裏側だよ♪
あさったら出てきた
当時もうちょっとラストまで書いて消えたのでいろいろ折れた・・・
それは古くからの盟約だった。
魔王が発生し、世界の危機が訪れた時、異世界から勇者達を召喚し討伐してもらう、それが彼の世界『エレメンティア』と世界を創りし創造神の盟約である。
そして魔王が発生し盟約どおりエレメンティアの巫女は勇者召喚の義を行ったのだった。
「創造神様、エレメンティアより古き盟約にのっとり勇者召喚の要請が届きました。つきましては召喚魔方陣の実行及び神力ジェネレーターの使用許可をお願いいたします。」
此処は神界と人間達からは呼ばれる世界で、各世界を管理運営している神々が住まう場所である。そしてその中でも中枢である創造神がおられる中央コントロールルームへ召喚要請の一報が入り、それを受信した女神は召喚魔方陣と神力ジェネレーターの使用許可を貰うべく、コントロールルームの上段でモニターを眺めていた老人の元へ書類を持って来た。
「エレメンティアか。もうそのような時期だったかのう」
白いあごひげを撫でながら創造神と呼ばれた老人が書類を受け取りながら女神へ話しかけた。
「ええ、今回の魔王はかなり強力なようですね。いつもより瘴気が溜まっていたのか、かなりのスペックですし、魔王軍もいつもの規模と強度の3倍になります。ですので今回はクラス召喚魔方陣を実行する予定です」
そういって女神は追加資料を創造神へ手渡し、各種情報の説明を行った。
「そうかそうか、この規模なら仕方あるまい。よし、クラス召喚を認めよう」
創造神はうむうむとうなずきながら決済の判子をぺたりと押して女神のほうへ書類を渡す。こうしてエレメンティアへの勇者召喚が決定したのだった。
そして女神が自分の席に戻り通信回線を開き、
「各部署へ通達、勇者召喚を実行する。種別は『クラス召喚』、勇者選定班は目標を選定し報告。召喚魔方陣班は標準召喚陣を準備後待機、続いて神力ジェネレーター班は神力の精製準備を急げ!」
女神が厳かに各部署へ指示を伝え報告が帰ってくるのを待つ。暫くすると各部署から次々に報告が上がってくる。
「こちら選定班長、勇者候補の選定に入ります、1分下さい!」
そういって選定班の班長は部下に激を飛ばしながら勇者選定に入った。それに続き魔方陣班からも連絡が入る。
「魔方陣班長です。今、クラス召喚魔方陣の凍結処理の解除を始めました!2分で済ませます!」
「神力ジェネレータ班長です。神力ジェネレーター各種点検中、今のところ異常なしです!5分下さい!」
各班が初動を開始し召喚の準備を進めてゆく。それを女神と創造神は頼もしいと思いながら通信からもれてくる各種報告に耳を傾けていた。そしてついに勇者達が見つかった。
「こちら選定班、粋の良い勇者候補達を発見、内容は鈍感ハーレム1、正義野郎1、眼鏡女子副委員長1と最後にキモオタ2です。ここまで要素が詰まったのは久しぶりです!」
「よし、対象をロック、観察を続け何か異常があれば報告しろ」
そういって前面の大型ディスプレイに映された高校生のクラスを確認する。確かにここ最近の勇者要素をかなり押さえたいい勇者候補だと女神は微笑んだ。
「召喚魔方陣班です。『クラス召喚』魔方陣、準備できました。一応イレギュラーに備えて何神か緊急修正できるのを待機させてるので、こちらはいつでもいけます」
「続いて神力ジェネレーター班です。巫女から送られている信仰と魔力を神力に変換準備が完了しました。神力の精製を開始します! いやぁ今回は信仰の質が段違いに良いですわ、よっぽど切羽詰ってるんですねぇ」
そういって各部署からさまざまな報告が上がってきて、ようやく召喚準備が整ったの創造神へ報告する。
「創造神様、勇者召喚の準備が整いました。ご指示を・・・」
そういって席を立ち、創造神のほうへ向かって声を発する。創造神も席から立ち上がり、声を大にして指示を下す。
