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第43話.決着

今回はいつもの1.5倍くらいの長さがあります。

1話で終わらせるために、長くなってしまいました。

(さて、そろそろ髑髏でも伏せてみるか……? いや、流石にまだだな。ギリギリまで薔薇を伏せ続ける!)


 リガルは、手札から薔薇を選んで伏せる。


 それとほぼ同時に、他の3人もカードを伏せた。


「じゃあ今度は俺からか。さっきからすぐに数字の宣言が始まってるから、今回はカードを伏せてみようかな」


 クリストスはそう言って、追加でカードを伏せる。


「じゃあ俺も」


「俺も」


 それに便乗するように、カインとアルディア―ドが追加でカードを伏せる。


(何か意図があるのかは分からないが、俺はそれには乗らない。あくまで行動はシンプルに……)


「じゃあ1を宣言する」


「さっきからリガル殿下は同じ行動しかしてませんね。」


 リガルが数字を宣言すると、それを見たクリストスがそれを指摘する。


「そういえば……。お前、さては自分で提案したゲームなのに、どう立ち回ればいいのか分かってないな?」


 それを聞いて、アルディア―ドが的外れな煽りを入れる。


「え、あ、やべっ……」


 ちょうど都合がいいので、焦ったような素振りを見せる。


 こんな演技が、果たして3人に通用するのかは分からないが、とりあえずやってみて損はないだろう。


 しかし、それに対する他3人の反応は無かった


 騙せたか騙せていないかは分からない。


 そのままゲームは進む。


「宣言2」


「宣言3」


「宣言4」


 誰も引かない。


 強気に宣言をしてくる。


 だが、薔薇だと断定は出来ないだろう。


 特に、さっきのカインの髑髏伏せを見た現在では。


 まぁ、それが無くともリガルは宣言をするつもりはない。


「パス」


「リガル殿下、意外に臆病ですね。私は攻めますよ。宣言、7!」


 しかし、次の瞬間、クリストスの言葉に、全員に電撃が走る。


 別に、リガルのことを「臆病」だと煽ったことにではない。


 いや、それも冷静に考えると大問題なのだが、リガルはその程度の事で腹を立てたりはしない。


 この場の誰も口を閉ざしておけば、何事もなく済むことだ。


 そんなことよりも、驚いたのは、クリストスがいきなり5,6の宣言を飛ばして、7を宣言したことだ。


 確かに、もしもここでクリストスが5を宣言して、カインかアルディア―ドが7を宣言したら、もうクリストスまでターンが回ってこなくなってしまう。


 だからこそ、ここで最大数の7を宣言したのだろう。


(本当に勝負を決めに行くって感じか。俺の伏せカードは薔薇だし、全員強気に宣言してるし、もしかしたら上がっちゃうか……?)


 クリストスの強行に、肝を冷やすリガル。


 いや、それはリガルだけではない。


 全員が、勝負が決してしまうかもしれないこの危機に、固唾を呑む。


 クリストスは、自分のカード、リガルのカードと、どんどんめくっていく。


 ここまでは当然すべてが薔薇。


 しかし、問題はここから。


 カインのカードに手を掛けるクリストス。


 だが、さっき騙されたので、警戒している。


 とはいえ、ビビっていてももう引き返すことは出来ない。


 覚悟を決めて、カードを開く。


 が……。


「またかよ……!」


 結果は髑髏。


 またしても、クリストスの勝利はカインに阻まれる、クリストスはがっくりと項垂れた。


「残念だったね。もちろん、こういう時こそクリストス君は、強気に攻めてくると思ってたよ。これも俺の予想通りだね」


「くぅぅ……」


 得意げになるカインに、クリストスは顔を歪めて呻く。


 完全に手のひらの上で遊ばれてしまっている。


 その後、カードを失う時も、クリストスは先ほどの1枚突き出し作戦を使ってみたが、今度はカインも取り合わず、目をつぶって適当に選んだ。


 これで、クリストスは1人だけ1ポイントを入手しているものの、手札を2枚も失い、チャンスとピンチが隣に転がっているような状況に陥った。


 ここからは、先ほどのような強行は出来ないだろう。


(よしよし、いい感じに場が温まってきたな。そろそろ行くか?)


