となりの席の君
隣の芝生は青い。じゃあ自分のは?
となりの席の君が、ゲームをしていた。それはリズムゲームで、すごく難しい譜面の曲をしていた。
僕も、君と同じゲームをやっていたけど、君ほど、完璧に上手にできるわけじゃない。うらやましいな。
となりの席の君が、数学のテストで、100点を取ったらしい。君いわく、そんなに勉強していなかったらしいけど、テストはどの問題も完璧だった。
僕も、君と同じテストを受けたけど、君ほど、完璧にうまく解けたわけじゃない。うらやましいな。
となりの席の君が、音楽を作っているらしい。普段からいろんな曲の耳コピをして遊んでいるらしい。オリジナルの曲も作っているらしい。前に、一度だけその曲を聞かせてもらったことがある。
…きれい。すごくきれいだった。
僕も、君と同じように曲を作ったことがあるけど、君ほど、完璧に上手に作れたわけじゃない。……うらやましいな。
となりの席の君が、小説を書いているらしい。……彼は、すごく長編の小説を書いていて、ネットに上げている小説はそこそこ人気らしい。前に、題名を教えてもらって、読ませてもらったことがある。
……とても壮大で。迫力があって。世界の中へ引き込まれて。……読む人を夢中にさせるような魅力があふれ出てきてて。
僕も、君と同じように小説を書いているけれど、君ほど完璧にかけたわけじゃない。……ズタボロで、いびつな文章で、構築もめっためたで。作品に引き込まれることもなくて。魅力すらなくて。文章が汚い。もっとしっかりかけ。こんなもの見せるな。ネットに来るならもっと磨いてからこい。一人でやれ。出直してこい。小説書くな。
…………うらやましいな。
僕には、何ができたんだろう。僕は、何をすればよかったんだろう。考えれば考えるほど、ただ頭が痛くなるだけ。何をやっても、だめ、ダメ、駄目、むだ、ムダ、無駄。
君のようになれたら、どれほどよかったんだろう。君のようになれていたら、どれだけの人を喜ばせられたんだろう。
「君のように、なれたら、なぁ……」
僕は、そっと息を止めた。