「うむ、では勇者召喚開始、目標はエレメンティアへのクラス勇者召喚じゃ!」
その掛け声と共に各部署から『ハッ!』と掛け声が返ってくる。そして勇者召喚が始まった。
「観測班!ターゲットの時空座標及び人員情報を情報転送!」
女神が矢継ぎ早に指示を出す。
「了解、ターゲット補足...完了、対象は41人中必須人員は10人です。データ転送......完了しました!」
そういって各種情報が大型パネルへずらずらと表示され、見て問題ないことを確認、それを受け取った召喚魔方陣班が情報を魔方陣へ組み込み、環境変数を調整変更を行う。それと並行し召喚用のエネルギーである神力をジェネレーター班がジェネレーターから取り出し召喚魔方陣へ注ぎ込むべく準備する。
「こちら召喚魔方陣班、準備完了しました。発動トリガーを回します」
準備完了の通信が入ると、女神の座っている机に大き目のボタンが現れる。女神はそれを確認すると次の指示出した。
「ジェネレータ班、神力を召喚魔方陣へ繋げ!」
「こちらジェネレータ班、神力ジェネレーター出力安定、神力注入開始します。圧力弁閉鎖、非常時バイパス閉鎖、神力メイン回路開け!」
「メイン回路開きます! 神力、召喚魔方陣への注入開始を確認!」
「神力の流入を確認、召喚魔方陣内神力圧力上昇中、10、15、20...現在異常なし、最終調整を開始します!」
「信仰、魔力の状況はどうか?!」
「残存量は95%、予定通りです!」
「神力注入続行中、80、90、100%に到達!召喚魔方陣、召喚準備良し!」
「最終調整完了しました。いつでもどうぞ!」
最後に召喚エネルギーたる神力が整い、召喚のトリガーとなるボタンに光がともった。女神はその光を確認し、手をボタンに添えて言葉と共に押し込む。
「勇者召喚...開始!」カチッ!
押した瞬間、画面に映っている1クラスの床に召喚魔方陣が描かれて報告の声が上がりだした。
「召喚魔方陣、展開中、展開完了、召喚プロセス開始しました。現在教室内を神域化実行中、50%消化、なおも継続中...60%、65%......」
「神力ジェネレーター出力上昇、残存信仰及び魔力87%です、83%...」
「ターゲット、硬直者多数もんだ...ッ!」
順調に召喚が終わるかと思っていた矢先に奴は飛び出した。召喚の必須ターゲットの一人である彼が即座に廊下へ飛び出したのだ。
「緊急緊急!必須ターゲット一名が召喚魔方陣より逃亡、追加座標送る!」
観測班のあせった声に女神は緊急指示を出した。
「対象をE1と呼称、召喚魔方陣班、緊急召喚麻痺付き、対象E1!」
さすがこの道が長い女神である。イレギュラーへの対応も見事な手際だった。もちろんその指示を受けた召喚魔方陣班も歴戦のてだれですぐに反応した。
「了解、麻痺付き召喚魔方陣、即時展開、神力!」
「ジェネレーター、非常時バイパス回路形成完了!緊急召喚魔方陣へ神力供給よし、残存エネルギー70%を切りました!」
「クラス召喚魔方陣、まもなく召喚完了、あと3秒...」
コントロールルームの大画面には今まさに召喚されそうなクラスメイトに敬礼を送っているE1の姿が映っていた。
「1...0、召喚完了、緊急召喚魔方陣スタートしました」
クラス召喚はE1が避けた以外は問題なく完了した。しかし必須とされているものを召喚からもらすわけには行かないため、さらに召喚を実行する。
「まぁこれで大丈夫でしょう...」
と呟きながら画面を見ると、側転して召喚魔方陣から逃げたE1の姿が・・・
「うそでしょ?...拘束召喚魔方陣起動!」
「拘束召喚魔方陣...実行!」
先の麻痺は避けられてしまった、しかし今度はある程度の範囲で拘束し引きずりこむため選んだのだが、E1はバク転を繰り返し一気に距離を取る。
「なんとまぁ、さすが必須の人間ね。普通避けれないわよ?」
