ヲタッキーズ54 量子もつれの彼方
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
彼女が率いる"ヲタッキーズ"がヲタクの平和を護り抜く。
ヲトナのジュブナイル第54話"量子もつれの彼方"。さて、今回は秋葉原のスタートアップが開発したコロナ薬に異物混入w
混入犯を追うヲタッキーズは犯人が異世界アキバ2.0の犯罪者と"量子もつれ"を起こしているコトを知り、アキバ2.0へ!
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 癒しのライセンス
プールサイドで手を振る誰か←
笑顔は爽やかだが…太ってるw
「ねぇ見て!」
「素敵!飛び込むわょ!」
「ロブエちゃま!」
流行りの沖縄メイドカフェ"ナハナハ"。アキバにあるけど沖縄メイドカフェだw
アキバから関東平野を見下ろすタワマン屋上にある温室の中にプールと椰子の木。
どっぷーん!
水飛沫を上げ飛び込んだ男は、そのママ潜水でプールの端まで泳ぐ。
泳ぎ着く先にはデッキチェアで寝そべる白ビキニの…ん?メイドか?
頭にカチューシャ、ボトムにつけた、ヤタラちっちゃなエプロンが妙にエロいんですが…
「やるわね、ロブエちゃま!」
「…く、苦しい!吸入器をくれ!」
「え。大丈夫?」
白ビキニのメイドは手慣れた所作でバッグから吸入器を出す!
しかし、その間にも男はプールサイドに崩れ落ちて痙攣するw
「大丈夫?ロブエちゃま!」
「救急車を!」
「誰か助けて!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
30分後。現場にラギィ警部。
「どうしたの?誰?」
「ロブエ・ロシュ。IT系スタートアップのCEOです。見たトコロ、発作かと」
「見たトコロって何ょ?」
「ソレが…医科研が不審な発作だと。何しろ、この2週間で4人目なので。しかも、全員が異次元人セレブのヲタクばかり」
「それでウチに通報が来たの?」
傍らで溜息をつく黒のセパレートでヘソ出しコスチュームのスーパーヒロイン。
僕の推しでメイド長のミユリさんが変身しているムーンライトセレナーダーだ。
「ゴメンね、ミユリ。異次元人を狙った薬物混入テロを考えてるの。被害者は全員、秋葉原で市販のコロナ薬を買ってる。混入物は、鎮痛剤に使われるプライマレクト。エフェドリン系で異次元人の発作を誘発」
「え。4件とも同じ薬なの?」
「ソレが…バラバラなのょ。点鼻スプレーと咳止めが各1件。喘息吸入器が2件」
「3種類の市販薬を無作為に狙った結果かしら?」
「購入した外神田のドラッグストア4店もリスト化出来てるけど…」
「市販の大衆薬となると回収も困難ね」
「かと言って、放置すればアキバの異次元人、誰もがテロの標的になるわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
直ちに万世橋警察署でジャドーとの合同で捜査方針会議が開かれる。
ジャドーは"リアルの裂け目"から迫る脅威と戦う秘密防衛組織だ。
「プライマレクトは、4年前製造中止になってます。治験で発作や不整脈を起こす確率が相当高いと分かったためです」
「え。じゃ今、入手出来るのは?」
「薬剤師に医師、看護師や病院職員…犯人の目的は殺人じゃないですょ警部」
「あら、何で?」
「手口から、薬理の専門知識があるコトは明らかです」
「余計に危険だわ」
「とも言えません。大量に殺す気ならストリキニーネなどの、もっと致死性の高い薬を使うハズですから」
「ワザと被害が限定的になる薬物を選んでるワケね?」
「ねぇラギィ。テロリストは私達に何かを訴えようとしてる。薬物混入テロの目的は、殺人とは限らないわ」
会議中に会話アプリで割り込むのはルイナ。
ジャドーの科学顧問だ。なぜだかメイド服w
「ルイナ!」
「ねぇねぇ。方法論なら私に任せてよ。先ず警部の仮説を検証してみるわ。犯人は薬物混入で何かを訴えているとスル。犯行の共通点は、犯人に選ばれた薬」
「あら。でも、3製品に特に関連性は無いのょ?」
「違うわ、4製品ょ。最も重要な薬物は、混入された物質だから」
「プライマレクトね」
「 YES。アースウィンド&ファイザー社の製品で商品名は"癒しのライセンス"」
「でも、今は売られてナイのょ?」
「あのね。ソレでも、情報理論上は関連がアルの。情報理論とは、情報が点Aから点Bへ伝わる際の理論のコト。例えば、ジャズのトリオ。ピアノ、ベース、ドラムのトリオが、それぞれソロを回すとするわ。テーマとなる曲をピアノ、ベース、ドラムがそれぞれの個性で演奏する。テーマ曲が別の形にアレンジされて演奏されるワケ。極端な話、携帯の着メロやゲームの電子音楽とかにも変わり得る。つまり、演奏手法が変われば全く別の音楽になるけど、テーマとなるメロディは変わらない。この事件では、このテーマ曲に当たるのが"薬物混入"なの。アースウィンド&ファイザー社の"癒しのライセンス"が鍵ょ。テロリストからのメッセージを解くカギとなるわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
早速、アースウィンド&ファイザー社に"癒しのライセンス"の話を聞きに逝く。
ラギィ警部とジャドーのレイカ司令官、スーパーヒロインに変身したミユリさん。
「勘弁してくださいょ。プライマレクトは4年も前に販売を中止し、市場から撤退した商品だ。もう決着済みナンですょ」
「薬害事例が頻発したからですね?」
「いいえ。治験結果を再評価した結果に従ったまでです。ねぇ薬物を混入されたのは、弊社の吸入器だけじゃないと伺いましたが…さ、どうぞ」
Uber eats のメイドがコーヒーを運ぶ。
アキバではデリバリーもメイド姿だ。
「どうも。他に被害にあったのは、咳止めと点鼻薬です。点鼻薬の特許は、御社の子会社ゴロナ研究所のモノですね。咳止めもゴロナの製品だわ!」
「3製品と混入薬物は、結局ココにつながってるのょ!」
「貴方の会社は狙われている!」
元気なアラサーコスプレ女子3名にヤイノヤイノまくしたてられ若きCEOは溜め息をつく。
あ、ラギィは警部、レイカはワケあってゲーセン店員、ミユリさんはヘソ出しコスプレw
「いい加減にしてくれ!で、我が社にどうしろと言うのだ!」
「市場からの全製品回収をお勧めします」
「たった4件のために何100と言う薬を回収しろと?狂気の沙汰だ!」
