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ゴブ役令嬢 ~第二王子と愉快な仲間たちの婚約破棄から断罪コース~

作者: けろぬら

 太古から生命力の象徴とされる大森林に囲まれるゴブランド帝国。

 大森林は天然の要塞となり、外敵を容易く防ぐ。

 また森の恵みは、棲む者達に確かな繁栄を約束する。

 吟遊詩人の(うた)で不落の帝国が度々登場する。

 それが偉大なるゴブランド帝国を指しているのは子供でも知っていることだ。


 今日は、帝立ゴブランド学園の卒業パーティー。

 帝国一の謳い文句に相応しく、王族から平民まで分け隔てなく入学を許す懐の深い学園である。

 澄み渡る蒼天の元、穏やかな陽光を浴びた屋外パーティーは卒業生達の賑やかな声で盛り上がっている。


「ゴブリンダ! 貴様との婚約は破棄するゴブ!」


 ん? 語尾がおかしい? この地方の貴族語ですよ。


 パーティー会場のど真ん中。一際目立つ集団。

 第二王子を中心に、宰相の次男、騎士団長の嫡男、宮廷魔導士長の三男と、煌びやかな世界の住人だ。

 その第二王子がドドーンと書き文字を背景に背負(しょ)いつつ自分の婚約者であるゴブリンダ公爵令嬢に宣告を叩きつけたのだ。

 祝いの席で場違いなハナシが飛び出したので辺りはシーンと静まり返る。


「第二王子殿下! ナゼでゴブいますか! 理由をお聞かせくださいゴブ」


 ヤスデの葉を複雑に織り込んだ扇子をピシャリとたたみ、ゴブリンダは第二王子へ詰め寄る。


「貴様の所業、知らぬとゴブったか! (われ)を舐ゴブるなよ? 貴様は我が愛しのゴブリーナ嬢を長きにわたり虐げていたことは明白ゴブ! そのような者を国母として受け入るゴブもなかろうか!」


 第二王子の腕に見目麗しい平民女子が縋り付いている。話の流れから、ぶら下がり平民女子がゴブリーナで確定だろう。

 時たま「ゴブ二郎さま……リン」と呟いているが、第二王子の名前がSEセリフで明かされた瞬間だ。そして高貴でない者は語録にゴブを付けることは許されない。


 第二王子の取り巻き達も平民女子を庇うように前に出て、ゴブリンダをギラリンコと睨みつける。王子の腕にぶら下がる平民女子の怯えた風味の目が良いアクセントだ。おんし、役者じゃのう。


