07 夜番
今は深夜。
『収納』魔法による広い『空間』を内包している特製テント内では、
現在、シェルカさんとミナモがお休み中。
数時間おきに、夜番で起きているふたりと交代します。
今、起きているのは、アイネさんと、俺。
「シナギさんって、初めて会った時と比べて、言葉遣いがずいぶん柔らかくなりましたよね」
うむ、ご指摘通りです。
東方での言葉遣いをこちらでもそのまま続けていたら『若先生』などという過分な二つ名で呼ばれるようになってしまったので、現在鋭意修正中なのです。
「実はモノカも、以前はシナギさんとそっくりな口調で話していたんですよ」
ほほう、それは初耳。
どうして今のような話し方に?
「元々はモノカの住んでいた世界での『時代劇』って言うお芝居で使われていた言葉使いを真似していたんですって」
ほう。
「『時代劇』って、モノカの国の昔の時代を再現したお芝居で、口調や所作が堅めなんだそうけど、モノカってそういうのが大好きだったんですって」
それで、こちらの世界に召喚されたのをきっかけに、口調を変えてみた、と。
「でも、モノカって、中身は誰よりも乙女だし、やんちゃで甘えん坊だから、結局そういう口調のままじゃいられなくなっちゃったんです」
モノカさんがこちらでの暮らしを楽しむのが、何よりだと思います。
「時々モノカが、シナギさんの話してる姿を憧れのまなざしで見ていたこと、気付いてました?」
すみません、ご存知の通りミナモを置いてきちゃうほどの不調法者なのです。
乙女のまなざしの深い意味など、とんと分からんのです。
殺気なら多分、気付くかと。
「ちゃんとそういう事も勉強しておかないと、ミナモさんに叱られちゃいますよっ」
ミナモを怒らせた時の怖さは、誰よりも骨身に染みているのです……
「……」
「……」
野営の夜は、静かに更けていくのが一番なのです。




