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冬の匂い  作者: 桃アゲハ
18/21

第18話 あの頃に戻って

『あのさー、来週のことだけど。』



連さんからの電話。

先週、電話をもらった時は修さんのことでそれどころじゃなくて。

忘れてた。

と言ったら怒られるだろう・・・。



「バーベキューだったよね。」



『そう、バーベキュー、みんなでキャビン借りて泊まることにしたんだけど優奈たちも泊まれる?』



「誰が来るの?」



『涼と修とエリちゃん家族と俺の奥さんと子供、あとヒロも来るよ。』



「希に話してみるね。また連絡しまーす。」



みんな大集合なんだね。



希に聞いてみるともちろん参加ってことで連さんに返事をした。



みんなで1泊できるなんて、楽しみで仕方がない。

考えるだけでワクワクして夜も眠れない。

まるで小学生の遠足前の様な感じ。








バーベキュー当日。


連さん、ヒロさんの地元近くの大きな公園の一角にあるキャビンに到着したわたしたち。

久しぶりに会ったエリカさんたちは、やっと歩けるようになったと言う1歳の男の子を連れてきた。

その子がかわいくて、エリカさんたちがおしゃべりで夢中の間ずっと遊んでた。


連さんも初めて奥さんと子供を連れてきて紹介してくれた。

同じく1歳で女の子。



幸せそうな二家族を見て微笑ましく思った。



「修、仕事でトラブルがあったらしくて今日難しいみたい。行けたら夕方にでも行くって言ってたけど、どうだろう。」



連さんへ入った修さんからの連絡にみんなガッカリ。



「来られるといいね。」



一人でも欠けると違うんだよね。

みんな揃っての仲間。

1人1人の存在が大きくて、1人1人の居場所がある。

素敵な場所。

そこにいられるわたしってすごく幸せ。




少し休憩をとった後、食材の買出し班とバーベキュー準備班に別れ活動開始。


わたしと希、涼とヒロさんは買出し班。

ヒロさんの車に乗り込み、近くのスーパーへと向かった。



「あ、これいいね〜。」



適当にカゴに入れる涼の横でその商品を「必要ない!」と棚に戻す希。

その姿をみてわたしとヒロさんは大笑い。


二人の間には何も無かったかのような自然な空気。


涼と希がずっと付き合っていたらどうなってたんだろう。

そんな事を考えてしまうくらい仲のいい二人。



希たちを横に、ヒロさんの押すカートに買出し物の書かれた紙を見ながら品物を入れていくわたし。



「お肉どれがいいかな?」



「結構人数いるからな〜、これと、これと・・・」



「これは?」



「おう!いいじゃん。」



家族になってヒロさんとこうやって買い物ができたら・・・

なんて思ったりして。



「わたしたちお酒とかお菓子見てくるね。」



「え?」



「時間短縮〜。ヒロくん鍵借りていい?」



「はいよっ。優奈、行くぞっ。」



「う、うん。」



ヒロさんはカートを押して先に進んでく。

いきなり二人にされて戸惑うわたし。

いろいろあってからヒロさんと二人になる時間なんて無かったから・・・。



「優奈あと欲しい物ある?買出し班の特典だ、好きな物1つ買ってよーし!!」



戸惑うわたしを他所にヒロさんは至って普通。

やっぱり一方通行なのかな。

この恋。



「欲しい物ないの?」



欲しい物・・・ヒロさんが欲しい。

心の中で言って一人で笑っちゃった。



「じゃあねー、これ。」



「水風船?」



「うん。」



わたしはレジ脇にあった水風船を手に取った。

これって意味はなかったけど、きっと希と涼は喜ぶはず。



支払いが終わって袋に詰めていると希と涼がやってきた。



「それ持ってくよ。」



わたしの持ってる袋を涼が持ってくれた。

適当で、子供っぽいけど、優しくて、素直な涼。

昔と全然変わってない。



「いこっ。」



空いた手を希が引っ張る。



希と手を繋ぐのだって何年ぶりだろう・・・。

なんだか照れる。



「今日は最高の日になるよ。」



希の言葉に「そうだね。」と何の疑いも無しに微笑むわたし。





公園に戻ると用意が終わって子供たちと遊ぶ連さん達の姿が見える。



「希と優奈は先戻って遊んでな。」



「一緒に運ぶよ。」



「涼が運ぶから大丈夫!!」



「え〜俺?ヒロくんでしょ?」



「ま、とにかくいいから遊んできな。」



「だって、どうぞー。」



涼のどうぞーが引っかかるけど。

ヒロさんがそんなに言うならってわたしたちは子供たちがいる場所に走った。



「お帰り。あれ?ヒロたちは?」



「荷物全部運ぶから遊んでていいて。」



「へー、たまには気の聞くこと言うじゃん。」



と言ってるのはエリカさん。

えりかさんも変わってないなぁ。

外見はお母さんっぽく多少落ち着いたけど・・・

中身は全然変わってない。



「優奈はあれからどうなの?」



みんなが遊ぶ側でエリカさんと話を始めるわたし。

3年前のことから全てをエリカさんに話した。

今もヒロさんを思っていることも、全てを。



「優奈、お前はある意味すごい。」



「ある意味?」



「ヒロがそんなに好きなら押さなくちゃ!いつになったってヒロのこころ掴めないよ。」



「だって・・・。」



「だってじゃないよ!泣いても笑っても人生一度っきり。3年間忘れられなかったんでしょ?だったらガンガン行かなくちゃ!!」



「ガンガンって・・・。」



「優奈が幸せになりたいって思うなら自分から幸せ掴みに行かなくちゃ。」



優しく頭を叩くエリカさん。

エリカさんの一言一言はいつでも正しくて・・・わたしの背中を押してくれる。






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