインメイルがガチャリと、覚悟かくごめたおもおとった。

 それでこそ、こうランクハンターだ。最後さいごの最後まで絶対ぜったいあきらめない。無茶むちゃ必要ひつようなら無茶をとおし、奇跡きせきしかなければ奇跡すらこす、そんな気概きがいむねたたかうのだ。

「ありがと。心強こころづよいわ」

 アタシは無理むり微笑びしょうして、うなずく。かがみ、昇降口しょうこうぐち床板ゆかいたに手をかける。

「おちになってくださいませ」

 フェトが、つよ口調くちょうで、ふたたびアタシを制止せいしした。

 ほそ銀縁ぎんぶち丸眼鏡まるめがねおくつぶらなひとみが、アタシを見あげて、まよっていた。地図ちずさえるちいさな手が、小刻こきざみにふるえていた。ちいさな口が、覚悟かくごめたように、ゆっくりとひらいた。

「わたくしに、ひとつだけ、あんがございます。みなさんのいのちを、不肖ふしょうこの小娘こむすめに、ゆだねてはいただけませんでしょうか?」

 つぶらなひとみに、決意けついちる。ぐに、アタシを見つめる。これ以上いじょう言葉ことばらないと、ちいさなくちびるつよむすぶ。

 そんなことをかれても、こっちは最初さいしょから万策ばんさくきている。ゆだねるもなにも、いのちほうげる直前ちょくぜんである。

「まあ、フェトがそううなら、いいわよ?」

あんしてもらえると、たすかる。たたかうのは得意とくいだが、あたま使つかうのは不得手ふえてだ」

「おねがいします! なにもしなければ、どうせにますから! お願いします!」

「えっ? あ、あの、みなさん。いのちかっていますのに、決断けつだんかるすぎませんことかしら?」

 フェトが、困惑こんわく気味ぎみ口元くちもとらせた。小さな手は、もうふるえていなかった。



帝国ていこく征服せいふくされて魔物まもの蔓延はびこくにで女だてらに魔物ハンターやってます

第29話 絶体絶命ぜったいぜつめいかご/END

読んでいただき、ありがとうございます。

楽しんでくれる人がいると、書く励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