12 首
気が付いたら、気分は最悪。
頭痛が超いてぇ。
「大丈夫ですか」
全然大丈夫じゃないです、
って、けんちゃん!
慌てて飛び起きたら、相変わらずの、この場所。
何も無い、更地。
って、何も無い?
「もう大丈夫ですよ」
「あの魔物は、シナギさんが『ぶなしめじ』しちゃいましたから」
珠の首切り?
「えーと、シナギさんが、首って認識した場所を斬ったので効果を発揮したみたいです」
珠のくちびるが笑ったのを見た瞬間、だったら首はこの辺だろうって所に『ぶなしめじ』を走らせたんだけど。
「そういう風に効果を発揮するように、僕が調整したので」
……ありがとうございます、けんちゃん。
「いいえ、シナギさんだからこその戦果、ですよ」
そうだ、みんなをっ。
けんちゃんの笑顔、の目線をたどると、
毛布に横たわる三人、傍らには介抱してくれているアヤさんが。
本当にありがとうございます。
「いえいえ、皆さん何ごともなくてなによりでした」
で、アレって何だったんですか。
「……えーと……『えろスライム』……です……」
は?
「あの、僕のライブラリー……魔物事典では、そういう名前なんです……」
すみません、何か変な事を聞いちゃったみたいで。
「えろ……あのスライムって、生き物の特定の感情を栄養にするんです」
ほう。
「その、繁殖欲、っていうか、性欲……」
……
「今回のはオスだったみたいで、シナギさんを操ろうとしたみたいです」
…………
「その、女性を眠らせてから、シナギさんを乗っ取って、それから獲物を強制繁殖、みたいな」
なんていうか、生かしておいてはいけない生き物ですね。
「そうなんです、実際に過去にも、人里近くで発生したせいで国が滅びそうになったりしたんですよ」
倒せて良かったですけど、あんなのがうじゃうじゃ湧いたらお手上げですよね。
「レア度が相当に高いので、本当は滅多に出てこないはずなんですけど」
正直、もう会いたくないです。
「あのスライム自体は分裂とかでは増えないですけど、もし雌雄そろったらどうなっちゃうのかは、僕にも分からないんです」
最優先討伐対象ですね。
でも、一匹でも強かったです。
「物理攻撃は弾くし、魔法も効きづらいし、本当にやっかいですよね」
何か弱点とかは。
「溺れるんです」
ほう。
「名前はスライムですけど、呼吸ができないと死んじゃうんです」
出来るだけみんなに広めますね。
「国がアレしちゃうレベルの危ないヤツだったんで、討伐に来た人たちに倒し方を伝えて何とかしてもらおうとしたんですけど、到着が遅れちゃってごめんなさいです」
いえ、みんなの介抱と、弱点を教えてもらったこと、本当に感謝です。
「本当は僕がなんとか出来ればいいんだけど、その、この世界には極力不干渉な立場なもので……」
いえいえ、いつも本当にご苦労様です。
「あちらの皆さんがそろそろお目覚めかと思いますので、僕たちはそろそろ」
けんちゃんもアヤさんも、ありがとうございました。
「それじゃ、後はシナギさんにお任せしますね」
本当にありがとうございました。