その声に創造神もうなずきながら、
「だからこそ必須なんじゃろうな。しかしそんなに異世界に行くのが嫌なんかのう」
と画面を見ると、廊下を走り出すところだった。女神としても逃がすわけにも行かないため指示を出す。
「射出魔法追記、背後から一気に絡め取りなさい!」
召喚魔方陣班はその指示に従い召喚魔法陣へ追記、神力を注ぎ込み実行する。すると魔方陣が一気に射出され学校の廊下を一気に飛び、E1を背後から絡めとろうとした。しかしまたしてもE1はそれを避けてしまい、先に居た3人が召喚魔方陣に捕まり召喚が開始された。
「感のいい人ね」
廊下の隅に伏せた姿をみつつ次の指示を出す。
「追尾式召喚魔方陣展開、攻撃は半自動で操作、確実に召喚するぞ!」
「追尾式召喚魔方陣展開、召喚速度が遅いため魔法式を改良中、10秒下さい!」
「ジェネレーター班よりコントロール、残存エネルギーが60%を切ります。先ほどの召喚で10%ほど消費しています」
「召喚速度魔法式改良完了、中距離武装実装しました。いつでもいけます!」
刻一刻と戦場が変化する中、各班は己の使命を全うするべく神経を尖らせて行く。
「観測班よりE1は階段を降下中、召喚魔方陣は階下へ!」
「追尾開始します!」
召喚魔方陣はE1を召喚するため追尾を開始したが移動速度が足りないのかE1へなかなか追いつけない。
「困ったもんじゃのう・・・」
「ええ、このままでは長丁場となりそうですね」
そう言って話している間にもE1は廊下を駆けて行き、そのたびに巻き添えが発生している状況だ。
「観測班より伝達、E1は玄関に向かっている模様。これはチャンスです!」
「魔方陣班長より意見具申!広範囲空間閉鎖型魔方陣の使用を上申します!」
メインモニターではかわいい女子生徒が召喚されている場面が移っている。そんな映像をみつつ創造神は顎鬚をさすりながら黙考し、答えた。
「うぅむ、仕方あるまい。広範囲空間閉鎖型魔方陣の使用を許可する。ただし確実に仕留めるのじゃ!」
『了解!』
各班より反応があり準備が開始される。
「広範囲空間閉鎖型魔方陣の凍結処理の解凍を開始しました!終了まで約30秒です!」
「神力ジェネレータ、出力を100%へ上昇します!メイン回路圧力上昇中、100%まであと20秒!」
着々と準備が進むがその間にもE1は玄関をめざして走り抜けていく。その間またしてもほかの人が巻き添えで召喚されていたがこれは仕方のないことである。そして観測班より情報が入った。
「観測班より中央コントロール、E1が間もなく玄関へ到着します!残り15秒!」
「魔方陣班、解凍状況はどうか?」
「あと少しです!80、85、92、96、100%!解凍完了、これより環境変数への情報入力準備に入ります!」
この広範囲空間閉鎖型魔方陣であるが、半径10m以内の人物を無制限に召喚する召喚魔方陣である。そのため『範囲固定⇒魔方陣展開⇒障壁展開⇒空間聖別⇒空間内情報取得⇒転移』のプロセスを踏む必要があり、『空間内情報取得』で得た情報を手動でデータ反映させる必要があるのだ。ゆえにスムーズに召喚するために魔方陣班の腕の見せどころなのである。
「神力ジェネレーター、稼働率100%に達しました、いつでもいけます!」
「魔方陣班より中央コントロール、広範囲空間閉鎖型魔方陣の展開準備できました。データ入力チームも熟練の天使たちを投入済みです!」
各班より準備完了の情報が上がってくる。あとはE1が玄関に到達するのを確認し、広範囲空間閉鎖型魔方陣を始動するだけだ。
「選定班、E1の状況は?」
「あと5秒で玄関に到達します、3、2、1、E1玄関へ到達!」
それを聞いた女神は召喚開始のボタンに手を添えて勢いよく押し込んだ。
「広範囲空間閉鎖型魔方陣、召喚開始!」
それを受けた召喚魔方陣班のオペレータ女神がキーボードを打ちながら返答する。
