01 シナギ
『リヴァイス 32 特使公爵家の日常 騒乱編』の続きで、
『若先生』シナギのお話しです。
お楽しみいただければ幸いです。
討伐、完了。
目の前には、様々な魔物の首無し死体と、その傍らには、首。
愛刀『ぶなしめじ』
流派は『深影』
俺、今日も静かに絶好調。
「お疲れさまです、シナギ」
ミナモは、余裕の表情。
返り血ひとつ、その細身に纏わず。
深紅の薙刀『桜刃斬流』
流派は『真桜』
見るたびに研ぎ澄まされていく薙刀の業前、見事。
「私たちはここまで、ですね」
ですね。
えーと、格好つけてはおりますが、
俺たちが出来ることは、今はここまで。
この様々な魔物の死体、
血抜きやら何やらの処理は、全くの門外漢。
そして俺は『収納』での運搬も、不得手。
つまり、冒険者としては、半人前未満。
幼い頃から武芸一筋の、俺。
ミナモの方は、それに加えて花嫁修行。
お互いに、闘い上手は修練の賜物。
ただし今この場にて必要な、
冒険者稼業のあれこれは、全くのずぶの素人。
つまりは、
切り捨て御免と言うよりも、
切り捨てちゃってごめんなさいという、
未熟なふたり、なのです。
「凄まじいものですね」
シェルカさんが、感服しきり。
いや、お恥ずかしい。
用心棒などと名乗ってはいるが、
討伐依頼のお供をすればご覧の有り様。
本当に、お恥ずかしい限り。
「私も、騎士としての修練こそ積んできましたが、冒険者としての作法はまだまだなのです」
「これから一緒に、学んでいきましょう」
シェルカさんのあまりにも真っ直ぐな眼差しとその騎士道、
解体作業におよび腰だった己を、
ただただ恥じるのみ。
冒険者稼業、誠に侮りがたし。