15 完遂
特にトラブルなども無く、ミッションお姫さま抱っこを完遂。
テント内の『空間』にある寝室へ、これ以上無いってくらいに慎重に運びまして、
ふかふかお布団の上へ、優しくシェルカさんを寝かせて、毛布をふわり。
静かに扉を閉めた瞬間、
『ありがとう』
というささやきが聞こえた気がしないでもないのですが……
何はともあれ任務完了。
何だか男として一皮むけたような、誇らしい思いを胸に焚き火の前に戻ると、
「「zzz……」」
えーと、なんぞこれ。
いつの間にやら、眠り姫が追加でふたり。
突然、この旅一番の艱難辛苦に見舞われた、俺。
どうしよう、師匠。
ふいに思い出した、師匠と学び合った思い出の日々。
『図解入り・正しいお姫さま抱っこ読本』
第三章 トラブルを回避するには
学びを活かすのは、正に今!
……
思い切り近づいて、ミナモの顔を、じっと見つめております。
…………
本の教えによると、勝利の鍵は、我慢と忍耐。
………………
ミナモの頬が、徐々に赤らんできましたよ。
「……」
観念して目を開けたミナモが、無言でにらんできますが、
俺、ついに勝利。
ミナモに勝ったなんて、いつ以来だろう。
「酷くないですか、シナギさんっ」
アイネさんからの静かなる抗議の声にも、俺、動ぜず。
今の俺は、クールな大人の用心棒。
乙女の平和のためならば、私情を捨てて非情にもなれるのさ。
「おふたりとも、早く寝てください」
非難のまなざしを向けながらもテントへ入った乙女ふたり。
やりましたよ、師匠、
俺、すげぇ頑張りました。




