3. 第二死合!格闘少女vsポンコツ女神【STAGE 光堂】
「もしよろしければ皆様方に格闘少女芳田紗穂里についてご説明させていただきましょう。彼女は弱りきった格闘界に新風を巻き起こすべく闘って、闘って、闘い抜いて将来は霊長類最強になることを夢見る少女なのです。しかし、開幕そうそう初戦敗退するという番狂わせ!
これで終わりか?そう思った紗穂里の前に突如現れる謎の美女!
それではみなさん、令嬢類最強!にレディィィゴォー」
[CONTINUE……7…]
私の名前は芳田紗穂里。
霊長類最強の女を目指し、日々鍛錬を惜しまない17歳の女子高生。
中学にあがるまでは空手一直線で頑張っていたんだけど、小学生の時に強くなりすぎた私は小学生のみならず中高生もぼこってしまって……
大会には年齢制限もあるので、それならと中学ではアマレスに転向してみた。アマレスなら国際大会もあるしね。
自慢じゃないけど、アマレスでも私はすぐに頭角を現し、将来は金メダル間違いなしと報道陣にも追っ掛けられたものよ。
だけど夢半ば私は奴に敗れてしまったの。
そう奴――大型貨物自動車に!
強敵だったわ。
今思い起こしてみると勝てる気がしないわね……
考えてみればあれは生物ではなかったのよね。
霊長類最強には関係ないんだからまともに戦う必要はなかったわ。
脳内麻薬物質出過ぎてまともな判断ができてなかった。
やっぱり脳内麻薬に手を出してはいけなかったのよ!
あ、でも鉄の拳で語り合うゲームでは機械も相手にしてたっけ。
じゃ、やっぱり大型貨物自動車にもワンチャンいける?
「人間が勝てるわけがないでしょう」
――ッん!?
あれれ?
人の声?
だけど声はすれど姿は見えず――ッて言うより私の体も見えないんですけどぉ!?
しかもここ何処?まわり真っ白……光の中?
「今頃ですか……ここは神域です。貴女は現在『魂』だけの存在になってこの場所に留まっているのです。そのため姿形はありません」
さっきから私の心の声に返答するとは――さては妖怪『覚』ね!
「私は女神ルナテラスです!こうすれば私を認識できるでしょう」
あ!見えた。
すっごい美人!ボン!キュッ!ボン!だし。
髪は銀?金?シルバーブロンドかしら?サラッサラね。肌なんて真っ白で染み1つないし、すっごい滑らか。瞳は青なのね。大きいわ。サファイアだったらくり抜いて売れるかしら?
「猟奇的な事を言わないでください!」
[CONTINUE…6……]
「まったく、無駄に時間が経過してしまいました。いくら時間の進行を遅らせても残り6秒ではあまり余裕がありません」
0になったら?
「貴女の魂が輪廻の輪に戻ります。そうなると転生ができなくなります」
転生?私生き返れるの?
そしたら奴に……大型貨物自動車にリベンジね!
「トラックから離れなさい!
まったく……転生とは生き返りではありません。記憶を持った状態で別の生を得ることです」
でも、輪廻だって転生するんでしょ?なんか違うの?
「輪廻の輪に入ればその中の数多の魂が混じり合い、その膨大な魂を資源に新たな魂が生まれるのです。当然貴女という個は失われます」
つまり、転生はPETボトルのジュースを飲み終わった後にPETボトルに飲み物入れて水筒にするようなものね!同じPETボトルで水筒という別の物に生まれ変わると。そして、輪廻の輪はリサイクルね!廃品回収されたPETボトル達が混ざり合い新たなPETボトルとして生まれ変わるの!
「ま、間違ってはいないですけど何かやだなぁ……
ゴホン!それで、貴女には今から異世界に転生をして頂きたいのです」
ゴホンとか言っちゃってるよ。今どきゴホンって言う人いたんだ。
「(怒)」
[CONTINUE…5……]
「馬鹿なことばかり言っているから時間が足りなくなってきているじゃないですか!」
ふっ!真の格闘家は心理戦にも長けているのよ!当然舌戦もいけるわ!敵を怒らせ精神状態を乱すのも勝負のうちよ!
「私の精神状態を乱してどうするんですか!」
あまりカッカしなさんな。美人が台無しですよ。
「誰のせいですか!もういいです。話を進めましょう。
貴女には私が乙女ゲーム『恋の魔法を教えます』を参考に創生した世界に転生して欲しいのです」
何かゲーム名が引っかかるけど……その心は?
「我々神は様々な世界を創造して観察することで色々な可能性を模索しています。
私も試験的に幾つか世界を作成していて、その一つが先ほど述べた乙女ゲームを利用して創造した世界なのです。ですが困ったことに世界が物語をそのままなぞって進行してしまっているのです。
世界の選択肢が全てゲームの進行と同じ方向に収束しているため、世界から多様性が奪われ平行世界も全て似たり寄ったりの状況……」
つまり私を送り込んで世界の状態に一石を投じたいと。
そうすることで世界に変革をもたらせる――の?