「メイドが御主人様を失い、喘息の学生は復学出来ない状況ナンですょ!」
「あのな。当社は、心臓病特効薬を含め国内の主要な薬の13%を製造してる。開発途上国にも大量の薬を低価格で提供してルンだ!」
「既にプレス発表の練習とかヤッてるみたいな流暢な反論、ありがと」
「喘息患者2000万人中900万人は子供だ!薬を飲めなくなれば、もっと深刻なダメージを被るぞっ!」
「ところで、本件について御社は、既に報道規制をかけてますょね?」
「…パ、パニックを避けたいだけだ」
「現時点で何も証拠が出ない限り、万世橋も食品医薬品局も協力は惜しみません。でも、何か出れば即、隠蔽行為と見做します。OK?」
「コスプレお姐さん達の熱意は認めるょ。仕事ぶりも感心だ。でも、余り民間企業を脅かさないでくれ。我々はミステロンだ…じゃなかった、何も不正はしていないンだ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
御屋敷のバックヤードを改装したら、ヤタラ居心地良くなって、今や常連の溜まり場だ。
なお、御屋敷の流儀に従って"潜り酒場"では、女子は全員メイド服を着用するお約束←
「市販薬に薬物が混入され、被害が出たというのにアースウィンド&ファイザー社は騒ぐなと言うの。これぞ捜査の壁ょ」
「ソレって巨大製薬資本の圧力?」
「研究には大金が要るわ。資金がなければ、新薬開発が出来ないのも確か」
ルイナは、史上最年少の官邸アドバイザーながらオフは御屋敷にヘルプで入る。
今宵も仕事着なのか、自前なのか判断に苦しむヴィクトリン調の正統派メイドw
「ルイナ、ソレじゃ有害な薬を作っても良いと思うの?」
「いいえ。この世に絶対安全なモノはナイと言ってるだけ。だって、プリンを喉に詰まらせ死ぬ人もいるのょ?リスクゼロの薬しか売れないなら、この世から大衆薬はなくなるわ」
「そんなモン?」
「YES。都市工学では、橋を作れば誰かの土地を潰す。道が出来れば誰かの仕事を奪う。リスクよりも利益を考えないと。少なくとも経済学的には、常に利益が大なれと願うしかナイわ」
ココでラギィ警部が割って入るが、彼女はミニスカポリスのコスプレで唯一非メイド系w
「いいえ。他に何か策があるハズょ。製品が1種類なら警察から警告も出来るけど…テロリストは、無作為に対象を選んでるよーに見えるのょね」
「でも、無作為といっても予測は出来るモノなのょ」
「え。ルイナ、どーゆーコト?」
「例えば、クロスワードパズル。ここに文字情報が並んでる。例えば、この次には何が来るかしら。あ、ヒントは無視してね」
「答えはいくつもあるわ」
「違う。たくさんあるだけょ。条件や情報が一切なければ、次の文字はわからない。でも、次に来る可能性が高い文字は、常に存在スルの」
「ソレはつまり…完全な無作為って存在しないってコト?」
「YES。情報エントロピーょ。今の条件は、あかさたなの50音。日本語と言う条件もあった。それじゃあ、今回の事件の犯人の条件は何かしら?」
「アースウィンド&ファイザー社の薬だけを狙ってるわ」
「YES。ソレと地理的な仮説も立てられる。次回何処でやるかを予測するには…未だ範囲が広いけど」
ルイナは絶好調だ。
ラギィが突っ込む。
「ねぇルイナ。何とか次の犯行場所をピンポイントで予測出来ない?」
「みんな!十分なデータもくれずに簡単に言ってくれるわね。私は、魔法の公式を毎回編み出し続けるマシーンじゃないのょ」
「あら?前回と話が違うわ」
「あの時は…ミユリ姉様のオリカクを2杯飲んでた」
「いいえ。4杯だわ」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜、万世橋ではラギィ警部の陣頭指揮で膨大な量の防犯カメラ画像をチェック中w
「警部!混入事件はともかくとして…世の中こんなに万引きが多いとは驚きです!」
「集中よっ!500時間分の映像から犯行の瞬間を探して!桜田門からの指示で、とりあえず恐喝事件として捜査するコトになったわ。レク付きで報道規制をかけるみたい」
「警部!こんな画像が炎上中です!再生回数激増でサーバーがダウンw」
「犯人の"毒物声明"?YouTuberとコラボで犯行声明をラップで流してる?」
「♫毒物、♫声明、♫第1回、オーイェー?」
「誰ょこの"終わり副シャチョー"って?」
「ブレイク中のYouTuberです。小学生のなりたいオトナNo.1」←
「テロ用に既に購入済みの薬と今後狙う薬をリストにしてラップで歌ってますw」
「自分の主張が伝わらないから、派手に発表スル手に出た?しかし、YouTuberとコラボとはw」
「感心はソコ?リストの薬を飲ンでる人にはロシアンルーレットだわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「それで声明ラップには?」
「テロを起こした理由を詳しく歌ってます。アースウィンド&ファイザー社は危険を承知で、ヲタクを使ってプライマレクトの治験を行った」
「ホントなの?」
「発作の可能性は既に報告されてたのにFDAを丸め込んで治験を進めた。巨大製薬資本と首相官邸が癒着してる…」
「で、テロリストはどう動くか歌ってる?」
「何も。10回シリーズの初回だから、この後出るみたいです」
「引っ張るわね」
「楽しみです」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ラップメイドバー"オーイェー"は、パーツ通りの路面店。
メイド長のオイエさんは、例によってミユリさんの後輩だ。
メイド服のミユリさんと御帰宅。
「ミユリ姉様!ご無沙汰してます!」
「オイエちゃん、ただいま。元気してた?」
「ハイ。あ、コチラが噂のテリィたん…」
ジロジロ見られてパンダになった気分←
オイエさんは…何とパンチパーマだっw
「常連の"終わり副シャチョー"さんとお話しをしたいの」
「ハイ。いつも奥で沈澱してルンですょ。お呼びしますか?」
「御主人様を?ダメょ。コチラからお邪魔します」
オイエさんがひょうきんな顔して突き出す顎の先に、奥へと通じるドアがある。
中からは、何やらガサゴソと物音がして…しかも昼間の室内なのに何やら霧が…
サイキック抑制蒸気だw
「や、やめろ!…アンタ誰だ。資料に触るな!」
室内から悲鳴が聞こえ、ミユリさんがドアを蹴り開け(パンツがw)突入!
