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38. エストの渇望

短いので、本日はもう一話上げる予定です。





ラナが人に戻った。



ひと目見た瞬間、彼女だとわかった。

なぜ人に戻っているのか、なぜ裸なのか、疑問はもちろんあったが、彼女であるということは確信していた。



だって、瞳が、表情が、ラナだ。



透き通るような美しい青い瞳。

騎士に囲まれ、戸惑い困っている彼女は、状況が状況だったので彼女には言えないが、正直、猫だった時とあまりに同じ表情で微笑ましいくらいだった。




だがその後、彼女が危機に陥っていたことを聞き、私は激情を押さえるのに苦労した。


突然人の姿に戻ったラナは、為すすべもなく騎士に追われ、塔と同じくらいの高さがある木を降りてきたという。もし落ちていたら、間違いなく命を落とす高さだ。

彼女の手足には細かい切り傷や擦り傷がたくさん付いており、ひと目で無理をしたのだと分かる。

私は後悔と、自分に対する怒りと、心配、そしてとてつもない不安に苛まれた。

さらに、彼女の裸を目撃したという騎士に、ひどい怒りまで抱いてしまった。



自分にこんな激しい感情があったとは、知らなかった。

ラナに関することとなると、私は我を忘れてしまう。




ラナに対する感情に、ある程度蓋が出来ていたのは、恐らくラナが猫の姿をしていたからだ。

でも、ラナは人に戻った。人間の女性に。




ラナは美しかった。

艶やかな長い、黒い髪。抜けるように白い肌。美しい青い瞳を宿す大きな目は、少々猫目がちで、何だかラナが猫だった時の面影がある。

小ぶりな鼻に、形の良い唇。小柄な身体。無表情でいると近寄りがたい雰囲気もあるが、私を見て嬉しそうに笑う彼女は、まるでとびきり甘い果実のように、抗えない魅力がある。




ここまでくれば、私にも分かる。

私はラナを愛しているのだ。

それも、美しい類の愛ではない。もはや彼女がいない人生など考えられない程度に、私は彼女を愛している。


彼女が欲しい。心も、身体も、全て。





ラナはこの世界の人間ではない。

シェドバーン様の代替わりが終わった時、彼女が変わらずこの世界にいることができるのかさえ、分かっていない。



頭では分かっている。

彼女を愛したところで、叶わない可能性の方が高い。彼女を、困らせてしまうだけかもしれない。



それでも、どうしても、ラナのことだけは諦められない。



これからは好きに生きていくべきだと、そう言ったのはラナだ。だったら私は、一番欲しいラナに、みっともなくとも足掻いて、手を伸ばし続けたい。




私が何よりも渇望しているのは、ラナと共に生きることなのだから。






いつも読んでいただき、ありがとうございます!

恋は盲目。

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