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17. 第六死合!悪役令嬢vs恋する殿下[ROUND1]【STAGE 屋敷】

[ROUND1]

――2P SIDE――



『カレリンが山賊達を討伐し、タクマの破滅フラグをベキベキにへし折ってから月日は流れ…はや3年が経過しましたか。


 カレリンももう12歳。


 そろそろ次の破滅フラグ、第2王子ガルム・ダイクンとの婚約が決まる頃のはずなのですが……



 おや?


 あそこに見えるは、そのガルム本人ではないですか。側近兼攻略対象の3人を引き連れてアレクサンドール領まで何をしに?』



「おいマーリス!そんな堂々と目立つように歩くな。お忍びなんだぞ!!」

「そうは言うがなヴォルフ。こんなコソコソとするのは性に合わんのだ」

「元はと言えばお前が直接確認すればよいと提案したびが発端だろうが!」

「まあまあ2人とも落ち着いて。もう少しで侯爵の館に着くからさ」


「何を騒いでいる。置いていくぞ」

「「「あ!殿下お待ちください!」」」




『ふむ、全員でカレリンを確認しに来たのですか……

 まあ自重しない彼女の評判は凄いことになっていそうですからね。

 もしかしたら、これでカレリンに幻滅して婚約が不成立になるかも……そうすれば破滅フラグは完全に消滅しますね』




『さて、どうしますか。カレリンの状況も確認しに行きたいのですが……ガルム達の様子も気になりますね……

 ここは分体を彼らの元に送りましょうか』

《というわけで、分体の私がガルムたちを偵察すればいいのですね》


『はい。よろしくお願いします』

《ラジャー!では覗いてきますか》


『定時連絡ヨロ』

《おk》




《本体はカレリンの方へ行きましたか。それでガルム一行は……》


「急な訪問に応じて頂き感謝するアレクサンドール侯爵」

「これはガルム殿下。アレクサンドール領へようこそいらっしゃいました(招かざる客だがな!)」

《カレリンのお父上、笑顔が引き攣っていますね》


「これは内密にしていただきたいのですが、私の降下先としてアレクサンドール侯爵の御息女が最有力候補として名前が上がっているのだ」

《ふむ、この流れはゲーム通り》


「それは……我が愛娘には勿体ない申し出。しかし、カレリンはとても殿下の妃になれるような娘ではありません(ちっ!王家め私のカレリンちゃんに目をつけるとは!)」

《お父上はカレリンをお嫁にやりたくなさそうですね》


「いや、カレリン嬢の評判は王都にまで鳴り響いておりますよ」

「噂とは時に無責任なものでございます(このクソガキにうちのカレリンちゃんを嫁にやるなど業腹だ)」

《お父上の殺気にガルムたちは全く気がついていないようですが……》


「そうですね。私も噂ではなく、カレリン嬢を実際この目で確かめたいと思い、こうして王都よりやって参りました」

「(ちっ!)それはそれは娘のためにご足労いただき誠に恐縮です(カレリンちゃんに難癖つけるつもりか小僧!殺す!)」

《このオッサン、殺す気満々ですね》


「できればカレリン嬢に面会を許可していただきたいのですが……」

「そうですな……(カレリンちゃんをこんなクソガキと引き合わせるのは―――いや待てよ!カレリンちゃんはあれで令嬢としてのマナーは完璧だから直接合わせるとこの小僧が気に入ってしまうかもしれないが、素の姿は冒険者やったりと破天荒で令嬢らしくない。それを見せれば幻滅してくれるやも)」

《少し悪い顔になりましたね。こういうところはカレリンと似てます。父娘(おやこ)ですね》


「殿下、直接会うよりカレリンに気づかれぬよう、窺うのはいかがでしょう?(そうすればカレリンちゃんに直接合わせる必要もなく、令嬢らしからぬカレリンちゃんを見て婚約も諦めるだろう。まさに一石二鳥!)」

