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冬の匂い  作者: 桃アゲハ
4/21

第4話 揺れる気持ち

「優奈ちんボードやらないの??」



コンビニでバイト中のわたしの所に遊びに来た涼が聞いてきた。

ボードかぁ。

今までやりたいって思ったことくはあってもそんなに考えてなかったなぁ。



「やるとしたら涼くん教えてくれる??」



「もち〜。」



「じゃーやってみようかな。」



簡単に言ってしまった。






でもそれが始まりでわたしはスノーボードに出会いボードにはまってしまった。



涼に誘ってもらってすぐに希と一緒にボード一式を買い揃えた。

涼は約束通りに1番初めにわたし達に滑り方を教えてくれた。




それからというもの、わたしはバイトが終わったナイターを利用してエリカさんや涼に滑り方を教えてもらった。





凝り性と言うんだろうか・・・

はまっちゃうとダメなんだよね。


楽しくて仕方がない。


でもね。


希にはボードは合わなかったようでたまーに一緒に行ってくれるくらいなんだ。


ちょっと寂しいけど1人で練習することにも慣れてきた。




今日もナイターで1人練習して帰る時だった。



「優奈?」



背後から聞こえた声に足を止め振り返るわたし。



「あっぶね〜。」



・・・。


後ろにはヒロさんがいて、わたしが持っていた板があと少しのところでぶつかる所だった。



「ご、ごめんなさい。」



「当たってないし大丈夫。」



ヒロさんは何も言わずにわたしが持ってる板を持ってくれた。



「自分で持てるよ。」



「ちびっちゃいから板が重そう。」



そう言って歩きはじめる。



ゲレンデから寮まで歩いて10分もしない道。

でも雪道に履きなれないブーツでいつもより歩きにくい。



「ははっ。」



いきなり笑いだしたヒロさんにビックリしたわたし。



「なに??」



「いや。ちっちゃいな〜と思って。本当にガキみたい。」



「え??なにそれ〜。」



ガキって・・・

まぁ18歳なんてまだまだ子供かもしれないけど外見はもう大人と一緒でしょ??

ひどーい。



「いい意味かわいいってことだよ。」



そう言ってくすっと笑うヒロさんにわたしは眉間にシワを寄せる。


いい意味でかわいい?!

それってうれしくない!!



「ボード頑張ってるなー。今度俺が教えてやるよ。」



「ホントに??」



「おう!!」



シワを寄せていたわたしの顔が一気に変わる。

なぜかすごくうれしかった。




そういえばヒロさんと2人で会うって今までなかったなぁ。

もう少しこのまま歩いていたいような気もする。



だけどすぐ目の前はわたしの寮。



「店寄ると遅くなるから今日はここで。またな。」



片手を挙げて帰って行くヒロさん。



「ありがとう。」



後姿を見送りお店の中に入ると希と涼と修さんでダーツをして遊んでいた。



「優奈ちんお帰り。」



「優奈おかえり〜。」



「おつかれ。」



おつかれって・・・修さん今バイト中でしょ。

遊んでていいんですか??

と言えるわけもなく、



「おつかれさまですー。」



みんな元気だね〜。

最近ゆっくりしてないからか疲れたのか少しだるい。



「着替えてくるね。」



板を持ち上げ寮に向かう。

重い板がいつもよりさらに重く感じる。



疲れかな。

今日は早く寝よ〜っと。



部屋に戻りスエットに着替えるとコタツで暖まる。と同時にテーブルに顔を落とした。













ん・・・・。


眩しい。



時計を見ると午前11時。



え???


一瞬目を疑ったが、どう見ても午前11時。


遅刻。


そう思った瞬間頭がズキッと痛む。


イッターい。




とにかくエリカさんに謝らないと。


わたしは適当に着替え寮の階段を降りると廊下を掃除しているエリカさんがいた。



「ちょっと優奈、何してるの??」



「あっ。ごめんなさい。」



エリカさんが近寄ってくる。

あー、怒られる。

ビクビクしているとエリカさんの手がおでこに触れた。



「まだ熱下がってないじゃん。バカ。早く戻って寝なさい!!」



熱??



「ほら、早く部屋戻って。」



背中を押され階段を登らされる。



「今日はバイトはいいから寝てなさい。希が心配してたよ。」



希が??

