09 消滅
位置取りはそのまま、小高い場所からの攻撃。
長弓を手に、目を閉じて集中しているアイネさん。
ゆっくりと深呼吸。
美しい白鎧が、ぼんやりと光り始めた。
俺は、魔法関係はからっきしだけど、
今のアイネさんの全身に、途方もない量の魔力が集中している事だけは、分かる。
ゆっくりと長弓を構えて、
「いきます」
ささやきと共に放たれたのは、
白く輝く魔法の矢。
弧は描かなかった。
真っ直ぐ一直線に、魔物の群れの中央へと飛んで、
…………
すごいな、アイネさん。
言った通りです。
あの大量の群れが、
音も無く、
消滅。
崩れ落ちるアイネさんを、ミナモが優しく支えた。
「索敵、願います」
シェルカさんの、静かな声。
目の前の出来事に見とれていた俺、慌てて遠視魔導具を覗き込む。
すげぇ。
目視で見えていたのは、魔物が消えて見えるようになった丸い更地。
遠視魔導具で見えるのは、草木一本生えていない、地面のみ。
あれだけいた魔物、正に、跡形も無し。
いや、なにかいる。
ちょうど円の中央、
アレは、何だ?
「珠か?」
シェルカさんの緊張したつぶやき。
うむ、確かに、珠にしか見えない、何か。
地面の上にころんと居座る、
何とも言えない気色悪い色の、珠。
それと、色だけでは無い、
こんなに遠くからでも分かる、嫌な気配。
アレは、良くないモノ、だ。
「俺はアレを今すぐにでも破壊したいです」
シェルカさんに、真剣に、告げる。
「私も同感だ」
アレを見ていたシェルカさんが、珍しく感情を露わに。
本心からの、心底嫌そうな表情。
でもなぁ、
破壊したいとは言ったものの、
あの珠、首が無い。