ヒョロ長く痩せっぽちの男とズングリ頑強系の女が何ゴトか争ってるw
「万世橋警察署(の方から来ましたw)よっ!手を上げて!」
「待って!抵抗はしないわ。音波銃の許可も取得してる…あら、テリィたん?」
「だ、誰だ?知らナイぞ、お前なんか」
マズいwエレギャーナだ←
第2章 "終わり副シャチョー"の話
エレギャーナと争ってたヒョロ長痩せっぽち男がYouTuberの"終わり副シャチョー"だ。
「あのなぁ俺のトコロにゃ毎週声明、暴露ネタ。陰謀説がバンバン届く。これもゴミ箱行きのハズ、だったが誰かが電話で歌うモンでさ」
「奴が送ってきた声明や資料は、全部犯罪の証拠になるわ。押収します」
「悪いけどぉ俺は言論の自由にぃ守られてぇ」
韻を踏んでルンだか何だか、ヤタラと聞きづらい日本語ラップ、何とかならないモンか?
「そうなの?でも、ココはアキバ。マトモなラッパーだって路地裏で刺される。アンタみたいな3流YouTuberじゃどうなるコトやら。運を試す?」
「運?ナイさ。ナイのさ。俺にはナイ。このネタ、何か売れる気がしたのに、あーあ」
"終わり副シャチョー"は、デスクの引き出しを開けて、奥の方から記憶チップを出す。
「知る権利もクソもねぇ」
おぉマトモな発音だw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の取調室。
ズングリ頑強系女子ことエレギャーナが思い切りフテくされてるw
百戦錬磨のラギィ警部も、さすがに今回ばかりは持て余し気味だ。
「私の名前はエレギャーナ。元ジャーナリストで取材ヘリに落雷し、電撃系のスーパーパワーを得る。因みにコロナはワクチン2回接種済み」
「わかりやすい自己紹介をありがとう。音波銃の許可もリアルでした。で、今回はなぜ秋葉原に?」
「アースウィンド&ファイザー社の依頼ょ」
「雇い主をアッサリ歌うのねw」
「私は民間軍事会社の社員で雇用契約を結び活動してる」
「それで今回は?」
「だから、アンタ達の薬物混入事件の捜査を手伝ってるワケ」
「ソンなの頼んでナイし。そもそもアンタ、仕事がザツで手荒過ぎだわ」
「アンタらのような制約が無いから、色々自由に捜査出来る。好きにヤレるのょ」
「…ナゼか今回"終わり副シャチョー"は訴えないと言って来たわ」
「でしょ?」
「でも、今度捜査に"協力"したら、司法"妨害"で告発するから。OK?」
エレギャーナはニコリともせズに言う。
「私の音波銃、返して」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ジャドー司令部。
今どき珍しい紙コピーの束を小脇に抱えたレイカ司令官が颯爽とラボに入って来る。
華麗なるコスモルックに身を包んだ彼女は、ゲーセンの店員のコスプレをしている。
「ルイナ。毒物声明の文字起こしコピー。完全版ょ」
「助かるわ、レイカ司令官。でも、私が国語が不得意なのは御存知でしょ?手に負えそうにないわ」
「こんな薄くて高い本だけど」
「数式にしてくれたら読むけど」←
「もぉ結構。でも、動機に触れてるから情報理論に役立つと思うンだけどな」
「なるほど。情報エントロピーの特定は無理だけど、動機があれば次の動向を絞り込めるわね」
「お願いょルイナ」
「でも、今宵は"潜り酒場"のヘルプのシフトも入ってて…」
「ねぇ犯行は続いてるの。忙しいでしょうけど」
「わかってる」
僕が入って来たのはこのタイミングらしい。
「ルイナ、知恵を貸してくれ」
「レイカに貸出中なの」←
「何ソレ?お。毒物声明?中身は?見せてょ…混入事件の犯人の奴?」
「YES」
「ニュースじゃハッキリ逝わないからデマかと思ってた」
「首相官邸からパニックを煽るなと指示が出てる。マスコミ各社は声明報道を撤回、アースウィンド&ファイザー社は完全に沈黙してる」
「何と。その間にヲタクに被害が広がったらどーすルンだ?」
「問題ょね」
「万世橋から報告があったわ。"終わり副シャチョー"のスマホ通話記録から、テロリストが"アキバ2.0"から電話してるコトがわかった。声明もソコから発信されてるわ」
「"アキバ2.0"?ソレ何処?池袋?」
「さぁ。去年、保健所の担当官が殺されたとか何とか言ってたけど…」
「保健所?何ソレ?コロナ?」
「いいえ。食品衛生許可らしいンだけど。殺したのは、汚染牛丼を販売した妻恋坂店のマキュ。発砲後に裏山へ逃走した…」
「裏山?何なのソレ?日本昔話?」
「恐らく…異次元の話だわ。"終わり副シャチョー"は、誰も知らない"リアルの裂け目"を何処かに隠してる」
「え。マイ"リアルの裂け目"で自由に異次元を往来してるのか?しかし、何でシドレに探知されないのかな」
シドレは量子コンピューター衛星。このシドレが"リアルの裂け目"発生を探知スルと、直ちにジャドー全ステーションに急報スル。