「貴女を悪役令嬢に転生させることで……おそらく?」
[CONTINUE…4……]
悪役令嬢って……悪役より主人公の方がよくない?
「いえ、ヒロインでは幸せになるにはゲームをなぞることになります」
あ、そうか……悪役令嬢の場合はその立場を改善しないといけないから……
「理解が早くて助かります。まあ、ヒロインは既に転生者がいるのでどのみち無理なんですけど」
なんかそっちの方が本当の理由みたいね。
だけど、ヒロインは転生者使ってもダメだって……なんでその子を転生させたの?
「私が転生させたわけではありません」
は?貴女が創造した世界なんでしょ?
「そうです。ですが……とある神が私の世界に干渉してヒロインに転生者を送り込んだのです」
何だってそんな真似を。
「私の創造した世界の多様性を奪うためです」
それじゃ、その『邪神』みたいなのが転生者を送り込んだせいで、世界が物語をそのままなぞって進行してしまったのね?
「神に本来の意味で正義も邪悪もありはしませんので『邪神』という概念はおかしいのですが、まあ人の世では『邪神』と呼ばれていますので便宜上そう呼びましょうか」
で、何でその邪神はそんな嫌がらせを?
[CONTINUE…3……]
「もうあまり時間がないのですが……
まあ、説明しましょう。見て分かるように私は絶世の美女です」
自分で言っちゃってるよこの人……まあ確かに美人だけど。
「邪神の奴がそんな私に懸想しまして。気持ち悪い恋文で告ってきたのよ!」
なんか急に俗な話に……
「とーぜん振ってやったわ。その時の意趣返しね」
痴情の縺れで他人を巻き込んで世界規模の変革を起こさないでよ!
「あいつ1万年も前に振ったこと未だに根に持って……」
俗な内容なのにスケールでかいし!
「そんな根暗だからモテないのよ!腹いせに他の女神たちに奴の恋文を晒してやったわ!恥ずかしい内容で皆の笑い者よ!」
こっちはこっちで性格ワルッ!
やることみみっちいし!
[CONTINUE…2……]
まあ、動機はともかく理由は分かったわ。
で、何で私を選んだのよ。邪神の選んだヒロインと対決しなきゃいけないでしょ?だとすれば……
「はい、乙女ゲームを熟知したヒロインと対決して悪役令嬢がその結末を改変するためには同様に、いいえそれ以上にゲームを熟知している者でなければ!」
私は乙女ゲームなんてやったことないわよ。
「え!?」
ん!?
「芳田佳緒里さん?」
それ私の姉の名前!私は芳田紗穂里よ!
どっかで聞いたことあるゲームだと思ったら、佳緒里ねぇがやってたやつか!
「……」
あんた間違えたわね!
目ぇ反らすな!
駄女神!
ポンコツ女神!!
「私は女神ルナテラス……全知全能の神の一柱。私が選んだ芳田紗穂里よ」
誤魔化すな!あんた選んでないでしょ!?思いっきり間違えたでしょ!
全知全能なんて嘘っぱっちじゃない!ポンコツの癖に!
「芳田紗穂里よ!それではこれより悪役令嬢カレリン・アレクサンドールとして新たな生を授けます」
ちょっと待て!
何の情報もなしでどーしろと!?
「きっと私の選んだ貴女なら期待に応えてくれるでしょう」
間違ったくせに!期待なんてしてないくせに!
「貴女の新たな生に幸あらんことを」
最初から雲行き怪しいんですけど!
[CONTINUE…1……]
(ガサゴソ)
「……」
ちょっとあんたポケットに手を突っ込んでなにゴソゴソしてるのよ。
(きら〜ん)
なにその100円玉!
「それでは転生の時間ですので『こんてぃにゅ~』です」
えっ?待って!
まさか私の魂100円なの!?
(ちゃり~ん)
――ッちょっと待ちなさいよぉぉぉ!!!
[HERE COMES A NEW CHALLENGER]
《1P PLAYER SELECT》
ポンッ!【ガルム】ポンッ!【ラファリィ】ポンッ!【ザービ】ポンッ!ポンッ!ポン……
ポンッ!【カレリン】……カチッ!トゥルルルルルン!
みなさんお待ちかねぇ!
ついに紗穂里はカレリンに転生することになりました!
無事トラック転生をはたしたカレリンを待ち受けていたのは虐待乳母!
ゲーム設定で彼女の虐待がカレリンの悪役令嬢への道を開くことになっています。
しかし、設定を知らないカレリンは当然これに対処できるはずもありません!
果たしてカレリンは虐待を乗り越え無事に成長することができるのでしょうか?
令嬢類最強を目指した闘いのゴングが今鳴り響きます!
次回令嬢類最強!ー悪役令嬢より強い奴に会いに行くー『第三死合!悪役令嬢vs虐待の乳母』に、レディィィ、 ゴォォォ!




