連続式神失踪事件
「おかしい」
幸之はぽつりと呟く。
「どうしたんだよ」
同じ資料室にいた新一は彼に話しかける。
「あ、いや。お前には、関係ない」
「何だよ、それ。別にいいだろ。少しの困り事ぐらい」
新一は投げやりに言われて、少し、怪訝そうにする。
「いいのか?」
「あぁ」
幸之は新一に話す。
「式神が戻って来ないんだ」
「式神? あのヒトカタの紙か?」
新一は聞き返す。
「あぁ、あいつらが現場へ行って、人間の体と魂のはがれる音を感知して、俺たち死期神に伝えてくれているんだ」
「そういえば、そうだったな」
新一は頷く。
「それ、本当なの?」
立花が現れた。
「あ。お前、聞いていたのか?」
新一は問う。
「うん。式神が戻らないって」
「そうか」
新一はそう言う。
「湯木君。私に何か、手伝える?」
立花は幸之に尋ねる。
「本当は、死期神は現場へは行かないんだが、式神が戻って来ないとなると」
「分かった。一緒に行きましょう。いいよね? 新一」
「あぁ、もちろんだ」
総合病院
「ここに全体の半数がいる」
幸之はそう説明する。
「そうか」
「しかし、なんだこれ……」
――廊下一面に、式神のヒトカタが……。
――どうして?
立花は驚く。
「他の死期神の分もありそうだな」
「絶対、そうだろうな」
幸之と新一の二人は、頷き合う。
「あ」
「どうした?」
新一は立花の声に振り返る。
「俺たちの式神もいるようだな」
月下美人の声だった。
「月下君と環」
「どーも」
「こんにちは」
美人と環は笑顔で挨拶をする。
「どうやら、式神には封印がかかっているようだね」
「そうなの?」
「あぁ」
美人はそう答えると、札を取り出し、ヒトカタへ向けて飛ばした。すると、札に触れたヒトカタは次々に式神に戻っていった。
「何があった?」
美人が式神に問う。
「それが、爆発音の後に気を失ってしまって。何も覚えていないんです」
式神の北極はそう答える。
「そうか、分かった」
皆は天界へ戻った。
天界 神殿前
――水晶に尋ねれば、何か分かるかも。
『十二支団』
――え!? また!?
立花は驚く。
「立花、あの病院へ戻るぞ」
「え?」
新一の突然の言葉に立花は、驚く。
「十二支団を壊滅させる」
「俺は行かなくてもいいのか?」
幸之は彼に問う。
「あぁ。俺たち二人でいい」
「いいのか? 立花も」
「はい!」
立花は頼もしく返事をした。
病院
――どうして?
病院には再び、大量のヒトカタが溢れかえっていた。
――きりがない。
――とっとと、十二支団を壊滅させてやる!
新一は意気込む。
「やっと来たか、死神」
二人はその声に振り返る。そこには、十二支団の辰、真木巻麻紀と巳、三木幹美樹がいた。
「お前らが犯人か?」
新一が問う。
「あぁ、そうだ」
麻紀が答えた。
「そうか。なら、ここで決着つけてやる!」
新一は鎌を持ち出す。しかし、シュッと美樹の縄が鎌にまとわりついた。
――え?
「爆破」
――何!?
麻紀がそう言うと、ドゴォォォっと爆発音が辺りに響いた。
「新一! そんな!」
立花は駆け寄る。しかし、新一の意識はなかった。
――どうしよう、でも、このままじゃ、ダメだ。
――私が何とかしないと!
立花は立ち上がる。
「爆破」
しかし、立花は結界で彼ら二人を包み込む。
ドゴォォォっと爆発する。それにより、爆破の衝撃は、十二支団の二人に襲い掛かる。
「くっそ! この小娘が!」
美樹は表情を険しくする。
そして、自身の武器である、縄を使い、結界を破った。縄は尖り、結界を突き破る。そして、立花へと襲い掛かる。彼女は避ける。しかし、次々と縄は襲い掛かる。
――きりがない!
――一体、どうすれば!
――縄が棘のようになるなんて!
――棘?
――結界でもそうできるんじゃないのか!
立花は集中する。そして、先ほどの結界を消したあと、結界を棘になるように折り曲げた。
「ぎゃぁぁぁ」
立花の放った結界の棘は、散弾銃のように十二支団の二人へ襲い掛かった。
「うぁ」
二人は倒れた。そして、元の小さな妖怪の姿に戻った。
「くそっ! 覚えていろ!」
二人はその場からそそくさと立ち去っていった。
――新一。
立花はしゃがみこんで涙を流した。
「うぅぅ」
「お前、どうしたんだよ」
新一が意識を取り戻した。
「新一」
「ん? 何だよ」
「良かったぁ」
立花は涙を流した。
「ありがとな」
新一は微笑む。
「え?」
「俺の代わりに、あいつらを倒してくれたんだろ?」
「うん」
立花は涙を拭う。
「一件落着したし、天界へ戻ろうか?」
「うん」
立花は笑顔になった。