書類守護神失踪事件
「おはようございます」
「あぁ」
立花の挨拶に、新一はそっけなく答える。
「おはよう」
幸之は爽やかに答える。
「おはようございます」
美人は丁寧に答える。
「あ! おはよう!」
環は元気よく、笑顔で答える。
「相変わらず、元気だね」
幸之は笑顔で、環に言う。
「ありがとう」
環は微笑む。
「これから、下界?」
幸之は問う。
「はい」
「よし、行くか?」
美人は準備を終える。
「分かりました」
環は美人について行く。
「いってらっしゃい」
「行ってきます!」
立花の声に、環は笑顔で手を振った。
その夜
「皆! 集まって!」
「?」
「何があったんだ?」
三枝の声に、皆は集まって来る。
「人間界へ降りて行った月下と玉木と連絡がつかないんだ」
三枝はそう説明する。
「え!?」
立花は声に出して、驚く。
「念のため、式神に捜索させているんだが、今まだ見つからない。だから……」
「分かりました。私たちも探しに行きます」
立花は名乗りを上げる。
「頼む」
「はい」
立花は頼もしく、返事をした。
未明
「どうしよう! まだ見つからない!」
立花は焦る。
――もうすぐ、夜が明けるっていうのに!
「一旦、天界へ戻ろう! 報告だ」
「はい」
立花は新一の指示に従った。
天界
「そうか、ダメだったか」
「はい」
「どういたしましょうか?」
三枝は、京発と由貴に尋ねる。
「仕方ない。皆、一休みしたら、また捜索に行ってくれ」
「よろしく、頼みます」
京発と由貴は、それぞれ、そう言う。
「はい」
人間界
「どこに行っちゃったのかなぁ」
立花は辺りを見渡す。
「ん?」
新一は何かを見つける。
「おい! あれ!」
立花は新一が指さす方を見る。
「あ!」
そこには美人と環の姿があった。しかし、彼らは倒れていて、動かない。
「環!? 一体、何が!?」
身体を揺さぶっても、反応はない。
「どうしよう!」
「意識不明か」
新一も焦る。
「天界へ連絡だ。応援を呼ぼう」
「はい」
天界
美人と環が目を覚ます。
「環?」
「立花?」
環は立花の方を見る。
「良かった。目が覚めて」
立花は涙を溜める。
「で? 何があったんだよ」
新一は壁にもたれかかって、美人に聞く。
「あぁ。実は、妖怪らしき二人組に襲われて」
「襲われて?」
「書類を奪われてしまったんだ。すまない」
美人は目を伏せる。
「そうか。立花、行くぞ」
「え!? どこへ?」
驚く立花に、新一は淡々と言う。
「人間界だ。その妖怪を捕まえる」
「はい!」
立花は新一のあとについて行った。
神殿
二人は真実の水晶の所へやって来た。
「ここで何するの?」
立花は新一に聞く。
「真実の水晶に、あの妖怪たちの居場所を聞くんだ」
「あ。そうか」
立花は納得する。
「水晶。今回、美人たちを襲った妖怪の居場所は?」
新一がそう聞くと、水晶は答える。
『フェリー埠頭』
「え!?」
――またか。
「立花、行くぞ」
「はい!」
立花は慌てて、新一のあとをついて行った。
人間界 フェリー埠頭
「あ!」
立花は何かを見つける。
「あいつらか」
二人は、フェリー埠頭に降り立つ。
「お前らか。天界の書類を奪ったのは!」
新一の声に、妖怪の二人組はそれぞれ、振り向く。
右が申、浅朝亜紗。左が酉、浅見麻美だった。
「何だ? 書類を取り返しに来たのか?」
「くはははは!」
麻美は高笑いする。
「あぁ。そうだ!」
新一は言い返す。
「それなら! 私たちに勝ってからだな!」
亜紗は如意棒を構える。
「くはははは!」
麻美は笑いながら、弓矢を放つ。
カンッ! 弓から放たれた矢は、立花の結界にはじかれる。
「なるほど! お前は書類守護神か!」
亜紗は如意棒を伸ばす。しかし、新一はそれをかわし、大鎌で申に切りかかる。
「そんなのに切られるものか!」
申はきれいに避ける。しかし。ザクッ! 申は切られた。
「何!?」
麻美は驚く。
亜紗の足元を見ると、右足が結界で固定されていた。
「貴様ぁ!」
麻美は再び、矢を放つ。が。結界にはじかれる。
「くそっ!」
――厄介な結界だな。
「こうなったら! 矢雨!」
空から、矢の雨が降り注いだ。
ガガガガッ!
「何!?」
巨大な結界が上空を覆った。
――そんな、ばかな。あんなに巨大な結界を!?
――まさか。あの書類守護神は、……。
「何、フリーズしてやがる!」
新一が叫ぶ。
「しまった!」
足元を見ると。結界に固定されていた。
ザクッ! 麻美は新一の大鎌に切られた。
「うわぁぁぁ!」
亜紗と麻美は、小さな妖怪の姿になった。すると、上空から、奪われた書類が降って来た。二人が切られた時に、衝撃で上空に舞い上がったのだった。
「くそっ! 覚えてろ!」
小さな二人組は、そそくさと去って行った。
「一件落着だな」
「そうですね」
立花は微笑んだ。
天界
「ただいま、戻りました!」
「天界から見てたよ。書類を取り戻してくれて、ありがとう」
三枝は笑顔で言う。
「いえいえ」
立花は照れる。
「で? あいつはどうなった?」
新一は尋ねる。
「え?」
「月下だ。処分は?」
「大丈夫。戒告処分だよ」
三枝は答える。
「そうか」
「ちょっと、安心」
立花は少し、微笑む。
「それは、良かった」
三枝もそれを見て、微笑んだ。
「君たち」
「あ!」
京発と由貴が来た。
「今回はありがとう」
京発は微笑む。
「神様のお役に立てて、嬉しいです」
立花も笑顔で答える。
「書類も無事に見つかったし、ありがとう」
由貴もお礼を言う。
「お礼に、この書類の束の仕事を請け負ってくれないかな?」
「?」
「月下と玉木はまだ、全回復出来ていないんだ」
「分かりました! 喜んで!」
立花は笑顔になる。が。
――何か違う。
新一は呆れた。