「恐らく"終わり副シャチョー"は、異次元人ょ。しかも、彼は"アキバ2.0"との通話でいきなりステーキ、じゃなかった、イキナリ、マキュの居所を聞いてるの。なぜ彼がマキュ探しをしてるかは謎」
「異次元へ高飛びスル方法を聞きたかったのかな」
「確かにテロリストが身を隠すには絶好の場所ね。とりあえず、追っかけて異次元に潜入スルとなると…ヲタッキーズの出番?」
レイカ司令官は不思議そうな顔で僕を見る。
「え。ミユリさん達ならもう行ってるわ」
第3章 動機は量子もつれ
廃墟と化した崩れかけのラジオ会館の向こうに、赤黒く巨大な太陽が沈む。
頭上を見ると血の色をした夕陽を反射しドーム状の何かが空を覆っている。
異次元の"アキバ2.0"はドーム都市の廃墟w
「グロテスクね。ココが魔法とドラゴンが支配スル異次元のアキバなの?」
「ミユリ姉様、地獄に似てますか?」
「そっくりね。でも、煉獄の方が似てるカモ」
ミユリさん率いるスーパーヒロイングループ"ヲタッキーズ"は3人組だ。
ムーンライトセレナーダーの下に妖精担当のエアリとロケット兵マリレ。
とりあえず、ココでは全員がメイド服←
「瓦礫の山が地平線まで続く大迷宮だわ。ゴールには何が待つのやら」
「しかし、AMCが"リアルの裂け目"を開く技術を極秘に開発してたとは驚きです。さぁテロリストを探しましょう」
「そのためには、マキュを7カ月間追って来た"次元追跡官"に聞くのが1番ょ…ゴル子!何処なの?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
"次元追跡官"ゴル子12.0は、凄腕スナイパーだったが、反異次元人組織"脳髄帝國"に拉致されてサイボーグとなり、今は傭兵だ。
「ムーンライトセレナーダー。トブルク宇宙港事件以来ね。テリィたんは元気?」
「彼はボチボチ」←
「そう。で、アンタ達もマキュを探してルンだって?」
「YES。ある意味、探してる」
「私達も、この廃墟の迷路を先月から探してるのょ。"アキバ2.0"は、奴の故郷だから、いずれ戻るハズ。私は待つだけょ」
「情報交換しましょう」
「先ず荷を解いて。コーヒーでも飲みましょう…あ、メイドさんだから紅茶かしら」
迷彩服のゴル子12.0が指差すのは、瓦礫の中のテント村だ。
早速、野宿の準備をしながらミユリさんにマリレが尋ねる。
「ミユリ姉様、トブルク宇宙港って?」
「異次元では、ナチスはベルリン占領後に赤道に近い北アフリカに落ち延び、トブルク要塞でUFO船団を組んで月の裏側に逃げるの。ソコでモサド絡みの狙撃事件があって…ゴル子の世話をしたのょ。ソレが何か?」
「だって!姉様、ゴル子12.0と言えば伝説のスナイパーじゃナイですか!」
「しかも、誰1人、生きて姿を見た者はいない…リアルじゃゴルゴ13の妹って噂もアルわ」
「マジ?」
「サインもらっとく?」
「ゼヒ」←
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
1時間後、焚き火を囲みゴル子12.0と会食…
とはいえコーヒー片手にエナジーバーだ←
「貴女達、もう有名ょ。アキバ2.0じゃメイド服は目立つから」
「薬物混入のテロリストは、このアキバ2.0から声明を送ってる。マキュのコトも聞いるけど…何で?」
「マキュはココじゃ有名人なのょ」
ゴル子12.0は、迷彩服をめくって下着をチラ見せ…やや?マキュのTシャツ?欲しいっ←
「マキュって、アキバ2.0では英雄なの?」
「うーん基本的には首相官邸と戦った牛丼店主ナンだけど」
「何ソレ?」
「保健所の許可で揉めゴトがあって、担当官が音波銃で射殺されてる。でも、殺害は関係ないわ。マキュの奥さんもまだ住んでいるしヲタ友も大勢いる。ソレに…今やマキュの関連グッズはアキバ2.0の2番目の収入源だから」
「え。1番は?」
「マキュ捜索隊の宿泊と食事」
手にしたエナジーバーを見るヲタッキーズ←
コレの配布にも何か巨大な利権が絡むのか?
「どのくらい追跡してるの?」
「3週間ほどね」
「進展は?」
「痕跡はいくつか見つけたけど…何しろマキュはアキバ2.0で生まれ育った。地の利では勝てないわ。ファンも多い」
「マキュの人相は?」
「こんな感じょ」
ゴル子12.0は、タマタマ風に乗り飛んで来たチラシをひっくり返し器用に似顔絵を描く。
「ねぇそっちの最新情報も欲しいな。そのテロリストとヤラが、どうやってマキュを探すつもりなのか」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻、と逝ってもリアルだが、僕はパーツ通り地下にあるジャドー司令部に顔を出す。
「テリィたん?ルイナならラボょ」
「いいや。司令官に用がアル」
「え。秋の紅葉ドライブのお誘いとか?」
え。おかしいな?彼女は最近ゲイをカミングアウトしたばかりナンだがwん?ホンキか?