部屋に戻るとテーブルの上に体温計が置いてあった。

計ってみると38・7℃


・・・。


数字を見たとたん余計に頭が痛くなった。




わたしは携帯から希にメールをした。



『ごめん。布団に寝かせてくれたの希でしょ??ありがとう。』



すぐにメールが返ってきた。



『謝らないでよ。それより大丈夫??』



『今日休めば治ると思う』



『ゆっくり寝ててね。』



『うん。ありがとう。』




それ以上メールは来なかった。



眠くもないのに熱のせいで自然と目が伏せる。



どの位寝たのだろう・・・





トントン。



ドアをノックする音で目がさめた。





「優奈ちん。」





声と同時にドアが開く。




「涼くん。」




ビックリして飛び起きる。



「寝てないとダメでしょ?エリカさんに頼まれて薬と冷えピタ買ってきたんだ。」



薬を取り出しペットボトルの水を差し出す涼。

部屋の中を見られた事とボサボサ頭の自分の姿が恥ずかしく顔が真っ赤になる。

でも涼にはそんなことおかまいなしだ。




「これ飲んでゆっくり寝てれば明日には元気になるよ。」



涼の長い指がわたしの手にぶつかった。

冷たい手。

今日も外は大粒の雪が降っている。



「ごめんね。寒いのに。」



「困った時はお互い様でしょ。」



そう言ってニコっと微笑む涼。



「冷えピタよりこっちのほうが良くない??」



涼の伸ばした手がわたしのおでこを包む。

ひんやりしていて熱が逃げて行く気がする。



「まだ熱あるね。今日はゆっくりすること!!何かあったら俺に電話でもメールでもして。」



そう言って携帯番号とメールアドレスの書いてある紙をテーブルの上に置いて部屋を出て行った涼。



「ありがとう。」



聞こえないかもしれないけど大きな声で言った。


自分が弱ってる時って優しくされるとすごくうれしいよね。

そう、そのせいなのか涼が帰るのが寂しく感じる。


行かないでって言いたかった・・・。


でも言えない。







夕方お粥を作って持ってきた希が突っ込んだ話をしてきた。



「優奈さぁ。涼とどうなの??」



???


んん??



「どうって・・・???」



「だから、優奈は涼のことどう思ってるの??」



「涼くん・・・。」



いきなりそんなこと聞かれても・・・。

どう思ってるんだろう・・・わたし。



「優奈が好きじゃないんだったら、わたし・・・好きになってもいいかな??」



・・・・。



希の言葉に驚きを隠せないわたし。

でもわたしが涼を好きって気持ちが無いんだったら何も言えない。

その前に希が誰を好きになろうがわたしが止める権利はない。




「希、涼くんを好きなの?」



「優奈の彼氏見つけるとか言ってわたしが好きになっちゃうなんて、ごめんね。」



「そうなんだ。がんばって。」



「ありがとう。」




涼はみんなに優しい。

わたしも正直、惹かれてるところがあった。

希が好きならわたしはこれ以上の感情は持たない。

そう思った。









希が部屋を出て行った後、布団の中で目を閉じるわたしの頭の中に涼の姿が現れる。



「涼・・・。」



この胸のもやもやが何なのかわからないけど、涼は友達。

そう心の中に言い聞かせた。




携帯の時計が夜中の12時を回ったことを知らせる。




熱も微熱まで下がり、昼間たくさん寝たおかげで眠くない。

と言うか・・・眠れない。




本当は夜中に1人で起きてるのが嫌なんだけど、今、下に降りて行ったら確実に怒られる。


でも希は夢の中だし。

一人で真っ暗な部屋の中に居ることに耐えられず下に降りる事にした。





下に降りて行くと階段下の通路のソファーに人影が見えた。



「ガキっ子じゃん。」



薄暗くて顔は見えないけどわたしを『ガキ』って言うのはヒロさんだけ。

おまけにガキに子がついてるのはスルーしておこう。



ボサボサの頭にスエット姿なんて今更ながら恥ずかしいと思ったが、今は一人でいたくない気分だったのでヒロさんに近づいて行く。



「熱出したんだって??涼から聞いたよ。」



「う・・・うん。」



ヒロさんは隣に座りなってソファーを指差す。



「もう大丈夫なの??」



そういっておでこに手をかざすヒロさん。

ヒロさんの手・・・・。

昼間の涼の手と違って暖かい。



「まだ熱あんじゃないの??」



・・・・。



「どうした??」



・・・・。



ヒロさんの言葉にふと我に返る。



「眠れない。。。」



言葉と同時に目いっぱいに溜まる涙が自分でもわかる。

涙の理由・・・。

自分でもよくわからない。



「ホームシックか??」



冗談言いながらわたしの頭を腕で優しく包むヒロさん。



「泣きたい時は泣いていいんじゃない??」



その言葉に我慢していた涙が溢れ出た。





どのくらい泣いたんだろう。

何も聞かず、何も言わず、ずっと隣に居てくれたヒロさん。



目が腫れてるんだろうなと思いつつヒロさんの腕から頭を起こす。




顔を上げた瞬間ヒロさんの顔が。

唇が重なった。



え?



ヒロさん??



「妹みたい。」



ん???


妹みたいって・・・。


あなたは妹にキスするの??




今、微かに触れた唇が震えてる。




「何するの?!」



思わず立ち上がるわたし。



「ごめん。」



ごめんと言ったその顔が心から謝っているように見えそれ以上は何も言えなかった。




ナイスタイミングと言うのだろうか。

お店から涼が走って来た。



「あれ?優奈ちん大丈夫なの??」



「う・・・うん。薬、ありがとう。」



「ヒロくん、蓮くんが呼んでるよ。」



「おお。」



ヒロさんはわたしに何も言わずにお店に向かった。



「熱は?」



「下がってきたよ。ありがとっ。」



「よかった〜。」



「うん。」



無理やりの笑顔を作る。

わたし上手に笑えてるかな??



「何があったか知らないけど・・・俺でよかったら相談に乗るよ!!元気だして!!」



そういって涼もお店に戻っていった。

きっと真っ赤な目を見て言ってくれたんだと思う。

ありがとう、涼。








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