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41. 第八死合!悪役令嬢vs道化の転生ヒロイン[ROUND4]【STAGE 学園】

 

 ――(更に数日後)――



 うーん……

『どうしたんですか?』


 家令と侍女長にね、特製筋肉増強!目指せムキムキ高タンパク質弁当はもう作っちゃダメって叱られちゃったの。

『あれ自分で作っていたのですか……』


 だって料理長に頼んでも作ってもらえないんだもん。

『まあ高位の貴族令嬢が食する(たぐい)のものではありませんから、料理長としても立場上断るしかありませんよね』


 だから自分で作ったのに……

『由緒正しき貴族令嬢が台所に立って料理をするのは基本的にNGですからね。諦めて大人しく生徒専用食堂(カフェテリア)へ行きなさい』


 ううう……タンパク質が足りないよ~。

『あまり筋肉がつき過ぎると却って敏捷性を失ってしまうでしょう』


 柔よく剛を制すって?

 あんなのただの妄言よ!

『柔よく剛を制すは武経七書(ぶけいしちしょ)の1つ《三略》の中の言葉で、別に弱い者が強い者を倒すという意味ではないのですが……』


 そんなこたぁどうでもいいのよ。

 とにかく世の中最も重要なのは、1に物理(パワー)、2に筋力(パワー)、3、4も(パワー)なら5もパワーなのよ!!!

『見事に力押し!?心・技・体は貴女の国の言葉でしょうに』


 まあ、技を磨くのは重要ね。物理(パワー)を余すことなく相手に叩き込むのには必要だもの。


 そう……技はパワーを十全に発揮するためのもの――

『行きつくところはパワーなんですね……』


 ――だけど筋肉は鍛えられても、心なんて鍛えようがないわ!


 心なんて筋肉を鍛えていれば、気がついた時には勝手に鍛えられているものよ。

 だから世の中パワーがあれば大抵の事はなんとかなる!

『なんという暴言!?というか、その発想は地上最強の生物(ゆーじろー)よりではないですか?』


 私をあんな外道と一緒にしないで!

『人間やめてるところは同じですけどね』


 私は霊長類最強であって、地上最強の生物ではないの。

 あいつとは違うわ。霊長類は人間なのよ!

『オラウータンやマウンテンゴリラも霊長類ですけど……』


 大丈夫!奴らは超えていると思うの。

『まあ間違いなく敏捷性は貴女の方が上ですし、マウンテンゴリラのパワーはせいぜい1トンクラス。6桁クラスの貴女はパワーでも間違いなく上ですからね』


 何ですと!?

 私ってマウンテンゴリラ100頭分なの!?

『分かってもらえましたか?貴女は十分に人外なんですよ。もはや地上最強の生物も真っ青ですよ。どこの世界にシロナガスクジラを持ち上げられる霊長類がいるんですか』


 知らなかった……

 私は既に人間の範疇(はんちゅう)を逸脱していたのね。

『筋トレやめますか?それとも人間やめますか?』


 筋トレはやめられないわ!

 だけど、このままだと私は人でなしになってしまうのね。

『人でなしではなく、人でない存在ですよ』



 あら?

『どうしましたか?』


 女の子達の悲鳴が聞こえるわ。

『私には聞こえないんですが……やっぱり人間離れしていますよね』


 どうやら悲鳴の出どころは更衣室みたいね。

『更衣室って……別棟ではなかったですか?よく聞こえますね――ッてもういないし!』




 さぁて、悲鳴はこの扉の向こう側からみたいね。

『ここまで来れば、さすがに私にも聞こえますね』



 バンッ!!!



『ちょっとここ更衣室なんですよ!扉を蹴破(けやぶ)ったら外から丸見えになってしまうでしょう!?』

 緊急事態よ!

 着替えを覗かれたくらい無問題(もーまんたい)でしょう。


 人の命に関わるかもしれない場合は何をやっても許されるのよ。

『いや、そうかもしれませんけど……貴女だって女の子でしょう。もし着替えている時に同じように乱入されたらどう思いますか』


 そんなのぶっ殺すに決まっているでしょう!

『ひ、酷い!!!』


 さぁて、どんな事件が起きてるのかな♪

『貴女、楽しんでませんか?』



「なにをやっているの!!」

「「「カレリン様♡」」」



 令嬢達が私に注目しているわ。

『まあ、これだけ派手に乱入すれば当然ですね』


 えーと……悲鳴の原因は(キョロキョロ)

『あの黒髪の娘じゃないですか?刃物を持っていますよ』


 あら?あれって確か眼殺子じゃなかった?

『なんですか、そのあだ名は!』


 むむむ!目で殺せる女が刃物を持つなんて……

『論点がおかしい!?』



「あ、あ、あ……わ、私……」



 この子の顔は真っ青ね。体もガタガタと震えるし……

 でも体調が悪いからと言って光り物に頼るなんて。

 もっと自分の目力を信じなさい!

『いや違うでしょう……絶対違うでしょう……』



「こんな危ない物を持ってるのに……いけない子」


 もう!こんな光り物に頼らずとも、あなたには人を殺せる危ない目を持っているでしょう。

『諭す点が絶対に間違ってる!』


「もうこんな真似はしちゃダメよ」

「ふぁ…いぃ……」


 さあ、私にその目力を見せてみなさい!

『顔を両手で固定して覗き込んでも、そんな力は発揮されないと思いますよ』



「「「キャ――――ッ!!!」」」



 なに?なんでみんなそんなに悲鳴を上げているの?

 私が刃物を持っているから?