「一体何のことでゴブいましょう。虐げたなど、わたくしの記憶にはゴブいませんですわ。何かとお間違いになられたゴブでは?」


 はぁ~、とゴブ息を深く()き落ち着きを取り戻したゴブリンダ。ヤスデの葉を複雑に織り込んだ扇子をバサッと開いて口元を隠し、物静かに、しかし力強く言葉を返した。


 その眼差しはエスキモーも震え上がる氷点下だ。チラリと視線を向ければ第二王子と愉快な仲間たちはチワワのようにプルプルしている。

 平民女子が小さく「ゴブリンダさま怖いリン」と声を上げた。その声で我に返った取り巻きは一斉にSEセリフをがなり立てるがウルサイので割愛。


「しらばっゴブるな! これより貴様の非道なる悪行を一つずつ明かしていくゴブ! さあ、貴様の罪を数えろゴブ!」


 氷の視線をチラリと向けて言葉を返すゴブリンダ。


「そうでございゴブわね。まずはお話を聞かなければ誤解も解けませんでゴブから」


「フ、フン! 誤解だと? よくも抜け抜けと言ったものゴブな……!」


 第二王子、ちょっとゴブリンダにビビリ中だが、断罪パートに突入したんで息を吹き返す。


「貴様は! 食堂でゴブリーナに配膳された二匹のオオキメイモムシを一匹取り上げたそうゴブな!」


 あなたが犯人です!的に胸を反らして見下すポーズ決めからの指差し断言。背景には、バーンと書き文字と集中線。


「僕からも言わせてもらうゴブリ」


 一歩前に出て黒縁フレームの眼鏡をクイッとするのは宰相の息子。


「ゴブリンダ嬢。貴女(あなた)はゴブリーナの腰蓑が目立ちすぎると個人の好みを蔑ろにしたそうゴブリね」


「拙者からも物申すでゴブル」


 騎士団長の息子が腰に差した木剣(ぼっけん)の位置をクイッと変え、居住まいを整える。言動が騎士と言うより武士っぽい。


「貴殿は野外実習の時! ゴブリーナの腰蓑が臭うと申され、草の汁をかけたそうでゴブルな!」


 みんな鼻息荒くゴブゴブと、事柄を枚挙する。事実ではあるが全てではない手法はお約束。


「どうだゴブ! これだけ証言が出ているゴブ! 言い逃れは出来んゴブぞ!」


 第二王子、得意満面の笑みを浮かべて居丈高に指先をビシッとゴブリンダへ。ビーム出そうな勢いだ。

 ゴブリンダ、二度目のゴブ息を()と、氷点下の視線を第二王子へキッと向け、キッパリと言い放つ。


「どれも学園生として守るべきルールを違反なされていたからこそ、お諫めしたものでゴブいますのよ。決して虐げた訳ではゴブいませんわ」


「だまれ! この期に及んでまだ自分の非を認めんゴブか! 貴様の正論を振りかざす良い子ちゃんぶった口ぶりは前から気に喰わなかったゴブ!」


 主導権を握ろうとする第二王子。プルプル震えながらなので迫力がチョット足りない。

 それをフォローするようにゴブリンダの前に立ちはだかるは宮廷魔導士長の息子。

 頭にコブが付いた木の杖っぽいものをクイッと傾げる。


 取り巻き達はそれぞれがクイッとする芸を持っているのだ!


「君にも教えてやろうゴブブ。ゴブリーナは一度に2ゴブずつ国民を産み出すゴブブ! これぞ国母と呼べる能力ゴブブだ。我々と国造りに励み、既に6ゴブも国民を増やしておるゴブブ」


「その通りゴブ。国に貢献しているゴブリーナのなんと素晴らしきゴブか! 普段顔を見せない貴様などに国母が勤まるゴブもなかろう」


 そして、第二王子がゴブリーナの肩を抱き、優し気な雰囲気を出しながら囁くように語り出す。


「それにゴブな。ゴブリーナは貴様とは違い、いつも一緒に居てゴブるのだ。(われ)を癒してゴブるのは何時もゴブリーナなゴブだ」


 第二王子に縋りながら頬を赤らめウットリした視線で見上げているゴブリーナ。第二王子と目が合い見つめ合う二人の世界展開中。たまに「ゴブ二郎さまお慕いしてますリン」「おお、ゴブリーナ……(われ)もゴブ」とSEセリフが飛び交います。

