46. 第九死合!悪役令嬢vs復讐に燃える炎の修練バカ【炎の激闘!】
「何をちんたら走っているか新入り!!!」
校庭をヘロヘロになって走るヴォルフに対してマリクの怒号が飛ぶ。
『ヴォルフはモヒカン肩パッドの世紀末スタイルではないのですね』
マリクが断髪式をしようとしていたんだけど、あの格好はさすがに可哀想かなって思って、私が止めたのよ。
『……元不良達はあの格好させても可哀想そうではなかったのですか?』
あいつらは好きでやってるからいいんじゃない?
『元は貴女の指示でしょうに』
いいじゃないモテモテになったんだから。
『そう言う問題ですか!』
「ぜぇ…ぜぇ、はぁ……はぁ……」
「――ったく……おせぇぞ!カマを掘るのに体力使いすぎたかゴミ虫がッ!」
おうおう!マリクのヤツ張り切ってるわねぇ。
『あれ教えたのも貴女ですか!?』
ハートフル軍曹の魂が教えたのよ。
『この世界に彼の魂はいませんよ』
「髪の長い貴族令息は男の娘かオカマだ!男の娘には見えんからお前はオカマだ!」
「ち、違う……」
「その口からだらしなくしょ○便垂れる前と後ろに『サー』を付けろ新兵!!」
『……これも貴女が教えたのでしょう?』
ん~!?なんのことかなフフフ…
「ぜぇ、はぁ……ぼ、僕はニュービー……じゃない……ヴォル……フだ……」
「あぁ?聞こえんな!!タマ落としたか!」
あら?膝をついて力尽きた癖に、ヴォルフのヤツ反抗的な目でマリクを睨みつけたわ。
『こんな目に合されれば当たり前でしょう』
ブートキャンプでは反抗は重罪で粛清されちゃうわ。痛い目見るだけ損よ?
『ここには人権はないのですか!?』
世界まるまる実験場にしている女神様には言われたくないわ。
『言い返せないのが癪に触ります』
「僕はヴォルフ・ハーンだ!」
「あぁん?名前が気に食わん!おカマ野郎か男の娘の名だ。本日より貴様を男おんなと呼ぶ!いい名前だろ?」
うーん……ヴォルフのヤツ修道女の恰好でヨーヨー振り回すようになったりしないかしら?
『またコアなネタを……』
「さあ走れ男おんな!それとももう走れんかッ!」
「ぐッ!く、くそぉ……」
ヴォルフのヤツ産まれたての子鹿みたいに膝がガクガクしてるわね。
「この程度かッ!やはり貴様はタマを2つともカアチャンの子宮の中に落としてきた真正のおカマのようだな!」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!僕はオカマでも男の娘でもなぁぁぁい!!!」
あ、走り出した。
『大丈夫なんですか?これは根性だけでどうにかなるレベルではないでしょう……死にますよ?』
大丈夫よ。マリク達にはその辺の加減はきちんと教えているから――あら?
『ん?――向こう側からやって来るのは……』
「マーリスじゃない。おひさー」
『貴族令嬢がなんと軽い挨拶』
「俺はガルム殿下の忠臣、武を司る五車聖の一聖、炎の修練バカ!!」
「なに言ってんの?あんたマーリスでしょ」
『この男もですか……』
「わが盟友風のヒョロいの仇!そしてわが主のために!!」
風のヒョロいってヴォルフのことよね?
あいつ死んでないけど……
『そこで死にかけていますけどね』
「カレリンきさまも炎の中におのれの野望とともに滅びるのだ!!」
私の野望って……まさか《霊長類最強》のこと!?
この私の《霊長類最強》を阻止しようと言うのね!
やらせはせん!やらせはせんぞ!
『おそらく違うと思いますよ』
「《捏斗炎上剣》!」
ボッ!ゴオォ!
おお!抜いた剣の刀身から炎が噴き出したわ。
『魔法と剣技の融合。魔法剣ですね』
炎がボッて!
カッコいい!
あれいいわ!
凄くいいわ!
『貴女のそういう感性は男の子っぽいですよね』
私もやりたい!
凄くやりたい!
『貴女は魔法が使えないでしょう』
え~やりたいぃ~!
私にもやらせてぇ~!
『少し卑猥ですよカレリン!』
やだやだやだやだ~~~!
いやぁぁぁ!私もやるぅぅぅ!!!
『駄々をこねないで下さい』
なんで私は魔法が使えないの!
『いつも物理が最強って言っているじゃないですか。魔法なんて不要だって』
あれは違うの!
強いとか弱いとかじゃないの!
カッコいいの!
『そんな事を言っても仕方がないでしょう』
う~~~~~~~
『そんな涙目で睨んでも無理なものは無理です(拗ねた感じがちょっと可愛いです♡)』
あんた全知全能の女神なんでしょ!
『諦めてください』
諦めたらそこで試合終了ですよ!?
『バカを言わない……だいたい《令嬢流魔闘衣術》は魔法が使えていたら修得できていなかったと思いますよ?』
それは困る!
くッ!仕方ない。
この鬱憤はマーリスで晴らす。
『飛んだとばっちり!?』
「野望と共に灰となれカレリン~!」
マーリスが炎の剣で私に襲い掛かってきたけど、私の《霊長類最強》の野望はあんたの炎ごときでは灰にはできないわよ。
「もらった!」
びゅっ!
