「王の愛人に私はなる!」 あなたは私の告白を聞くべきだわ
文中、読者を煽るような表現がありますが。ご容赦ください。
実際彼女はそういう人だったため、リアルな彼女という実像をお見せするために
煽り表現を使っています。本当に嫌な女性だったようです。
「私は王の愛人になる」
私はこう決めていました。そしてその通りになったのです。お金も権力も宝石もなにもかも思うがまま。我が世の春をすごしました。でも、続きませんでした。
このとても貴重なお話をあなたにしてさしあげましょう。
聞きたくない? あなた、庶民ね、きっと。庶民はすぐに自分に無関係な世界をシャットアウトしますから。こういう世界も知っておいた方が、いいでしょうに。まあ、いいでしょう、勝手にしなさい。
その時の私は、25才。誰からも美人と謳われていたわ。
本当に美人なの?こんな突っ込みをされるならばお見せしましょう。
私の自画像をごらんあれ。どれだけ美しかったか、お分かりいただけるはずだわ。
どう、あなたよりもはるかに綺麗でしょう?
あなたの奥さんや彼女よりもずっと綺麗でしょう?間違いなく絶世の美女、でしょう?
さあ、ここで私の名前をあなたの胸に刻んであげる。
フランソワーズ・アテナイス・ドゥ・モルトゥマール。一般にはモンテスパン夫人と呼ばれているわ。
さて、公式愛妾、という言葉、あなたは知らないでしょう?
当然だわ。フランスの王家にしかない制度ですから。
フランス国王は王妃のほかに、公式で愛人を持っていい。こういう制度でもちろん国民の皆様も、納得済のシステムなのよ。
「私は王の愛人になる」 私の決意は実行に移されたわ。
私の狙っている王はルイ14世よ。
太陽王とも呼ばれているので、世界史の授業をまじめに受けていらっしゃる方ならばご存じでしょう。
当時、フランス王には、すでに王妃がいました。マリー・テレーズ・ドートリッシュという名前の方です。
この当時、王妃というのは政略結婚で決まるものでした。メーガン・マークル妃?あんな恋愛結婚は21世紀だから存在できるだけで、私の生きた17世紀には絶対に無理でした。王と王妃の結婚は、他国であってもすべて政略結婚なのです。
フランス王妃という称号。のどから手が出るくらい欲しいものではありましたが、
このポジションはさすがの私でも狙えなかったというのが、実際のところでした。
もちろん、私も貴族の出身でした。あなた方のように庶民ではありません。
でも、フランス王妃という地位はそれだけではなんともならないのです。
このマリー王妃も政略結婚で、ルイ14世の母后の国、スペイン王室から来た方でした。頭も悪く、美しくもなく、会話のセンスもない、王妃でなければ価値のない女でした。
なぜそこまで言えるか?ですって。それは私が彼女の侍女をしていたからです。間近で見ていたのだから本当に美しくなくて、センスもなかったと断言できるのよ。
あら、盛りすぎているだろう!ですって。
あなたたちは、本当にわかっていないのですね。私の肖像画を見れば、これ以上の美人などいるわけがないとわかるでしょうに。
ふっ。いいでしょう。マリー・テレーズのお顔も見せてあげましょう。
私が正しいことがわかるはずよ。
やっとわかったかしら?もっさりした方でしょう?
では私の話にもどしますよ。
「私は王の愛人になる」 どう道を作るか?
公式愛妾なら王妃と違い、道はあったのです。出自も貴族なら問題ありませんから。
私の美貌と絶対にあきらめない野心があれば、公式愛妾になれるのです。
そちらには、海賊王に俺はなる!とか言っている男の子がいるんですってね。
海賊王とか魔法帝とか、無邪気というのか無駄というのか。
それよりも 王の愛人になる。これが私の目標。
太陽王ルイ14世の公式愛妾、これが私の標的なのです。
順を追って私の人生をご説明しましょう。まず、今は1666年です。このタイミングの戦況をご説明しましょう。
狙いをつけているルイ14世は28才でした。王妃もルイ14世と同い年でした。私はこの二人より3つ年下です。
ルイ14世は王妃のことなど眼中にありませんでした。
これはまあ、当然でしょう。ただ、王妃としてその地位を尊重したふるまいをする。それだけのことです。だから、すぐに公式愛妾になれるのかと思いきや、思わぬライバルがいました。
ルイーズ・ド・ラ・ヴァリエール、これがライバルの名前です。
この女、すでに公式愛妾のポジションを得ていた私の正真正銘のライバルでした。
年は私より3つ下。
それだけでも腹立たしいけれど、彼女ときたら、脚がね、左右の長さが違うのよ!
松葉杖をついていたのかって?いいえ、かかとの高さを左右で変えた靴で歩けてはいたわ。
少しびっこを引いていたけれど。
私の生きた時代は、美しさに価値を置かれる時代。21世紀とは価値観は全く違う。そんな脚の長さが違うような女が公式愛妾だなんて許せない。私の気持ちはそんなところだったわ。
また腹立たしいのは、ルイ14世の子供を何人も生んでいること。
やはりね、子供を産むと母親の地位は、強くなるのよ。たとえ庶子であってもね。
子供が認知されれば、ただの愛人よりはけた違いに存在がパワーアップするものですから。
まあ、不幸中の幸いで、生まれても流産か、すぐになくなってしまったりしていて、今いるのは、生まれたばかりのマリー・アンヌ・ド・ブルボンだけなのが、私にとっては救いだったのです。
私も早く公式愛妾の立場を手に入れて、子供を産まなくては。
当面の目標は、このルイーズ・ド・ラ・ヴァリエールから王の寵愛を奪う事。
次のお話ではどう、略奪したかを聞かせてあげるわ。
そうそう、最後に一応言っておかなくては。
私はルイ14世と出会ったとき、結婚していました。結婚して3年くらいたっていたわね。
子供も二人産んでいたわ。そう年子よ。
そんなに驚かなくてもいいでしょう。
この時代、不倫なんて当たり前にあったし、貴族なら子供も自分の手では育てないものよ。
私なんて、子供には興味なかったから、誰かにお任せしてそれで自由の身でいたの。
夫はヴェルサイユにはいなかったわ。彼は遠くの地にいて、私は王妃マリー・テレーズの侍女としてヴェルサイユ住まい。いわゆる別居結婚みたいな感じね。別に彼が私を愛していなかったわけじゃないわ。彼は私を愛していたわ。ただ、少なく見積もっても鈍感だったわね。
彼は私のやろうとしていることに気付きもしなかったわ。
王妃もバカだったけれど、私の夫もまあまあバカだったから。別居で本当に助かった、というところよ。
この人はマジで性格の悪い女性で、今だったら総スカンです。
こんな嫌な人が生きていたんだ、と思っていただけると幸いです。
あとこちらの小説にも力を入れておりますので、よかったらどうぞ。
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