 取り巻きも頬を赤らめウットリした視線で二人を見つめる謎空間。


 三度目のゴブ息を()いたゴブリンダ。

 家同士の政略で婚約が取り決められた故に、相手と情で結ばれたわけではなかった。

 確かに王家へ嫁ぐ前準備として、国事に従事していたため、第二王子と互いを理解する時間も取れていなかったのは事実だ。


 しかし、ここまで嫌われていたのかとゴブリンダは非常に残念な思いにかられる。それが氷点下から冬場の水道くらいに温度を緩ませた。


 凍える視線が緩くなり、息を吹き返した第二王子と愉快な仲間たちはゴブゴブ調子に乗り出す。そして第二王子がゴブリンダへ新たな宣告をする。


「罪人を国に置くゴブにはいかぬ! ゴブリンダ! 貴様は国外追放ゴブ!」


 ドギャァーンと背中に書き文字を背負(しょ)いつつ第二王子がキメ顔でドヤっている。


「そうだ追放ゴブリ!」


「当然、追放ゴブル!」


 取り巻き達も便乗だ。

 しまいには「追放!」「ゴブ!」「追放!」「ゴブ!」とリズム良く(はや)し立て始める。

 さしものゴブリンダも国外追放を言い渡され驚きを隠せない。

 そんなゴブリンダをシッシと手でアッチイケする第二王子。


 いい加減ゴブゴブうるせえな。


 パーティー会場のど真ん中で異様な盛り上がりを見せる第二王子と愉快な仲間たち。

 周囲の視線が冷たいのも気が付かないくらい。

 だから気付かなかったのだ。

 彼等の後ろに佇む存在を。


「ゴブ二郎! このバカチンが! お前は一体ホブゴブつもりだ!」


 辺りに響く怒声。

 第二王子、いやさゴブ二郎がビビクンッと飛び上がる。

 取り巻き達もビビクンッと次々に飛び上がりウェーブが完成。

 しっかり折り返しビビクンッなウェーブも発生。

 波は寄せては返すのが摂理だ。


「あ、あああ、兄上! キノコタケノコ戦争の講和に行かれてゴブでは……」


「ゴブ太郎王太子殿下。お久しぶりでゴブります」


 挙動不審の第二王子と打って変わって、見事なカーテシーをキメるゴブリンダ。育ちの差が垣間見える。


「うむ。ゴブリンダ嬢よ、久しいなホブゴブ。そのまま楽にホブゴブせい」


 やわらか表情でゴブリンダに答える王太子。

 そして目をギラリンコさせながら第二王子を睨みつける。戦国武将クラスのギラリンコに第二王子はタジタジである。


「余の仕事も(ようや)くひと段落つき、祝いの言葉を授けに駆け付けホブゴブが……。ゴブ二郎よ、王族とは思えぬ聞くに堪えんことをよくも抜かしホブゴブな」


「あ、兄上……。いつからおいでゴブか……」


 <●><●> ミテイルゾ


「深淵からゴブ! 見られてたゴブ!」


「ゴブ二郎よ。国政にて取り決めた婚約を破棄する権限を(いち)王子が持っているとホブゴブか! あまつさえ国外追放ホブゴブと? 貴様が決めて良いホブゴブではない!」


「し、しかし兄上! この女は罪を犯してゴブ! ならば王権が適用されるゴブ!」


 顔面蒼白になりアワアワしながら第二王子はゴブリンダを指差す。プルプル震えているので指先からビームが出ない勢いだ。


「お前はバカチンとしか言いようがホブゴブだな。少し考えれば調べるまでもなくゴブリンダ嬢の言い分が正しいと判るホブゴブに……」


 曰く、オオキメイモムシは大きく食べ応えがあるので学食の人気メニューだ。炒めた香ばしさが食欲をそそる。

 特権階級のみ二匹が配膳され、平民の皿に二匹配膳された場合は、即座に返却しなければならない。


 曰く、森の奥深くでは一般に腰蓑の色は草色、もしくは土色で自然に溶け込む色合いにしなければならない。目立つ色は爆走イノシシや暴れ水牛が突進してくる交通事故が起こり易いのだ。ゴブリーナの朝顔汁で紫色に染めた腰蓑はウマソウなブドウに見える危険色である。