「了解!広範囲空間閉鎖型魔方陣、召喚プロセス、工程開始!」
「各班工程開始しました。魔方陣班、召喚範囲を固定します!」
「追尾型魔方陣を中心に半径10メートルを座標固定しました。座標情報を観測班へ転送...完了!」
「観測班情報を受領、環境情報の取得準備に入る!」
「召喚魔方陣、展開準備完了...展開します!」
「ジェネレーター!神力来てないよ!なにやってんの!?」
「こちらジェネレーター班長!メイン回路に高負荷発生のためバイパス回路形成中!5秒ください!」
「観測班より中央コントロール!E1がこちらに気付きました!」
「バイパス回路構築完了!神力注入開始します!」
「こちら魔方陣班、神力注入を確認!召喚魔方陣展開開始!」
メインモニター内に直径20mの魔方陣が展開されてゆくのが映し出され、E1はその中で悪あがきなのか靴を投げ捨てながら外へ駆け出して行った。
「魔方陣展開率90、95、98...100%!障壁展開開始!」
それを聞いた創造神はつぶやいた。
「これであやつももう逃げられんじゃろうて」
「障壁展開完了!続いて空間の聖別に入りました...完了!」
「ジェネレータのバイパス回路内圧力上昇中!メイン回路異常加熱発生してます!」
「冷却システムを全開にして予備も投入しろ!」
「空間内の情報取得を開始...完了!選定班より魔方陣班へ情報転送します!」
そして広範囲空間閉鎖型魔方陣の最終段階に到達する。メインモニターには魔方陣の輝きが徐々に増している様子が映し出されていた。
「E1、魔方陣の外部に向かって逃走中!」
「魔方陣班、環境情報の入力を開始しました」
「召喚範囲内に対象は51人、属性特定、リア充5・オタク3・超人1・ハーレム2、対象をロックしました。残った30名はモブです!」
「モブへの神力注入は最低限にしろ!すでにだいぶ消費しているぞ!」
「情報入力完了まであと7項目、5、2、1...0! 入力完了、召喚準備完了しました!」
その声と同時にメインモニターからひときわ強い発光が起きる。ついに召喚が開始されたのだ。
「召喚、開始されました。完了まで3秒」
中央コントロール内に若干弛緩した雰囲気が流れ始める。無理もないだろう、ここまで召喚をてこずったのは今までにはないことだったのだ。
「創造新様、これで一安心ですね」
「うむ、さすがに障壁に阻まれてはあやつも逃げ切ることはできまいて・・・」
そういって顎鬚をさすりながらメインモニター眺めていた。そこに魔方陣班からの緊急通信が入る。
「緊急事態発生!E1が召喚されていません!」
「ふぁ?!」
「なぜじゃ?!何があったのじゃ!」
「現在解析中!」
「選定班より中央コントロール、E1をロストしました!現在再補足のためサーチ中!」
広範囲空間閉鎖型魔方陣の発動で緩んでいた空気が一気に緊張したのだった。
「召喚システムの一部が緊急停止しています!復旧まで10分!」
「こちらジェネレーター班長、残りの魔力と信仰が30%を切りました。このままだとジェネレーターが停止します!」
次々に報告が上がってくる。E1のロストに始まりシステムの停止、さらには神力の枯渇に至るまで問題は山積みとなった状況に創造神と女神は頭を痛めた。
「仕方ない、システム復旧を優先しろ!E1はまだ学校の敷地内にいるはずだ、校門へ続く道に召喚魔方陣を移動し牽制、選定班はE1の再補足を優先に塀と裏門を抜けないか監視だ!」
女神から指示が飛び、各班の作業員は慌てながら作業に入っていった。
「創造神様、次で決めないとやばいですね・・・」
「うむ、まさかここまで手こずるとはのう・・・」
そうして創造神と女神はメインモニターに表示されている復旧状況を眺めたのだった。
まあ、主人公が召喚される結末には違いはない
ただ、召喚されてもかれは逃げ続ける!