06 野営
もうすぐ日も暮れる頃、
深い森の中に、
秀麗乙女三人と冴えない男ひとり。
今は野営の準備も終えて、
焚き火と料理を囲んでおります。
「美味い!」
シェルカさんも驚嘆の味は、アイネさんの手料理。
いや、冗談抜きで美味すぎる。
「先ほど討伐した初めて目にする毛もじゃの魔物が、これほど美味しいなんて」
ミナモも感嘆の味、
うむ、確かに毛もじゃでよく分からん魔物でしたが、お味は格別。
見た目は……アレでしたね。
アレな姿を思い起こさぬよう、食事に集中しましょうか。
「おかわりもたくさんありますからシナギさんも、いっぱい食べてくださいねっ」
ねっ、の際に、にこりと微笑んだアイネさん。
うむ、美味い料理がさらに美味さを増す、極上の微笑み。
かように美味い乙女手作り料理が食べ放題なのは大変に喜ばしいのですが、
またもや、お腹周りのお肉が心配になる、俺。
依頼達成の期間のめどが立たぬ長丁場に必要なのは、野営生活を円滑に進める家事能力の高い人材。
つまりは、すんげぇ強えメイドさんとか、超料理上手な無双冒険者とか、ですね。
なるほど、今回のメンバーにアイネさんが選ばれた理由、大納得。
美味い料理は、冒険の長旅生活の質的向上に、必須。
今回の旅の目的は、魔物の異常な混成発生の討伐と原因調査。
大量にして多種多様な魔物の生息地への侵入と討伐、
腕っぷしは、最低限の必須条件。
深い森の中での行動、
広域魔導探査機を使った周辺探査は、安全確保と原因究明の要、
操作・修理に熟達した魔導具技師も、絶対に必須。
チームモノカは不殺で有名ではあるが、
今回は魔物相手という事で、
必要なのは確実に相手を仕留める殺し屋的用心棒。
首さえあれば落としちゃう一撃必殺裏技も、こんな時には役に立つ。
そして何より、上記の尖った人材をまとめ上げて、依頼を完遂出来るリーダーが、一番重要。
付け加えるならあと一人。
求められる能力をなるたけ沢山、高い水準で満たせる人。
要するにいざという時の保険的役割を果たせる、バックアップというかスーパーサブ的人材。
うむ、今回のパーティーは、まさに逸材揃い。
いえ、自画自賛しているのでは無いのです。
首切り用心棒は、ただその役割を果たすのみ。