第9話 親友の恋
もう3月。
ここでの生活も残り1ヶ月。
雪がたくさん降る日も減ってきた。
お店では新しくバイトの2人が入ってきたおかげで休みをとることができ、わたしは昼間にゲレンデに行ける日が増えた。
「今日も滑るの??」
「うん。」
希の問いに即答するわたし。
「優奈・・・。わたしね、・・・。」
「ん??」
「やっぱりいいや。」
「なに??」
「後で話す。」
希の顔が一瞬曇ったのをわたしは見逃さなかった。
「後でいいの?」
「うん。」
話の内容もわからなかったけどきっと何かに悩んでるんだと思う。
鈍感なわたしでもその位はわかる。
気になりつつも滑りに行くことにした。
お店のドアを開けると板を持って歩く修さんを発見。
「修さん!!おはよ。」
「優奈じゃん。滑るの?」
「うん。修さんも?」
「うん。一緒に行く??」
「行く!!教えてください。」
「いいよ。」
やった。
修さん教えるのも上手だし、1人よりは2人のほうが楽しいもんね。
最近の修さんは初めて会った時より優しくて、わたしのことすごくわかってくれるんだ。
ヒロさんのこともだれよりも最初に気が付いてて・・・。
助けてくれた。
リフトに乗ってる時に修さんが突然話し始めた、涼の話し。
「涼、最近様子おかしくないか?」
「涼くん?」
「何か違うんだよな。俺の思い過ごしならいいんだけど。」
「修さんはみんなのことよく見てるからね。少しの変化でも気が付いちゃうのかもね。」
「そんなことないよ。」
希が話したかったことって・・・
涼のことだったのかな。
気になり始めたわたしは修さんに訳を話し、先に店に戻った。
急いで希のいるお店へむかうとレジ横で机にうつむく希。
「おつかれ。」
何気ない感じで声をかけるが様子がおかしいのはすぐに気が付いた。
「希?」
希の目にはたくさんの涙。
顔をくしゃくしゃにして泣いている。
「どうしたの?」
泣きながら話す希の話をうなずきながら静かに聞く。
やっぱり原因は涼だった。
1週間程前から電話をしてもメールをしても返事が無く、会いに行ってみたが何も話してくれなかったらしい。
わたしなんで気が付かなかったんだろう。
自分のことしか考えてなかったのかもしれない。
ごめん。希。
「わたしが涼くんに聞いてみる!!」
「いいの。わたし、自分で聞いてみるから・・・大丈夫。」
「そう?だったら、また何かあったらすぐに話すんだよ。」
「ありがとう。」
希がそう言うならわたしから涼には何も言わない。
希は一人で居たいらしく、わたしは素直に部屋へ戻る。
希は強いな。
わたしだったら・・・
人を頼っちゃうだろう。
部屋に戻ったわたしは2人が会える環境を作ったらどうだろうと考えた。
早速修さんに連絡して協力してもらった。
考えとは・・・。
真冬の花火大会!!
ってことで花火を購入!!ってよく売ってたよね。
その日の夜わたしは涼とヒロさん連さんと希を呼び出した。
しかし、ヒロさんは遅刻。
修さんは仕事中にも関らず一緒になって店の外で花火に火をつける。
涼はいつもと変わらない様子だけど希と話す気配はない。
2人を気にしつつもここにいないヒロさんのことも気になる。
花火も残り、線香花火だけになったときだった。
「間に合った?」
ヒロさんが走って向かってきた。
一気に笑顔になる自分。
どんだけわかりやすいんだ、わたし。
「遅い!!なにしてたんだよ。」
連さんがヒロさんに近づき肩を組む。
その姿をみて連さんがうらやましいと思った。
ホントに仲がいい2人。
連さんになりたい。
そう思うのもおかしくないよね。
「もうこれしか残ってないの?」
「ヒロが遅いんだよ!!」
ヒロさんが線香花火に火を付ける。
すかさず横に行き残りの線香花火をみんなに渡すとヒロさんの消えそうな火にわたしの線香花火をくっ付けた。
「あっ。俺の消した。」
「違うよ〜。火、貰おうと思ったの。」
ヒロさんはわたしの線香花火を貸してと、消えないよう移動する。
ヒロさんの花火を見つめる顔が真剣で見とれてしまう。吸い込まれそうな目・・・。
ふと思い出したポケットの中のカメラ。
パシャっと撮った後ヒロさんが頭をなでた。
「やっぱり優奈は笑ってたほうがかわいいよ。」
一瞬自分の中で時間が止まった気がした。
「みんなで撮ろうぜ!」
連さんの言葉にハっとする。
通行人を呼びとめみんなをまとめる連さん。
散らばってたみんなが一気にまとまる。
最高の記念写真。
その時わたしは思い出した。
なんてバカなんだろう。
ヒロさんに会えて舞い上がっていたけど、今日は涼と希の為だったはず。
自分のことだけど本当に呆れちゃう。
花火の後片付けをした後、ビリヤードをしようとみんなを呼び止めた。
なのに・・・
希は疲れたからと1人先に部屋に戻る。
何かわかるかもしれないとわたしは涼を観察する。
でもいつもと変わらないんだよね。
何の変化もない。
いつもの涼。
どうしたんだろう。
どうしたらいいんだろう。