「よ、よ、用件はコレだ」
「声明?」
「そうなんだ。マニフェスト。僕は、無類の読書好きで、ラギィが持ってた声明を読んでしまった。しかし、心を奪われたな」
「え。テリィたんとは文学の趣味が合わなさそうwで、どんな人物が描いたと思う?」
「うーん声明文を読む限り、かなり思い上がった陰謀論者だな。被害妄想の傾向もある」
「あらあら。ヲタクなのね」
「そーでもない。でも、量子科学の考察を読む時には参考書が必要だった。良く理解した上で主張を描いてるし、特殊相対性理論について描かれた意見では、刮目相待で画期的な面もあった」
「じゃテロリストは科学者なの?」
「YES。まぁソコソコ優秀。特に目を引いたのがマキュの件だ」
「そこなのょ。テロリストがマキュを探す理由がわからない」
「僕達もソレを知りたい。声明を出したテロリストが憎む相手は、アースウィンド&ファイザー社だ。会社を叩き潰すまで薬物混入は止めないだろう」
「関係があるのは、テロリストとマキュじゃなくて、マキュとアースウィンド&ファイザー社だと言うの?」
「あくまで僕の考えだけどね」
「テリィたん。ホントにテロリストに心を奪われた?」
「わからない。ただ、念のため声明は2度読み通した。司令官にキチンと説明できるようにと思って」
「さすがはテリィたん。ヲタクね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ジャドー司令部。レイカ司令官自らのブリーフィングに万世橋もアプリでリモート参戦。
「で、テリィたんの意見に従って、科学者に絞って、怨恨の線でテロリストの正体を探ってみたの」
「アースウィンド&ファイザー社をクビになった連中とか?」
「YES。ソレにAMCのスタートアップが極秘開発した"リアルの裂け目マシン"でアキバ2.0に挺進したヲタッキーズがゲットした似顔絵も参考にした。その結果、該当者はサンパ・カー。研究所の元主任科学者ょ」
レイカが示す画像データは黒人女性だ。ニックネームは"黒い稲妻"?ヤタラと強そうw
あ、秋葉原ミリタリークラスターは旧軍の軍事技術を継承するスタートアップ群のコト。
「サンパは、プライマレクトの開発に携わってたの?」
「YES。しかも、彼女はアースウィンド&ファイザー社に薬の危険性を何度も警告しているわ」
「それでクビに?」
「ソレもアースウィンド&ファイザー社が治験を認可された2週間後ょ。解雇理由は業績不振。でも、内部告発を恐れての解雇であるコトは明白ね。その後、彼女は秋葉原の地下に潜り、通話記録もカード記録も一切残さナイ。当局は、報奨金をネット提示し、さらなる内部告発を促したけど効果ナシ」
「そして、最後に彼女が目撃されたのが、このアキバ2.0です。でも、サンパとマキュのつながりがわからない」
ゲッ!ミユリさんの声だ。異次元からリモート参戦してるのか?最近の会議アプリすごw
「そー言えば、声明の189ページにマキュについて記述があったわ。"マキュの例と同様、首相官邸は義務を放棄"」
「何のコトかしら?」
「わからない。ただサンパはマキュと違って殺人はしてないわ」
「でも、2人で秋葉原と戦う気なのね?アキバ1.0とアキバ2.0の両方で」
「アキバ1.0?」
「この私達がいるリアル秋葉原のコト、そう呼んでみた」
「サンパは、アキバ攻撃でマキュと共闘したかったのね」
うなずく全員。
「1年前サンパは汚染牛丼を売り、保健所が牛丼店の営業停止に踏み切ると、店舗を要塞化し傭兵を雇って立て篭もった。籠城3日目に異次元TV局が取材した画像を入手したわ」
スクリーンに"汚染牛丼"とか"店主語る"とかヤタラと扇情的な文字が踊る動画が流れるが…異次元のワイドショー画像だろうか?
"私は、法に従い牛丼の検査も抗生剤の投与も確認してた。首相官邸は、全て知ってるのに営業停止?故意に汚染牛丼を販売した?私も毎日同じ牛丼を食べている…"
"マキュ、牛丼店は完全に包囲した。オトナしく出て来い!"
"出たくても出れない。ソレが秋葉原ラビリンスだ!首相官邸は、私を厄介払いする気か?ヲタクをナメんな!"
共感に値スル主張だ←
「4日目、交渉に来た保健所に傭兵が発砲。在日米軍が突入した時には、マキュは裏山へ逃げてた」
「あっ!裏山って瓦礫の山のコトだったのね!」
「ツッコミはソコ?…とにかく!知る限りでは、マキュとサンパは、異なる次元に存在し、お互い面識がナイ。接点がアルのカモ疑問だけど、明らかに"量子のもつれ"を起こしてる。僕達にわかってるのは、彼女達の動機が"量子もつれ"であるコトとナプキンに描かれた似顔絵だけだ」
僕なりにカッコ良く総括したつもりなのに、アキバ2.0からリモート参戦してるミユリさんから、およそドーでも良いツッコミが入るw
「失礼します、テリィ様。ソレ、チラシの裏ですから」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
さらに1時間後。万世橋の捜査本部。
「警部!ジャドーがゲットした似顔絵ですが、外神田界隈のドラッグストアの防犯カメラ映像に4件ヒットです」
「みんなサンパじゃないの!」
「外神田での移動経路を知るために画像を地図上に時系列でプロットしてみた」
「え。一直線に北上してる?この先には何がアルの?」
「メイドラップバー"オーイェー"です」
「何ソレ?ラッパーのメイドがお給仕スル新手の御屋敷かしら?楽しそう」
違うwソコはYouTuber"終わり副シャチョー"が常連として沈殿スル御屋敷だょラギィw
「ムーンライトセレナーダーが"リアルの裂け目"の存在を示唆したラップバーです」
「え。ソンなトコロに"裂け目"がアルの?」
「恐らく。そして"裂け目"の向こうはアキバ2.0です」
「内部告発してアースウィンド&ファイザー社を解雇されたサンパは、マキュと会うためにソコで"裂け目"を超えたのね?」
「その前に、アースウィンド&ファイザー社への報復として、異物を市販薬に混入して、声明も出した」
「その声明の矛先は、危険な薬を認可した首相官邸にも向けられてる」
ストンストンと話が落ち着いて逝く。
ただ、未だクリアになってナイのは…
「世の中、反体制分子や内部告発者で溢れてる。その中から何故マキュを?」
「共感出来る何かがあったのか…」
「ホントに"量子もつれ"なのか。それじゃサンパとマキュ、ドッチの捜索を優先スル?レイカ司令官」
ラギィ警部からの質問に簡潔なる回答。
「両方ね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜、アキバ2.0から帰投したヲタッキーズを囲み"潜り酒場"で全員メイド服会議だw
「アキバ2.0に逃亡犯が7ヶ月も隠れてる」
「サンパ。黒人巨乳」
「YES…え。巨乳なの?」
敏感に反応するミユリさんw
「手配書に描いてありました」
「保健所の担当者殺しを首相官邸に雇われたゴル子12.0が追跡中だけど、未だ見つかってない」
「あのスゴ腕スナイパーのゴル子12.0?」
「次元を超えた追跡の腕も確かょ。問題は、アキバ2.0が2600平方キロもある瓦礫の大迷宮であるコト、そしてマキュが同じ場所に絶対現れないコト」
ココでルイナの出番。ゆるふわメイド服。
「それなら有名な問題があるわ。グラフ理論のケーニヒスベルクの橋ょ。その街には島が2つあり、川には7本の橋がかかってる。問題は全ての橋を1度だけ渡り、スタート地点へ戻るコトが出来るか。数学者オイラーは、不可能だと数学的に証明した。2つの島に架かる橋が奇数の場合、同じ橋を2度通らずに全部の橋を渡るコトは不可能なの」
「ケーニヒスベルクって何処?」
「質問ソコ?昔のプロシア。グラフ理論ではグリットの形やサイズはどうでも良い。大事なのは点の数とそれを結ぶ線なの」
「マキュもいずれ同じ道を通るってコトかしら」
「絶対とは言えないけどね。確率的グラフで通りそうな道は特定出来るわ」
「アキバ2.0への出発は明日だけど…」
「じゃ私も一緒に行く。現場でデータを集めないと正確な予測は出せない。捜索手順も関係するし、記録にないデータがアルかも」
唯一心配げなミユリさんw
「御屋敷のヘルプは?」
「つぼみんにお願いしましょ。私はアキバ2.0です」
「何なら私がヘルプに入ろうか?」
ホントかょラギィ?メイド服だぞっ!
