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冬の匂い  作者: 桃アゲハ
6/21

第6話 幸せな時間

仕事後にこたつに入り丸くなっていると携帯が鳴った。 


メールだ。 



『ヒロ来てるよ。』



修さんからの短いメールだった。 


『ヒロ』の文字にチクっと胸が痛む。 

修さんがなんでこんなメールしてきたんだろ。 



携帯を握り締めたまま考えていると二通目のメールが。 


『今ヒロと俺しかいないから降りて来なよ。』



・・・。 


修さんのメールの意味がわからなかったけどとりあえず下に降りていくことにした。 



ヒロさんと普通に話したい。 

きちんとあやまろう。。。



気合いを入れて階段を降りていくとトイレから出てきたヒロさんが見えた。


あーーーー。 

やっぱり無理。 


階段を戻ろうと後ろを向くわたしの腕をヒロさんが掴んだ。力強くて痛い。 



「なに避けてんの?」



・・・。 



「避けてるのはヒロさんでしょ!!」



おもいきって言ってしまった。 



腕を捕まれたまま通路のソファーに座らせられる。 


「おまえだって俺を避けてただろ?それにあの日・・・」 


言い掛けて途中でやめるヒロさん。 


「ヒロさんわたしを嫌いなんでしょ?もういいよ。」 


「もういいとかじゃなくない?それに嫌いじゃない。」


・・・。 


「俺もあの時は言いすぎた。。。」


ヒロさんは思っていたことを全部話してくれた。 


確かにヒロさんの言ってることは間違ってない。 


わたしが子供過ぎた。 


バカみたい。 

冷静なヒロさんに対して感情だけで話してしまうわたしは本当に子供だ。



最後には笑顔で話してくれたヒロさんを見てすごくうれしくなった。

またヒロさんと普通に話せるんだ。

よかった。










「希。わたしヒロさんが気になる。」



「ん?」



ビックリする希。



「ヒロさん?」



希の反応にビックリするわたし。



「なんで?」



「だって優奈は涼くんを好きかと思ってた。」


涼を??


・・・・。わたしが好きって思ってて涼を好きって宣言したってこと?

希。



「ゴメン優奈。わたし優奈が涼くん好きかと思って先に言っちゃえば優奈は諦めてくれるだろうって思ってた。最低だよね。」



「希・・・。」



そうだったんだ。

でも希が涼を好きだと言わなくてもわたしはヒロさんを気になってたんだと思う。



「最低なんかじゃないよ。涼くんも確かに好きだよ。友達としてね。」



「優奈・・・。」



「ごめんね。わたし優奈が涼くんと仲良くてうらやましかったんだ。」



「わたしもごめん。はっきりしないわたしの態度がいけないんだよね。」



お互い謝ってばっかり。

二人で顔を見合わせて笑った。


親友なんだから。

こんなことで壊れたくない。






「ここでの生活もあと少しなんだから楽しまないとね。ヒロさんと優奈がうまくいくように見守ってるから。」



ありがとう、希。



「ところで希はどうなってるの??」



「わたしはバレンタインデーに告白するつもり。」



バレンタインデー?

いろいろあって忘れてたけどもうすぐだね。


バレンタインデーか。

わたしはどうしよう。


まだ日にちもあるし考えてみよう。

 




雪が激しく降る平日。

修さんが休みで実家に帰ってしまいわたしが昼から夜12時までのコンビニを任された。

こんな日に限って誰も来ない。


希も疲れたらしく9時頃上に上がっていった。


1人ですごす夜のコンビニ。


お客さんはたまーに来る酔っ払いとかトイレ借りに寄っていく親子。


いつもはビリヤードしながら修さんを見てるだけだったけど夜って結構大変。

みんなは遊んでる時間だもんね。




酔っ払った若い男の人4人が騒ぎながらお店の中に入ってきた。



こういうお客さんには絡まれないように気をつけよう・・・。



レジ前に商品を持って来たお客さんのうち1人が声をかけてきた。



「ねぇ、ここで働いてるの??」


・・・。

どうしよう。


「聞いてるんだけど。」


ちょっとムッとしながらも答える。


「そうですけど・・・。」


働いてるからここにいるんでしょ?!

いかにも不機嫌そうなわたしを無視してその人は話続ける。


「俺ら2泊で来たんだけどここ最高だね〜。仕事終わったら遊びいかねぇ?」


はぁ?

何言ってるのこの人。

・・・・。


「ごめんなさい。仕事終わるの遅いし。」



「待ってるよ。女いねーとつまんなくて。」



そういいながらだんだん近づいてくる。

怖い。

どうしよう。



何度断っても帰ってくれなくて半泣き状態。




エリカさんに助けてもらおうと電話をかけようとした時だった。




「おつかれー。」



ドアが勢いよく開くとヒロさんがボードを持って入ってきた。



「今日もさみーな。ちょっとすみません。」


そう言って男達の間を割って入ってレジの中のわたしの横のヒーターにあたる。

ボードの帰りなのかウエアから香る雪の匂い。


「ちぇっ・・。」


男達はボソっと呟き帰っていった。


「何?ナンパされてたの??」


ニヤニヤ笑いながらヒロさんが言う。


この人は助けに来たのかからかいに来たのかわかんない。。。

もぉ。


「邪魔しちゃった??ごめん!!」


たまたま来ただけなのかな・・・。


「ナンパじゃないし、邪魔でもないよぉ。」


「ふーん。アイス食べたい。」


意味わかんない。

ヒロさんって・・・。



アイスおごれってことはわかったけどね。


「これでいい??」


まぁ助けてもらったしね。

アイスぐらいいいでしょう。


そういえばヒロさんはビリヤードしながらアイスを食べてることが多いかも。

わたしはヒロさんがいつも食べてるカップのアイスを渡す。


「スプーンちょうだい。」


「はぃ。」


そう言ってストローを渡す。



「そうそう、これでこうやって・・・。って、おい!!これ違くね?」


ゴメンって言いながら割り箸を渡す。


「これはこーやって食べるとうまいんだよ〜・・・・。って違うだろ!!」


わたしは1人で大笑い。


こんなことやってる時間がすごく幸せで、笑顔が止まらない。



いつもはしっかりした感じのヒロさんだけど、こんなおちゃらけた一面も持っている。

初めて会った時には全然見せなかった表情をたくさん見せてくれる。



しばらくすると涼と疲れて部屋に戻っていた希が店に来た。 

二人きりの時間が終わっちゃった。 








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