マーリスが振るう剣は上段から私の右肩から臍よりやや上あたりを通る軌道を描いている――つまり、袈裟斬りである。
私は大きく左足を右へと引きながら上体を斜に構えて――
トンッ!
――魔力を集中した掌底で剣の腹を叩き、その軌道を左へと流した。
「どぉうわ!」
剣を流され、その勢いでたたらを踏んだマーリスはすぐに体勢を立て直すと、私から距離を取って剣を正眼に構え直した。
「……《令嬢流魔闘衣術・ガントレット》」
「ば、馬鹿な!なぜ燃える刀身を素手で弾ける?」
「たいした曲芸ね。だがその程度の炎では私の(霊長類最強の)野望を灰にすることはできないわ!」
「くそッ!火力が足りないと言うのか……ならば《燃料投下》!!」
燃料?
油でも刀身に注ぐのかしら?
「カレリンに虐められた、カレリンに虐められた、カレリンに虐められた、カレリンに虐められた……」
「なによそれ!?」
「これぞ《捏斗炎上剣》奥義《燃料投下》!自分で自分を罵倒して、その怒りのパワーで俺の魔法の炎をより燃え上がらせるのだ」
「なんか下らない!」
『こんな魔法を使いたいですか?』
ちょっとでもカッコいいって思った自分が恥かしいわ。
「今度の炎は触れれば確実にお前を焼き尽くす……はず?」
「なんでそこは断定しないのッ!」
こいつ情けなさ過ぎるわ!
『ガルムの臣下はこんな連中ばかりなんですかね?』
「行くぞ!《捏斗!炎上焼抱》!」
ボワアッ!
「ぬ!自ら全身に炎を!!」
マーリスの全身から炎が立ち昇ったわ!
なにこれ!メ○ンテ?
『まあ魔法の炎なので術者は多少耐性はあるとは思いますが……』
多少ってことは、無傷では済まないのね。
このバカ!全身火傷しちゃうじゃない!
『一応心配しているんですね』
「カレリ~~~ン貴様はここで、この炎の修練バカとともに焼け死ぬのだ!!」
ぎゃぁぁぁ!こいつ私に抱き着いてきたんですけどぉ!
『普通にかわせばいいじゃないですか』
これ程の執念を見せられて、つい同情して手加減してしまいました……
『ちょっと油断し過ぎでしょう』
あッ!今こいつ私のお尻に触ったぁ!!
『玉砕相討ちの攻撃と見せて痴漢行為ですか……』
「ヤラシイ!どこ触ってんのよッ!」
「なっ!違――ッ!」
「このケダモノ筋肉ッ!」
「ほ、ほんとに手がたまたま当たっただけで……むふっ」
なんか否定しようとしてるけど、こいつお尻から手を離さないんですけど!
『それどころか鼻の下のばしてますね』
殺すッ!
『同情の余地なしです』
セクハラ男、死すべしッ!
喰らえッ!ワ〜ンパ〜ンチッ!!
(ゴゥ!!)
あ、吹っ飛んだ……
『貴女のアッパー……軽く音速超えてますよ』
当たる前に衝撃波だけで吹っ飛んだわね。
(ドザザッ……)
『地面を滑走していますね……痛そうです』
無様ねぇ……まあ、炎も消えて良かったんじゃない?
「ぐぐ…こ…この衝撃は全身を砕かれたようだ!」
『満身創痍ですね。死にませんか?』
ガクッガクッて震えながら余裕で喋ってるし大丈夫じゃない?
『さっきまで心配していたではありませんか』
セクハラ野郎に掛ける情けはないわ!
それにしても見掛け倒しの筋肉ね!
中身は軟弱セクハラの変態だし……
こんなんじゃガルム様の側近は務まらないわッ!
『はぁ……展開が読めました』
「マ~リ~ク!」
「サーイエッサーッ!」
即時対応。さすが私が鍛えた精鋭ね。
「喜べマリク一等兵!貴様に新たな部下を与える!そこに倒れている使えぬ筋肉の新兵マーリス二等兵だ」
私の言葉にマリク以下清掃隊員達の視線が地に倒れてガクガクしているマーリスに注がれた。
「この見掛け倒しの筋肉を鍛え直す!その役を貴様に任せる。地べたで這いずりまわるウジ虫を苛めて、虐めて、イジメて、いじめて、徹底的にいびり抜いて使える清掃隊員へと鍛え上げろ!!」
「サーイエッサー!」
おっ、マーリスのやつ立ち上がってきたわ。
『産まれたての子鹿みたいに足がガクガクいってますけどね』
「ぐッ!……カ、カレリン……どういうつもりだ」
どういうつもりですって?
『貴女とっても悪い笑顔になっていますよ』
「ヴォルフがあんたを待っているわ――」
「なんだと?風は生きているのか!?」
当たり前でしょ。ケンカで殺したりしないわよ。
「どこだ?どこに風はいる?」
仲間思いの漢ね。
ではヴォルフの元へとごあんな~い♪
「――地獄でね」
『……鬼ですか貴女は』
注意!一部差別的表現が含まれておりますが、あくまでもコメディ、パロディですのでご容赦ください(^▽^;)