 ナマハゲ再来ですか?

『悲鳴の色が違うと思いますよ』


 とにかく、この子が眼力ではなく光り物を使った現場を更衣室にいる令嬢達に目撃されてしまっているのは不味いわね

『心配するところが違いませんか?』


 この子の殺眼には未来がある。

 こんな所で潰してしまうのは惜しいわ。


 さて……どうしたものか?


 おや?あのピンク頭の子が持っている制服……

『刃物で切られていますね。恐らく、黒髪の子の仕業でしょう』


「あなた……」


 わたしの呼び掛けにピンク頭の子がびくりと体を震わせたけど無理ないわよね。

 普通の女の子だったら、刃物で襲われたら怖いに決まっているわよね。

 怯えているのに急に声を掛けられたら驚くのもしょうがないか。

『貴女にその普通の感覚があったことに私は驚きです!?』


 だけど被害者が騒いだら眼殺子の未来が断たれてしまうわね。

 よし!隠蔽してしまいましょう。

『貴女という人は……』


「その制服の代わりが必要ね」


 えーと、私のロッカーの中に確か予備の制服一式があったはず。

『何故そんなものが?』


「私って制服をよくダメにしちゃうから予備をいつも置いているの。サイズは違うと思うけど、今日一日は我慢してね」

『貴女は学校で何をしているんですか!?』


 フツーの学生生活よ

『普通の生徒は制服をしょっちゅうダメにしたりしません!』


「あ、あ、あ、ありがとうございます!!!」

「こっちの制服は直しといてあげる……その代わりと言うわけじゃないんだけど、この件は大事にしないでもらいたいの。刃傷沙汰(にんじょうざた)はさすがにこの子の将来に大きく響いちゃうしね」


 ふっふっふっふっ……

 これで買収ね。安いものだわ。

『制服程度で刃傷沙汰を有耶無耶(うやむや)にするつもりですか』


「刃物で襲われて恐い思いをしたあなたには申し訳ないと思うの。この程度では償いにならないけれど、どうか私の顔に免じて許してもらえないかしら?」


 素直に頷いてくれたわ。

 言質も取れたし、これで問題はないわ!

『貴女という人は……』


「みんなもいい?この(いさか)いをあまり公言しないこと」


 これでよし!

 ここの令嬢はみんな私のファンクラブの子みたいだから大丈夫でしょう。

『なんだかなぁ』



 ピンク頭の子も着替え終わったようね……


「あら?」


 少し……ちょっと……いえ、かなりサイズが大きかったかしら?

『ブラウスがだぼだぼですね』


「思った以上にサイズが……」


 おかしいわね……そんなに身長差があるかしら?

『貴女が165で、この子は150ちょっとくらいですか』


 差は10cmちょっとくらいか。


「ブラウスが大きすぎた?」


 でもそれにしてもサイズ感が違い過ぎない?

『特に胸部がですね』


「ごめんなさい。(バストサイズに)ここまで大きさに差があるなんて思わなくて」


 スカートも何だか変じゃない?

『もうほとんどロングスカートになっていますね』


「スカートは大丈夫かしら?丈が随分としたまで下がっているけど……」


 これだけの差があるとウェストもゆるゆるになっていないかしら?

 突然スカートが脱げたりしたら目も当てられないわ。

『貴女のウェスト50cmですよね……』


「腰回りは大丈夫?ずれ落ちたりしないかしら?」

「……」


 なんか黙っちゃったけど。

『ウェストは(むしろ)ろ苦しそうですね』


 なんですって!!!


 つまり、このピンク頭は胸が小さく重心が低い理想の寸胴体型!

 なんて羨ましいッ!

『貴女それ本気で言って――いるんですね』


 惜しむらくは身長が低い事ね。

 だけどいい線いってるんじゃない?

『ちょっとこの娘が憐れになってきました』


 なんて格闘技向きの体型なの!

 ちょうど対戦相手に困ってたのよ。

『この大陸の魔獣の最強格魔狼フェンリルでさえ戦いを放棄する貴女とまともに対戦できる人類はいないでしょう』


 この子なら鍛えれば、きっと共に霊長類最強を目指せるわ!

 切磋琢磨(せっさたくま)するライバルって燃える展開よね。

『この娘は魔力量だけなら貴女を上回っていますね(この子どんな鍛え方したの?魔力量だけが異様に高い……え!?生まれた直後から魔力を鍛えてたの?この子もバカだ!)』


 へぇ私より高いんだ。

『貴女の魔力量は既に人類の枠を外れています。匹敵するのは魔王や勇者くらいでしょう。それを超えるこの娘は魔力だけなら間違いなくこの大陸の頂点です(この子も人外になるまで鍛えなくても……日本人ってみんなこうなの?)』


 おや?魔王とか勇者っているのね。

『いますよ。この乙女ゲーの続編では攻略対象の1人が勇者で悪役令嬢が魔王ですから』


 魔王とか勇者ってやっぱり強いのよね?

『まあ……そうですね』


 面白そうね♪

『……今のところ貴女とは無関係ですよ』


 どこにいるの?

『教えるわけないでしょう』


 どーしてよ?

『教えたら絶対に戦いに行くでしょう?』


 行かないわよ……

『目を逸らしながら言っても説得力がありません』


 ちッ!まあいいわ。後でギルドで確認するから。

『だから戦いに行こうとしないッ!』


 腕が鳴るわ。

『何ニヤニヤしてるの!絶対にダメですからね!!!』


 退屈しないわね、この世界は……

『貴女は少し退屈してください!』


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