「ふむ……(それは願ってもない)」


「ちょうどカレリンはダンスを学んでいるところです。ご覧になられますか?(規格外のカレリンちゃんに度肝を抜かれろ!)」

「それではお言葉に甘えて(この目で見定めてやる)」

《2人とも思惑が噛み合っていそうで噛み合っていませんね……なんだか楽しくなりそうです》



――――――――――



 通された部屋はちょうどダンスフロアを見下ろすことのできる位置にあった。



「あれがカレリン嬢……」

 剣にしか興味のないマーリスが珍しく女の子に見惚れていた。



「ふわぁ〜すっげぇ美人。今まで見てきた子たちが霞むなぁ」

 ヴォルフは相変わらずだが、その目はカレリン嬢に釘付けだ。



「聞きしに勝るとはこのことですね」

 冷静で絶対に心が動かないと思ったセルゲイもか……



「ああ……」

 私はそれだけしか言葉にすることができなかった。


 かく言う私が1番この中で目を、心を、魂を奪われていたのかもしれない。



「ダンスの講師がいないようだが……」

「そうだね。侍女はいるみたいだけど。この女性もけっこう美人だね」



 マーリスとヴォルフのお喋りが耳に入って初めて、カレリン嬢以外に目を向けていなかった自分に気がつく。


 私はいったいどうしてしまったというのだ。

 彼女ばかりに目が行ってしまう。

《おやおや〜ゲームと違って、ガルムがカレリンに一目惚れですか?本当はまずいんですが、面白そうでにやにやが止まりませんなぁ》



 そんな私の視界の端に白い影がよぎった。


『わん!』


 犬だ。

 ふさふさの真っ白な愛らしい子犬だった。



「おう!随分と可愛い犬だ」

 マーリスは12歳にして身長160cmを超える、ごつくガタイのいい少年だが、こんな見た目に反して可愛いもの好きだ。特に犬が好きらしい。


「彼女の飼い犬なのかなぁ?」

「そのようですね」



 その白い子犬は嬉しそうに尻尾を振ってカレリン嬢に近づいた。

 カレリン嬢は破顔すると、その12歳とは思えぬ豊かな胸にその子犬を抱きかかえた。


 その子犬は嬉しそうに彼女の大きな胸に顔を埋める。


 くっ!羨ましい。



『フェンリルは今日も元気で可愛いですねぇ』


 子犬の頭を撫でる彼女の声がホールに響く。



「フェンリル?…あの子犬の名前だろうか?」

「そうすると『大魔獣フェンリルさえも大人しく従う』という噂の出どころはあれですか」

「なーんだ。ただの子犬に尾鰭はひれがついただけなのかぁ」



 噂話などそんなものか。

 子犬の名前に踊らされるとは……



「お!ダンスの練習を始めたぞ」



 マーリスの言葉に私はカレリン嬢を目で追った。

 その動きはとても洗練されていて、それでいて鮮烈だった。



「不思議なステップですね」

「ああ……」



 セルゲイの指摘に私も頷いた。が、それは私を魅了し、目が離せない。

《不思議も何もあれダンスのステップじゃないでしょう》



「美しい……」

「ああ……とても綺麗だ」



 私の呟きに、普段は美意識を持ち合わせていないのではないかと思わせる朴念仁のマーリスまでもが同意した。



「あれほど犬が懐いているんだ。悪いやつじゃないだろう」

「子犬を見る目は優しかったしねぇ」

「ダンスは独特なステップでしたが、悪くはないようです」



 地上に舞い降りた女神のような美しい少女の姿が頭から離れなくなっていた。


 私はいったいどうなってしまったというのか?


《プッ!クスクス……いけません。ガルムと婚約は成立しない方がいいのですが、彼の勘違いが面白すぎます!》



――――――――――



「アレクサンドール家の庭園もなかなかのものですね」

「ああ……」


 セルゲイが庭を軽く見回して述べた感想に、私は相槌を打った。


「今度は散歩かなぁ?」

「犬に散歩をさせる。実に素晴らしいことだ」



 先ほどの白い子犬を連れたカレリン嬢を追って庭に出れば、彼女は自由に駆け回る子犬を優しく見守っていた。


 不意に彼女は身を屈めると花壇の花を愛で始めたようだ。



 その綺麗な花に囲まれる少女の姿は、まるで花の妖精と戯れる女神のようだ。まるで高名な画伯の描いた一枚の絵画のような光景だ。

 《確かに、まさしく絵になる娘です。だけど絶対に見てるの花じゃないでしょうね》



「可憐だ……」



 無意識に私の口から讃辞が漏れる。



「随分と殺伐とした噂が多いご令嬢でしたが……子犬を可愛いがり、花を愛でる。情緒豊かな方とお見受けします」

「そうだね。女神のような絶世の美少女ってのは正しかったけどねぇ」



 全く人の伝聞など信用できんものだ。


 この時、私は誓った。

 人の言葉にはきちんと耳を傾けてつつも、その真偽は己の(まなこ)で確かめなければならないと……



「おや?どうしたのでしょう」



 カレリン嬢が突然スクッと立ち上がった。

 いったいどうしたのか?


 彼女はお尻を突き出したりと何やら奇妙な動き?踊り?のような動作をしだした。



 そして……



 おお!

「――ッ!」

「な!?」

「うわぁお!」

「は、破廉恥な!」


 またもや突然の行動だった。

 カレリン嬢はスカートの裾から素足を出すと膝を高く上げた。



 太すぎず、細すぎず、均整の取れた脚は真っ白で、裾から覗いた太腿は少女とは思えぬほどに艶かしい。

《あの子いったい何を?本体に確認を……は?虫?なんで?》



「――は!?き、貴様ら見るな!見るんじゃない!!!」


 我に返った私は慌てて側近3人の視界を遮ろうとした。


 こいつら3人とも目を血走らせてガン見しやがって!


 いや、確かに私も見た。

 なんならこの(まなこ)にしっかりと今の光景を焼きつけた。


 いや、私はいいのだ。

 いずれあの脚は私のものに――じゃなくてッ!

 いずれはカレリン嬢は私の妻になるのだから。


 それにしても、目を閉じれば鮮明に彼女の色っぽい脚が脳裏に浮かぶ。


 筆舌に尽くしがたい美しい脚線美……

 白く、細く、長い脚は艶めかしく……


 思い出しただけで、頭に血が上り、顔が真っ赤になるのを自覚する。



 えがった〜

 ええもん拝ませていただきました~



 何なのだ!彼女(の脚)が頭から離れず、目が彼女を追ってしまう。

 ああ!彼女(の脚)を思い出すだけで、私の心臓が煩く音を立てる。

 彼女(の脚)を思い浮かべると、胸が高鳴り張り裂けそうに苦しい。



 はッ!まさか!

 これが――恋!!!



 私は彼女に……女神の如き美しく神秘的な彼女に恋をしてしまったのか!?

《ブワァハッハッハッ!カレリンが女神!カレリンが神秘的!》



「殿下?いかがなされたのですか?」

「おいおい顔が真っ赤だぞ」

「何かの病いかなぁ?」



 心配する3人に、しかし私は頭がボーッとして考えが纏まらない。


 ああ、確かにこれは病いなのだろう。



 そうだ、これがきっと巷で言われる……



――恋の病い


《ヒ〜ッヒッヒッ!い、いけません!ガルムが愉快すぎます。お、お腹がよじれて痛いです!》

次話は場面かわってカレリンsideです(-ω-)/

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