第4章 量子もつれの彼方
再びアキバ2.0。
「スーパーヒロインに、天才に、ヲタクなテリィたん…あらあら。今回は何が始まるのかしら?」
「今回は、アキバ2.0大迷宮の野外演習ょ」
「そーなの?じゃ出発しましょ」
ゴル子12.0の後に全員が続く。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
瓦礫の上に瓦礫を重ねた大迷宮の中を進む。
「ホラ。ムーンライトセレナーダー」
「何?」
「鉄骨が曲がってる。誰かが座ったンだわ」
「マキュ?」
「いいえ。23センチ。マキュの足なら、もう少し大きい。彼女は、恐らく1時間前にココでランチを食べた」
「なぜわかるの?」
「食べコボしがあるのに蟻がたかってない」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
さらに大迷宮の捜索は続く。
「今度は何?」
「古い足跡だけど…何処かに続いてるわ」
「引き返す?神田リバーを渡った方が良いカモ」
「アッチを通れば?」
「待って。この足跡は…大物ょ!どーやら、夜"ダンジョンのラスボス"が姿を現したようだわ」
「"ダンジョンのラスボス"?何ソレ?そもそも何をしに現れるの?」
「エントロピーを捨てにょ。余りがあると、次回のチャージが減るの。だから、ココは一触即発の爆発物の山なワケ。ハイキングには向かないわ」
「マキュは、ソレが目的でココに?」
「いいえ。ココを通ったのは、食料を探し、電気街へ戻る途中だと思う」
「ねぇゴル子12.0。聞いても良い?」
「 of course」
「見失った時は、どうやって追跡を再開するの?」
「痕跡が消えた周辺を何度も徹底的に探すの。ソレが追跡の基本」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻のリアル。万世橋の捜査方針会議。
「異次元TV局のワイドショー取材によれば、マキュは汚染牛に抗生剤を与えてたそうょ。で、その抗生剤は何処のだと思う?」
「え。警部、まさかアースウィンド&ファイザー社?」
「ピンポーン。マキュの話がホントなら、牛丼が汚染されたのは、アースウィンド&ファイザー社の抗生剤が原因なのカモしれないわ」
「サンパの狙いはソレですょ!ソレを明らかにすれば、彼女はアースウィンド&ファイザー社に復讐出来ます!」
突然叫び声が上がり、振り向けばドラッグストアの防犯カメラをチェック中のチームだ。
「警部!監視カメラの映像でサンパの動きを調べてたら…ココを見てください!」
「あら?彼女…つけられてる?」
「YES。そして尾行してる奴は…この顔、見覚えアリませんか?」
「ヤドリだわ!アースウィンド&ファイザー社の傭兵ね?サンパが傭兵に尾行されてる?!」
もう捜査本部は騒然だw
「ヤドリは、店でサンパのコトを色々と嗅ぎ回ってたそうです!」
「アースウィンド&ファイザー社の命令で動いてるのね?」
「とゆーコトは…アースウィンド&ファイザー社は、最初の事件から混入を知っていた?」
「だが、直ちに通報はせズ、傭兵のヤドリに内部告発者のサンパを尾行させてた?」
「おぉコレで社長を逮捕出来るわ。でも、まだ先ょ。コッチの動きを悟られちゃダメ!」
「了解です」
「サンパのPCを調べます!」
「結果を教えて頂戴」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
同時刻の異次元。大迷宮をズッと走って来たのかゴル子12.0の部下が息を切らして報告←
「電気街から5kmのトコロでサンパの死体が見つかりました」
「え。死因は?」
「10メートル下の神田リバーに転落。朝までに検視報告が出ます」
「ご苦労様」
部下は敬礼して走り去る。
「ムーンライトセレナーダー。サンパが死んだわ」
「事故?」
「まさか。消されたのょ。アースウィンド&ファイザー社には、十分な動機がアル。私、少し寝るわ。大迷宮の中での野宿だけど。みんなも休んで」
「そうね」
横になり目を瞑るゴル子12.0…だが、その寝顔は音波銃の狙撃スコープの十文字の中だw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
引き続き、万世橋の捜査本部。
「サンパのPCメールを復元したら、彼女は、アースウィンド&ファイザー社の抗生剤の問題を上司に報告してます。でも、会社はロクに調査もせズに…」
「抗生剤を売り続け、傭兵に内部告発者を異次元まで尾行させた」
「サンパは、汚染牛丼を食べた人の血液に抗生剤が残ると警告しています」
「え。でも、その汚染牛丼をマキュは長年食べてたのょね?」
「異次元人とはいえ、アースウィンド&ファイザー社にとっては、マキュは厄介な生きた証拠になりますね。一方、サンパは彼女の血液が欲しかった!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
翌朝。大迷宮のゴル子12.0と捜索チーム。
「ルイナ、ソレで?」
「追跡を前提にマキュが通った道を考えてみたわ。通り抜けられない廃墟や神田リバーは除外した」
「人目につかない道も除いてね」
「YES。ソコで、シャボン玉理論の応用ょ。シュタイナーツリーね」
「え。シャボン玉?Xmasツリー?」
「あのね。シャボン玉はモノホンだけど…とにかく、等スペクトルでマキュが通りそうな道を見つけたわ」
「さすが!」
「誰もが知ってるけど2点の最短距離は…」
「知ってる!直線だ」
「テリィたん、そのムダなドヤ顔ヤメて。じゃ3点以上の最短距離を求めたい場合は?」
一同(僕含むw)沈黙←
「そのヒントがシャボン玉ょ。先ず、マキュが大迷宮の中で目撃された3ヶ所を例に取るわ。各点がシャボン玉の中心だと思って。石鹸が形成する外側の壁は、お互い交わって新たな頂点や角度、線や点を生み出す。シュタイナーツリーも同じ。3点の最短距離を出せるわ。じゃ例の3点を考えてみましょう」
「マキュが目撃された場所?」
「YES。そして、マキュが通る可能性が最も高い道をつなぐ。特に、お互いに交わる道をね」
「なるほど。で、交わる場所とは?」
ルイナが示した地図上のポイントを一瞥するや、ゴル子12.0が思わズ大きな声で叫ぶ。
「ソコは…マキュの牛丼店だわ!」
「まさか」
「戻ってたのねw」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
大迷宮を逝きつ戻りつして、マキュの牛丼店にたどり着いたら閉店wシャッターを叩く。
「(リアルなら)万世橋警察署です。シャッターを開けて!」
「令状を見せて」
「質問スルだけです!」
ガラガラとシャッターが開き現れたのはオバサンの異次元人…ん?異次元人のオバサン?