 リガルはそろそろ髑髏を伏せようかと悩むが……。


(いや、まだだな。1ポイントを獲得しているクリストスに、大きな楔が撃ち込まれた。今回で勝敗が決することはあり得ない)


 そう読んだリガルは、またも薔薇を伏せる。


 結局、この回リガルは、これまでと同じように、ターンが回ってきて、1が宣言できるのならば宣言をし、できなければパスをするという行動を行った。


 さらに、その次の回も堪えて同じように。


 結果、カインとアルディア―ドが1ポイントずつを獲得し、リガル以外の3人は全員リーチが掛かった。


 一見すると、リガルは大ピンチである。


 しかし、それでもリガルには余裕があった。


 何故ならば、リガルの当初の作戦である、「相手を油断させること」が達成されたと思われるプレイングを相手が直近2回で取ってきたからだ。


(よし、もうそろそろいいだろ。俺も動き始めるか)


 そう考えたリガルは、ついに初めて髑髏のカードを伏せる。


 ポイント的には、大きく水をあけられているので、ここらで敵を蹴落としていきたいところだろう。


 そして今回、最初のターンであるリガルは……。


「宣言1」


 早速数字の宣言をする。


 しかも、1の宣言だ。


 周囲からは、また薔薇のカードを伏せて1を宣言したように見えるはず。


 それを見た次のクリストスは……。


「じゃあ、2を宣言させてもらおうか」


 ここ直近2回で数字の宣言をしていなかったクリストスがここにきて数字を宣言する。


 というのも、別に不思議なことではない。


 クリストスは、手札を2枚も失い、大ピンチである。


 大胆な行動には出られない。


 さらに直近2戦は、カインやアルディアードの手番でスタートした上に、カードを追加で伏せたりもしなかった。


 そのため、クリストスにターンが回ってきたときには、すでに大きな数字しか宣言できなかったのだ。


 ピンチのクリストスは、大きな数字を宣言するのを嫌い、パスを選んだというわけだ。


 しかし、ここで2を宣言する機会が訪れる。


 しかも、リガルはいつも薔薇を伏せていて、非常に安全そうだ。


 とはいえ、2程度の宣言じゃ誰もパスはしない。


 ここがチャンスだと思っているのは誰しも同じなのだ。


「クリストス君を上がらせるわけには行かないので、3を宣言させてもらおうかな」


 カインがクリストスを阻む。


「うーん、俺はパスかなぁ」


「俺もパス」


「……パス」


 しかし、カインは今まで髑髏を一番多く伏せていて、非常に怪しい人物。


 アルディアードは、カインを疑いパスを選択。


 さらに、髑髏を実は伏せているリガルも当然パス。


 大きな数字を宣言したくないクリストスも、悔しそうにパス。


 それを見たカインは……。


「ふふ、これは貰ったね」


 完全に勝利を確信した様子で、自分のカードをめくる。


 それを見て、全員が敗北を確信した。


 ただ一人、リガルを除いては。


 続いて、カインが手をかけたのは、リガルのカード。


 これまで一度も髑髏を伏せていないリガルは、一番安全そうだ。


 しかし……。


「嘘……⁉」


 書いてあったのはバツの文字。


 つまり、髑髏。


 驚いたのは、騙されたカインだけではない。


 全員が、これまで髑髏を伏せていなかったらリガルが、今回髑髏を伏せたことに驚愕した。


 そして、一気にリガルの策略を理解する。


 カインがペナルティの手札1枚を支払い、ゲームは進む。


(ここは、また薔薇でいいだろう。相手が俺の髑髏を警戒して、大きな数字を宣言できないところを、俺が小さな数字で勝ち取る)


