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7.正式に飼い猫になりました



「にゃーご、にゃん、にゃ!うーーーっ!」

「ごめん、ごめんよラナ。もう怒らないで」


エスト失踪事件から一夜明け。エストと恵麻は何とか、拠点の小屋へと戻ってきた。



恵麻は彼の怪我が何故か治ったことを確認すると、思い切り彼の背中や頬を殴った。肉球で。


だって、心配したのだ。そしてその心配は的中して、エストは大怪我を負って倒れていた。


よくわからないがあの奇跡が起こらなければ、エストは死んでいたはずだ。

一体どうしてこんなところに一人でいたのか、恵麻は腹が立って仕方がなかった。



「ごめんね。心配をかけたよね。ごめん」

「ふーっ!」

「ああ、そんなに毛を逆立てないで。悲しい」

「…にゃっ」


エストがしょんぼりすると、恵麻は罪悪感に苛まれる。

いかんせんこの男、顔がいいのだ。イケメンのしょぼん顔など、漫画の中でしか見たことがない。

結構長い時間森の奥で生活しているというのに、清潔感さえ失われていないのは、もはや何かの術だとしか思えない。ヒゲとかどうしてるんだろ。


「…にゃう」

「うん、ありがとう」


恵麻がエストのしょぼん顔に溜飲を下げて彼の膝に乗ると、エストは嬉しそうに恵麻を撫でた。


「急にいなくなって、ごめんね。ちょっと覚悟を決めて、森の大精霊様を探しに行ったんだ」

(大精霊…?)


なぜ大精霊に?意味が分からず、恵麻は首をかしげる。


「ラナは会ったことがない?この森にはね、森の大精霊様が住んでいらっしゃるはずなんだ。だからこそこんなに精霊が多く、美しい」


どうやら精霊が住む森というのは一般的ではないらしい。大精霊というくらいだから、偉い精霊だろうか。


「今は大精霊様の代替わりの時期だ。大士が動くとすれば、この時期を逃すはずはない。正直、国を追われて、もう私にはできることがないと思っていたんだけれど…、ラナと出会って、覚悟を決めたんだ。だから大精霊様に会う必要があるんだよ」

「にゃあ…?」


正直、エストの言っていることの半分も理解できなかった。代替わりとはなんだろう。

でもとにかく、エストが何らかの覚悟を決めたことは、彼の表情から分かった。


「大精霊様に会うなんて、普通の人間には無理だ。何が起きるか分からなかったから…ラナを危険な目にあわせたくなくて、一人で行ったんだ。でも、今回のことでわかったよ」


エストは恵麻を抱き上げると、鼻と鼻がくっつきそうなほど至近距離で、恵麻の瞳を見つめた。


「ラナは私を探して、助けに来てくれた。…思えば最初から、そうだったね。ラナは、いつだって私の側にいて、私を救ってくれる。ラナは私の大切な相棒だ。もう、片時も離れたくない。…これからは私がラナを守ると誓うよ。だから、これからも、たとえこの森を出ることになっても…一緒に来てくれるかい?」


もし人間の姿で言われたら情熱的なプロポーズかと思うようなセリフを至近距離で言われ、さすがに猫の恵麻も少々ドキドキする。


(…でも、すっごく嬉しい。エストも私を、相棒だと思ってくれてたんだ)


誰かと心を通わせるのがこんなにも嬉しいと感じたのは、いつぶりだろうか。

元の世界で人として生きていた時も、こんな温かい気持ちは、味わったことがなかった。



「にゃー!」

「ふふ、ありがとう。大好きだよ、ラナ」


エストは恵麻の頭に軽くキスをすると、嬉しそうに胸に抱いた。




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