「マキュさんは、保健所の検査官殺害の容疑者でしたが…実は、その容疑を晴らす情報が出て来たのです」
「何の話かしら」
「我々が間違ってました…最近マキュさんは戻って来ましたね?」
「なぜソレがわかるの?」
「方程式から明らかでしょ?ビアンキの第2恒等式に宇宙項としてダークエネルギーを代入した結果…」
KYなルイナの説法を全力で阻止スル僕達w
「この牛丼店は、夫の曾祖父から夫の弟まで続いている。ソレを保健所は、突然奪おうとした。今さら間違いだと言われても遅い。今さら遅過ぎるのょ!」
「ですが…」
バタンとドアが閉まり、僕達は仕方なく閉まったドアの前で、聞こえよがしの鳩首会談。
「ヤッパリ戻ってたわね!」
「生まれ故郷だモノ。離れ難いのね」
「検証しましょう。保健所が来た後、マキュは籠城、4日目の交渉中に理由もなく発砲してるわ」
「追い込みをかけられて、おかしくなったンでしょ?」
僕達は、実際の現場に立ってみる。
「保健所の検査官は、ココで首を撃たれてる。すかさず急襲部隊が突入したけど、マキュは窓から脱出して、裏山に逃げた」
一方、ミユリさん、じゃなかった、ムーンライトセレナーダーは牛丼店の屋根を見てる。
「見て。アソコだけ屋根のトタンが崩れてる。何かに撃たれた痕だわ」
「うーん大口径の音波ライフルだわ。しかも、牛丼店の中からは射撃が不可能な角度ですね」
「YES。だって、その時マキュは牛丼店に籠城してたし」
「じゃ別のスナイパー?何処から撃ったのかしら」
「卓越風が吹いてるから…あの辺り?」
僕達は、狙撃者が隠れてたポイ場所に立つ。
「ココは、保健所の検査官を撃つには絶好の場所だわ」
「やっぱりマキュじゃなくて、別の人物が保健所の検査官を撃ったの?」
「YES。マキュは、アースウィンド&ファイザー社の罪を裏付ける、生きた証拠だモノ。そのママ、生かしておくワケにはいかないわ」
「そのマキュが、保健所に投降しそうになったので、スナイパーは先ず保健所を狙撃」
「ソレを受けて急襲部隊が突入」
「スナイパーは、ココでマキュは射殺されると読んでいた」
「ところがドッコイ、混乱に乗じてマキュは逃走w」
「ねぇルイナのシャボン玉理論だと、逃げたマキュはココを通るの?」
「YES」
「ありがと。じゃルイナはテリィ様とリアルに戻って」
「え。なぜ?」
「ココに足跡がアルわ。多分2時間以内のね。保健所を射殺したスナイパーは、ココに戻って来てる」
「テリィ様。ルイナを連れてお下がりください。後は私とゴル子12.0が…」
「ソ、ソンな!メイドが御主人様に命令スルな!」
「…お願い、テリィ様。ココからはスーパーヒロインタイムです」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
瓦礫の山の谷底で食事中の男…
食事と逝っても、エナジーバーをカジるだけだが、腰を下ろして一心不乱に食べている。
いち早く発見したゴル子12.0が拳を上げて、ムーンライトセレナーダーにハンドサイン。
「わかったわ」
ムーンライトセレナーダーは、瓦礫を迂回しマキュの背後から、気配を消して忍び寄る。
ところが、ソレを見て谷底のマキュを照準スコープの十文字に捉えるスナイパーがいるw
「私達を尾けてたのは貴方ね?」
スナイパーは、照準したママ視野の隅に拳銃を構えるゴル子12.0を認める。
ゴル子12.0の拳銃が奇妙な形なのが気になるけど、構わずにマキュに照準。
「撃てば貴方は原子に分解される。大人しく音波銃を捨てて」
ニヤリと笑いスナイパーは引き金に指を…
「最後の警告ょ!ヤドリ」
銃声。
瓦礫の山に響く銃声に、谷底のマキュはエナジーバーを放り投げ、脱兎の如く逃げ出す!
「マキュ!」
追うムーンライトセレナーダーめがけて、マキュは振り向きザマに手榴弾?を投擲スル。
閃光と爆発音…次の瞬間真っ白なガスが周囲に拡散…コレは蒸気?サイキック抑制蒸気?
スーパーヒロインはパワーを使えないw
「待って、マキュ!ねぇ聞いて!私はムーンライトセレナーダー」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「動くな!私は"ダンジョンのラスボス"のエントロピー爆薬130キロの上にいる。入って来たら大迷宮ごとNHKを吹っ飛ばす」
点火した発煙筒と拳銃を手に叫ぶマキュ。
「え。何でNHK…と、とにかく!わかったから落ち着いて」
「瓦礫の上から狙撃出来るけどマキュが倒れて発火筒を落としたら大爆発だわ」
「後退ょ。下がって!」
後退りするムーンライトセレナーダー。
ソコへ、ヒョッコリと姿を現したのは…
「ルイナ?何で、また戻って来たの?テリィ様まで!」
「テリィたんの案内で逃げたら元の場所に戻っちゃったw貴女のTO、恐ろしく方向音痴」
「あぁ実はそぉなのょ」←
スーパーヒロインと天才がハイタッチ!
