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宇宙スパイ

作者: はやまなつお


「おい、アルファスリー!」

都会のビジネス街。


「?」俺は何気なくそっちを見た。知らない男だ。


ヒゲ、メガネで、50歳ぐらいの太った背広の男が言った。


「こっちをみるな、つけられてる!このまま普通に歩け」


「ええっ?」俺は怪しむ表情をした。


何の冗談だ、頭がおかしいのか?


「よし、走れ!」男は私をつかんで、地下鉄への通路を駆け下りた。


何を馬鹿なことを、と思ったが男の真剣な態度に驚いて、つい従ってしまった。


曲がり角で身を潜める。背後から走ってくる足音。

男はメタリックな銃のようなものを背広の内ポケットから取り出した。


目の前を白人らしき大柄な黒い背広の二人組が駆けていく。


「あっ!」気づいて立ち止まる。


男は構えていた銃を撃った。

銃声は無い。光が走って二人はジュッと溶けてしまった。


「・・・・・!」


「アルファスリー、今までなぜ連絡してこなかった?」


「いや、何を言ってるんだ?妙な冗談はやめてくれ」


銃を突きつけてくる。


「とにかく来てもらおう」


階段を上がり、車の後部座席に乗り込まされた。


太った男も後部座席。

運転席は無人。


「スタート」男の声で車が動き出した。

自動運転機能があるらしい。


「透明化モードオン」


「浮上」


そして上空へ。ビルが下になっていく。

ドローンにしては回転翼も振動も音も無い。


飛行性能がある車はこれほど高性能だったろうか?



そのまま浮上して宇宙へ。

巨大な宇宙船の下部が開いて飛び込む。


車を降りてメインルームらしき場所へ。

10人ほどが待っていた。


「無事だったか?アルファスリー」


「何のことかわからないんだが・・・」


太った男「どうやら学習装置が強く作用しすぎたらしい。

自分を地球人だと思い込んでる」


「・・・・・」


「我々はアルクトールズ人だ。地球人に似ている。顔はかなり違うが」


「信じられないらしいな、よし、マスクをはずそう」


11人が顔に手をかけて引き剥がした。


「ウワァッ!」


恐ろしい怪物の顔だった。鬼と蜥蜴、鮫を合わせたような。


「君も同じ顔なんだぞ」


「そんな馬鹿な。考え違いをしている!あ、いや、ちょっと混乱して。

しばらく一人にしてくれないか?そうすれば」


「いいだろう。個室で休みたまえ」



俺は個室で一人になった。鍵はかかっていない。

ドアは、横のパネルに触れると開く仕掛けだ。


あいつらは勘違いしている。

顔マスクのモデルが俺か、俺によく似た奴だったんだろう。


本物ではない、とバレたら殺される。

どうすれば無事に元の場所に戻してもらえるのか?


さっきの太った男が入ってきた。

太っているのは一人だけなので

「アルファスリー、落ち着いたかね?」


「え、ええ、まだ記憶が混乱していて。

自分が借りていた地球の部屋に一度戻っていいですか?

そうすれば思い出すかも」


「その時間は無い。1年間の調査で、地球人は本質的に悪の心も持つ種族と判明、

滅ぼすことに決定した。行方不明だった君も発見されたことだし、

ただちに実行される」


「ええっ!ちょっと待ってください。悪い奴も多いですが良い人間も大勢います、

滅ぼすなら悪い人間だけにしてくれませんか?これだけの科学力ならできるのでは?」


「地球人個人データ70億人分は収集できた。

小型レーザーユニット群のピンポイント攻撃で悪人削除は可能だ」


「では」


「悪人は生まれ続ける。定期的にゴミ掃除しろと?手間すぎる。地球人は全員削除、

 我々銀河連盟の選ばれた者が地球に移住する」


「それでは悪の侵略者でしょう、断固反対しますよ」


「まだ地球人意識が残ってるようだな。

 いつまでもマスクを付けていないではずしたまえ」


「い、いや、その、後ではずすので・・・あ、頭が痛いっ!

もう少し休ませてくれ!」


「うむ、わかった」



メインルーム。

怪物の仮面を外す11人。普通に地球人の顔。白人の男ばかり。


「奴、本当に俺たちが宇宙人の怪物と思ったらしいな。

 あいつ自身の発明の、脳のデータコピー装置の威力は凄い」


「俺たちはメンバー・オブ・エリート、略してMOEもえ

 地球の政治を影からコントロールしてる。科学力でな。

 地球人絶滅なんてするはずがない。我らの利益確保が重要だ」


「はじめてのアジア人メンバーだが。いっそこのまま葬らないか?」


「いや、それは」「多数決を取ってみよう」「冗談は」「あんたは日系だったな。だから」


ガガガガッ!部屋が揺れる。「どうしたっ!」

「コンピュータが暴走・・・あいつかっ!ダメだ、コマンドを受け付けない!」


ドガーン!巨大宇宙船は爆発。




ごまかせた。男は出て行った。

部屋のコンソール(操作卓)に付く。

猶予はない。急ぐ。なぜか、操作が分かる。


悪人判定(軽犯罪の常習者・重犯罪者(正当防衛などは除く))の削除を

指令して、小型レーザーユニット群1万機を地球にばらまいて即実行。


そして巨大宇宙船のエンジンを暴走させて爆発するようセット、

脱出艇の位置を確認して、部屋を飛び出し、格納庫へ。脱出。


巨大宇宙船の爆発後も、ユニットはレーザー掃射で、指定された悪人削除を実行し続ける。



私はアルファスリー。

人類コントロール組織「もえ」ではそのコードネーム。


しかし「もえ」はロスチャイルド、ロックフェラーなど白人の超金持ちの作った組織であり、

白人だけの「選民貴族」の立場を守るためだけにある。


私は「もえ」を破壊するための工作員。


アジア人である私を排除しようと「もえ」の一人がチャンスを狙っていた。


脳データコピー装置を作り、私自身が人体実験して別人となった。

30歳の都会の平凡なサラリーマン。


「どっきり」を仕掛けよう、その隙に暗殺を、とその男が罠を張るように仕向けた。

 巨大宇宙船、に見えるのは巨大宇宙ステーション。


恒星間飛行能力の科学力までは持っていない。

記憶が戻ったのは操作卓で私がシステムを起動した時。



悪人削除をどうにか実行できないか?というのが私のメインテーマ。

「もえ」破壊は、本来のチームの指令だがこれは2の次。


しばらくは地球上から、くだらないイジメをやらずにはおかない「心が怪物」共が

息をするのを停止させられるだろう。





手本は永井豪短編集から。

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