いつの間にかここに
仕事をさぼって
ホームにいた。
乗るべき電車を
二本くらい眺めて
見送った。
仕事の始まる
時間になった頃、
ベンチから立って、
水を買いに行った。
何歩目かの自販機。
具合が悪くて、
しょうがないと
座っていたんだ。
どのへんまで
しょうがないか。
その昔なら、
どうにかして、
仕事に間に合わせた。
もうそうじゃなかった。
確信犯でさぼった。
理由があって
休むこともあった。
通院だったり、
野暮用だったり。
そうじゃなくさぼった。
具合が悪くて、
なんとなくの、
そういう理由が
ほんとの理由から
遠ざけてくれていた。
ほんとの理由とは、
仕事のことだけじゃ
なくって、
ぼんやりとした
虚しさのことだった。
したかったのは
こういうことか。
どうだったんだろう。
成績はいい方で、
下らない遊びもした。
でもその囲われた、
停滞感に飽きていった。
もちろん好きな
女の子はいた。
告白はしてないけど。
物足りなかった。
自分という人間に
ぴったりの場所に、
寄り来られたことを。
それを虚しさと言う。
ぴったりの場所に
はまり込んでしまうと、
人はぬるま湯に
浸かったように
抜けられなくなる。
努力しないと
這い上がれないほどの
違和感は必要だった。
間を埋めようと
人はもがく。
水を飲んでみた。
具合が少しよくなる。
だからあの日も、
知らない土地を目指して
知らない電車に乗った。
知らない電車に乗り、
何年か過ぎていった。
そしていつの間にか、
ここに来ていたんだ。
いつの間にかここに。