「ねぇマキュがエントロピー弾薬を吹っ飛ばすとか逝ってるの」
「でも、まさかマキュを殺さないょね?」
「そうしたいけど…打つ手がナイの」
「OK。ソレなら良い理論があるわ。交渉理論ょ。良い交渉は、合意の枠組みを満たすわ。どっちにミスがあっても、結局優位に立てちゃう」
「こちらの立場は変えズに、相手に強みを与えるのね?でも、何か材料はある?」
「情報ね。真実を話せば?」
ゴル子12.0が色めき立つw
「手の内を見せるの?反対だわ」
「現場の直感に反してる?でも、計算上では大丈夫ナンだけど」
「うーん2人とも理解出来てる?僕はサッパリだけど」
「実は、私も何となく現場の感覚に合わないなってコトだけで」
「待って!」
突然、立ち上がるミユリさん、じゃなかった、ムーンライトセレナーダーw
「何する気?サイキック抑制蒸気でスーパーパワーは使えないわょ」
「上等。タダのコスプレ女なら、マキュに脅威を与えないわ」
「確かに」
「僕は萌え萌えだな、ミユリさんのコスプレ」
「口の悪いヲタク達ね。マキュさん!」
両手を高々と挙げて、瓦礫の山の中からユックリと歩き出るムーンライトセレナーダー。
「私はムーンライトセレナーダー。1人で来たわ」
「以前そうやって交渉に来た保健所の人は撃たれて死んだけど」
「でも、狙撃したのは貴女じゃない。そうでしょ?」
「貴女は、爆破を止めたくて言ってるの?でも…アラサーのスーパーヒロインって意外に萌えるわね」
「意外が余計だけど、ありがと。でも、リアルには貴女の自爆を待っている連中がいる。アースウィンド&ファイザー社ょ。保健所を射殺したのは、彼等が雇ったスナイパー。そして、今は貴女の自爆を期待してる!」
「え。アセルナ製薬じゃなくて?」
「はい?ワクチンNo.2のアセルナも絡んでるの?と、とりあえずアースウィンド&ファイザー社は貴女を消すために傭兵を雇った。アセルナは…接種後に腕が上がらなくなるみたいな感じ?とにかく!汚染牛丼は、アースウィンド&ファイザー社の薬のせいょ!だから、早まらないで!」
ゴル子12.0が、構えた音波銃の狙撃スコープの十文字にマキュを捉える。引き金に指を…
「しかし、牛は既に処分されて証明は出来ナイわ?」
「ソレが出来るの。汚染牛丼を食べた貴方の血の中に証拠が残ってる。自爆すれば、その唯一の証拠が消えてしまうわ。さぁ音波銃を下ろして!一緒にアキバ1.0で血液検査に逝きましょう!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
アキバ1.0。駆けつけた万世橋のパトカーに乗せられるマキュ。
「お手柄だ。ありがとう、ムーンライトセレナーダー!」
「どうも」
「スーパーパワーが無くても最高だったょ」
僕の自慢のメイド長だ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場。
「結局、アキバ2.0って異次元じゃなかった。未来のアキバで、私達はタイムトラベルをしたってコト?」
「そーなの。AMCの"リアルの裂け目マシーン"は、実は時間トンネルの実験機だったワケ」
「ソレで、シドレは"裂け目"として探知出来なかったワケね?」
「YES。アキバ2.0で野宿して星座を見上げた時、変だなって思ったの」
「でも、今宵は天体観測には未だ早過ぎるわ」
「YES。何ゴトもアセルナ製薬、なんちゃって」←
「私、何だかサンパが可哀想に思えて」
「内部告発者の末路ょね。ハッピーエンドには、ならない」
「でも、望み通り社長は刑務所行き、アースウィンド&ファイザー社は営業停止ょ」
「彼女は彼女の命をかけた。信念のために」
「そして、罪のない人々を傷つけて犯罪者にもなった」←
「あの会社も、マトモに薬を作ってればな。助かった人がどれだけいたか」
「世の中には、知識こそ絶対だと考える人間がいる。ルイナみたいな学者ではなくてもね。でも、知識とは、かくも儚いモノだ」
うっかりメイドトークに割って入った僕だが…全メイドの視線の十字砲火がを浴びるw
「テリィ様。ゴル子12.0とのランチでもそんなお話をされたのですか?」
「え。テリィたんが追跡捜査官とランチを?」
「ホットドッグ以外のモノも注文したの?」
笑い転げるメイド達。
「あのさ。探究心旺盛な僕達は、知的欲求を極めるためにランチを共にしただけさ」
「あらあら。ミユリ!TOが突然変異の何かを浴びちゃったみたいょ」
「ガンマ線バーストなら、10秒間で莫大なエネルギーを出す。太陽が寿命100億年間で放つ以上のエネルギーだ」
「えっと…緑色の怪力ハルクの本名、何だっけ?確かガンマ線で変身したわょね?」
「ガンマ線は、宇宙の果てから来る。その発生源は、未だに謎のママだ」
「だから?」
こりゃダメだ。今宵はお出掛けだ。
ドアに向かう僕の後ろで話は続く。
「テリィたんが?」
「追跡捜査官と?こりゃネタだわ!」
「まったく私のTOは…方向音痴ナンだから」
そして、僕のメイド達は大笑いw
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ねぇ貴女?テリィが
逃げようとしているわ
あぁ貴女!テリィは
貴女の側にいたいとは
思ってないみたい
お願いだから
逃げ切れるだなんて
思わないでね
もう狙いは外さない
殺しのライセンスがあるわ
テリィの心臓を
真っ直ぐに狙ってる
殺しのライセンスがあるわ
誰かがこの恋を
引き裂こうとしても
ねぇテリィ?かわいい私が
いつも側にいたらって思わない?
ねぇテリィ?隠しても無駄
私を抱きしめれば間違いないわ
殺しのライセンスがあるの
浮気なハートを
真っ直ぐに狙ってる
殺しのライセンスがあるの
時が止まろうと
この恋は止まらない
だからお願い
私から逃げ切れるなんて
思わないでね
絶対に
おしまい
今回は、海外ドラマでよくテーマとなる"マルチバースの世界"を軸に、コロナ薬を開発した秋葉原のスタートアップ、同社の内部告発者、異次元アキバ2.0の牛丼店主に保健所の担当官、異次元で暗躍する傭兵達などが登場しました。
さらに、異世界アキバ2.0の世界観、傭兵の価値観、マルチバースとタイムトラベルの関係などもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、宣言解除で経済の再建を模索する秋葉原に当てハメ展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。