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プロローグ
「はぁ…」
ヨレヨレのスーツを着て、深夜にコンビニで盛大にため息を吐く冴えない男とは、俺のことだ。
今日も仕事で遅くなり、終電でようやく地元に戻ってた所だった。
夕飯を買うために駅前のコンビニに入り、毎日つい見てしまうラックにある観光雑誌をチラ見してそのまま通り過ぎ、店舗奥にあるビールを一本手に取り、ぐるりと回るように、たいして唆られない余り物のような弁当を掴み、レジへと向かう。
毎日のルーティーンである。
(旅行行きてぇなぁ…)
レジに並びながらため息とともにそんな事を考え、ぼーっとしていたところに、突然の大音量の衝撃音と、痛み、怒鳴り叫ぶ人の声、そして…暗転。
「おい!コンビニに車が突っ込んだぞ!」
「大丈夫か!?救急車すぐ来るから!」
「助け…て…足が…い…痛い…」
終電直後の駅前のコンビニは深夜にもかかわらず人は多く、喧騒に包まれていた。