 曰く、朝顔汁で染めた腰蓑は、朝顔風味の香りが漂う。

 香りが高ければ森の中では鼻につく。クンクン狼がクンクン近寄ってパックンチョされちゃいます事故も年に数度はあるのだ。


「どれそれも学園で学ぶ初歩の初歩ホブゴブ。貴様ら、よもや知らんとは言わせぬホブゴブ」


 第二王子と愉快な仲間たちは青い顔をしながらガタガタと震えている。

 「なんとなく適当に罪状をでっち上げて婚約破棄作戦」が失敗したからだ。

 当然、失敗した後のことなど考えていないと胸を張って言えるレベルである。

 後先を考えずに行動する最近の若ゴブによくある傾向だ。


 追い打ちをかけるように王太子が戦国武将クラスのギラリンコで睨みつけると、「フヒッ」と怯え声が上がる。


「貴様らが遊び惚けている間、ゴブリンダ嬢は国事に携わり、日に10ゴブと国造りに励んでいたことも知らぬのであろうホブゴブな」


 ゴブゴブ多過ぎてセリフがワケワカランな。


「6ゴブの国民を増やしたホブゴブ? それしきで国母を語るなホブゴブ! ゴブリンダ嬢は既に国母の仕事を任せられ42ゴブの国民を増やしているホブゴブぞ!」


 王太子は、チラリと横目で第二王子と愉快な仲間たちを見ながら命令を下す。


「ゴブ二郎。この件は国家反逆罪に値するホブゴブぞ。側近の貴様らも同罪ホブゴブ。皆の者、追って沙汰が出るまで自宅にて蟄居を命ずるホブゴブ!」


 第二王子と愉快な仲間たちは、「……そんなゴブ」とか「バカなゴブリ」とか負け確の定型セリフをSEセリフでしか言わせて貰えない扱いに移行済だ。もう普通に会話へ絡めない。


「ゴブリンダ嬢、愚弟がまっこと済まなホブゴブ」


 王太子はゴブリンダに向き直り、頭を下げる。

 王族が(こうべ)を垂れると言う前代未聞の姿に、背景と化していた卒業生達もゴブゴブとゴブめき立つ。


「王太子殿下、どうか頭を上げてゴブさいませ。むしろ、わたくしの無実を証明してくださり感謝をしてゴブます」


「そうでホブゴブか。ゴブリンダ嬢とゴブ二郎の婚約は破棄となるホブゴブろう。なれば国政で婚約が決まる前の約束、余の第二姫として迎え入れたいとの願い、改めて受けてはホブゴブか」


「はい、よろこんでゴブ……」


 王太子とゴブリンダ嬢は見つめ合い二人の世界を構築中。SEセリフで「ゴブリンダ……」とか「ゴブ太郎さま……」とか聞こえているがウザイので全スルー。



 森の中にある広場は、新たな王太子妃の誕生に祝福の声で埋め尽くされる。


 ――そんな広場を森の影から見つめる目。


『あわわわ、こんなところにゴブリンのコロニーがあるなんて……。早く帰ってギルドに知らせないと』


 プラチナブロンドの長い髪に蒼い瞳と白い肌、革鎧を纏った如何にも冒険者な出で立ちの少女。特徴はピコピコ動く先が尖った長い耳。エルフっ()です。なので胸が慎ましやかなのは仕様です。


 エルフなのに森で迷ってゴブゴブ騒がしい場面に遭遇する残念娘。


 ソローリ忍び足で一歩一歩下がっていく。


 ――パキッ


 小枝が良い仕事をしました。


 ザザ ザッ ザッ ザザッ


 養鶏場の鶏ライクにゴブ達が一斉に振り向いた。


『コワッ! ヤバい逃げなきゃ!』


「人間ゴブ!」

「人間のメスゴブル!」

「捕まえろゴブリ!」


 獲物を前に断罪劇などスッカリ忘れて一致団結、目の色変えてエルフを追い廻すゴブ達。

 逃げるエルフっ()


『ヒ~! オータースーケー』


 ピコピコ耳が動いている。


「人間のメスは4ゴブずつ国民が増やせるホブゴブ!」

「人間のメス肉は美味しいのゴブわ!」

「若いメス肉はゴチソウリン~」


 おまえら元気だな。


 ゴブゴブと。

 ピコピコと。

 森の木陰でゴブリンとエルフの追いかけっこが続く。


 ゴブランド帝国は今日も平和です。



テキトーなオハナシなのでツッコんではイケナイ。

小説ジャンルをどうするか5ミリほど悩んだ。とりあえず押しとおす。



前書き後書きの文字数20,000文字以内って、多くね?オハナシ書けちゃうよね?

ダレか本文1行で前書きと後書きにオハナシ書くとかやってくんねぇかなぁ

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― 新着の感想 ―
[一言] 初めまして。入江 奈都杞と申します。 作品を拝読しましたが。 これ、ゴブリンの物語だったんですね。 道理でセリフの端々にゴブがつくわけだと思いました。 凄くコメディタッチで良かったです(*^…
[一言] 前書き 362文字 本文  223文字 後書き 1473文字 で全部合わせて本文の話なら書いたことがあります
[一言] 笑わせてもらいました、 昔、無断転載対策で後書きに本文書いてる作者さん居ましたね。
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