 次はクリストスのターン。


「1を宣言する」


 手札が少ないクリストスは、カードを追加で伏せることなく、早速数字を宣言する。


 それに、出来るだけ小さい数字を宣言できるときに宣言しておきたいというのもあるだろう。


「うーん、パス」


「俺もパス」


 しかし、ここにきて、リーチがかかっているカインとアルディアードがパスをする。


 もしかしたら、リガルを警戒して、一旦髑髏を伏せることでお茶を濁そうとしているのかもしれない。


 だが、もしもここでリガルが数字を宣言せずに、クリストスが薔薇を伏せていたら、クリストスが上がってしまう。


 ゲームの勝敗を他人の選択に委ねてしまう、危険な選択だ。


 だが、リガルとてそれくらいは理解しているはずだ。


 リガルがクリストスの上りを阻止するために、絶対に宣言をするだろうという、


分の良い賭けを2人はしたのだ。


 さらに、ここでリガルが髑髏を伏せていれば、リガルの手札を1枚削ることができる。


 一石二鳥だ。


 案の定……。


「仕方ない。俺は2を宣言する」


 リガルはクリストスを妨害するために2を宣言する。


 対して、もうこれ以上のリスクを冒せないクリストスは……。


「……くっ。パスする」


 パスを宣言。


「じゃあ、めくらせてもらおう」


 そういって、リガルは初めてカードをめくっていく。


 リガル自身が伏せたカードは、薔薇。


 そして、次に手を掛けたのはもちろんクリストス。


 結果は薔薇。


「よっしゃ! 1ポイント獲得だな」


 こうして、リガルは作戦通り、小さな数字の宣言でリスクを抑えつつ、ポイントを獲得することに成功する。


 これで、全員が一線横並びになった。


「あれ? もしかしてクリストス、お前まさか髑髏飛んでるんじゃないのか?」


「そんな訳ないでしょう。攻めるために薔薇を毎回伏せているだけですよ」


「ふーん」


 クリストスが全く髑髏を伏せてこないのを見て、それを尋ねるリガルだったが、流石にこれには引っかかってくれない。


 無表情のまま躱される。


 真偽は不明のままだった。


(まぁいい。もうここまで来れば、勝ちは目前だ)


 まだ3人は、リガルが髑髏を伏せるのか薔薇を伏せるのか、疑心暗鬼になっている。


 この状況を利用して、ガンガン攻めていくのみだ。


 よってリガルが伏せたのは、薔薇だ。


 最初のターンプレイヤーは、カイン。


「カードの枚数が少なすぎると、宣言の幅が減って、さっきみたいな事が起こるから、久しぶりにカードを追加でセットしてみようかな」


 カインは、さっきの反省を生かして、カードを追加でセットする。


「じゃあ俺も」


「俺も」


 アルディア―ドとリガルもそれに便乗して追加する。


 何気に、リガルがカードを追加でセットしたのはこれが初めてだ。


 ちなみに、リガルは勝負を決めたいので、薔薇をセットした。


 だが、クリストスは1人だけ手札が少ないので……。


「俺はセットせずに、1を宣言するよ」


 やはりカードはセットしない。


 だが、これも賢明な判断だと言える。


 仮に残った手札の2枚を全てセットしたら、4以上の数字を宣言され、自分とクリストスの手札をめくることで、クリストスの手札は全て看破されていただろう。


 そこでもしも、髑髏が全て飛んでいることがバレたら、大幅に不利だ。


「2」


「3」


 その後は、カインとアルディア―ドが1ずつ数字を吊り上げていく。


 それを見てリガルは……。


「5」


 一気に4を飛ばして、5を宣言する。


 もう全員リーチが掛かっている。


 そろそろ勝負を決めようと思うプレイヤーが多いだろうから、髑髏が伏せられている可能性は低いという、リガルの読みである。


「……パス」


 手札を失えないクリストスはパス。


 続くカインとアルディア―ドも……。


「パス」


「俺も怖いけどパスかなぁ」


 攻めない。


 結局、リガルにチャンスが回ってくる。


 リガルはまず、自分の伏せカードをめくる。


 もちろん、2枚とも薔薇。


 次に選んだのは、クリストスの伏せカード。


 ここも……。


「よしっ」


 薔薇。


 成功する。


 問題はここから。


 カインとアルディア―ドの伏せカードは共に2枚。


 どちらか片方の伏せカードを全てめくり、そのどちらもが薔薇であれば、リガルは勝てる。


 どちらも髑髏を伏せていそうな気がする、怪しい人物だが、リガルはもうすでにどちらを選ぶか決めていた。


「俺はカインのカードをめくる」


 結果は……。


「よっしゃぁぁぁ!」


 2枚とも薔薇。


「うわ、マジかぁ……。大逆転負けじゃん!」


「俺なんて最初にリーチ掛けたのになぁ」


「最後カインじゃなくて俺の方めくってくれれば髑髏だったのに」


 勝負は、リガルの勝利にて決した。


 皆、口々に悔しそうに呟く。


 最後、アルディア―ドは髑髏を伏せていたようだ。


「やっぱりか」


 だが、リガルはそれを読んでいた。


「やっぱり? 読まれてたのか」


「あぁ。カインが最後にパスを選択したのは、ここで負ければ手札が2枚になり、クリストスと同じになる。クリストスが手札2枚に苦しめられているのは、全員分かっているから、それを危惧してカインはリスクを回避した。そうだろ?」


「うん、まぁそうですね」


 リガルの推察に、頷くカイン。


「だが、アルディア―ドがあそこでパスをするのは不可解だ。アルディア―ドはリーチをかけていて、それでいて手札を1枚も失っていない。勝負してもいいはず。なのにパスをしたのは、自分が髑髏を伏せているからだろ?」


「うっ……。リガルには俺の行動がお見通しだったって訳かー。クソ―。我ながら上手く立ち回ったと思ったんだけど……」


「けどこれ、面白いですね。時間もあることですし、もう一戦やりましょうよ。今度こそ勝ちます」


「いいね! 俺も次は作戦を考えていきますよ」


「よーし、やろう!」


 こうして、リガルたち4人は、退屈な祝勝会を乗り切った。

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