第16話 3年ぶりの恋
最高の1日になったお花見。
止まっていた恋が動きだした。
「ヒロさんのことまだ好きなんでしょ?」
帰りのバスの中希が口を開く。
「うん。」
自然と笑みがこぼれる。
「今日の優奈、すごくいい顔してたもん。優奈を笑顔にしてくれるのはやっぱりヒロさんしかいないのかな。」
「え?」
「だって優奈彼氏がいても今日みたいな笑顔、見せたことなかったよ。」
「そうかな。」
「そうだって。」
自分では気が付かなかったことだけど希にはわかってたのかな。
「今日また会うことができたんだから、もう一回頑張ってみたら?」
「でも・・・ヒロさんに彼女がいたりしたら。」
正直怖い。
振られたらもう2度とヒロさんに会えなくなるようで。
だったらわたしが思ってるだけでもいいなって。
昔と変わらないかもしれないけど、結局気持ちを伝えないままヒロさんと一緒に居られた時間が一番幸せだったから。
「彼女はいないって言ってたよ。優奈が涼と買出し言ってる時にそんな話ししてた。」
「そ、そうなんだ・・・。」
「いないんだって。」
「うん。」
「いないってば!!」
「わかったよぉ。」
「どうするの?」
「え?」
「優奈はどうしたいの?」
「別に・・・。」
「そぉ。そんなこと言ってるとヒロさんまた彼女できて結婚して本当に優奈の届かない所にいっちゃうよ。」
「・・・。」
「わたしはね。優奈の今日の笑顔が好きなの。親友にはいつもその笑顔でいてほしいの。だから少しでも可能性があるんだったら頑張ってほしいの。」
希・・・。
自分よりもわたしのことをよく考えてくれる希。
何度も言うけど・・・本当にいい友達、親友です。
そんな親友が好きな笑顔を見せられるように、笑顔のままでいられるように・・・
わたし、もう一度。
最後にもう一度。
頑張ってみようと決めました。
「希、いつも背中押してくれてありがとう。わたし、頑張ってみる。」
「お礼言われる程でもないでしょ。」
そう言ってカバンの中から何かを取り出す希。
「それ・・・。」
「そう。あの時涼くんにもらった手紙。」
希もまだ涼のこと好きだった・・・のかな。
「わたしの恋は完璧―過去―になることができました。これですっきり。」
晴々した希の顔。
「もう後悔も何もない。今は涼くんを友達で見れるようになったんだ。この手紙、お守りなんの。わたしの大切なお守り。」
そう言った希はニコッと微笑んだ。
過去にできなかった恋だから、もう自分の気持ちに嘘はつかない。
素直なまま、ヒロさんにぶつかってみよう。
希を見てそう思った。
お花見をしてからたまにくるようになったヒロさんからのメール。
決して長い文章ではないがわたしには何よりうれしいメール。
昔とは違う。
素直なメール。
メールのチェックの回数が増えたと同じ職場の人に言われたくらい。
よく携帯を見てた。
この日も・・・。
『今日夕飯でも食べに行かない?』
修さんからのお誘いメールだった。
この3年間修さんとはよくご飯に行ったりビリヤードに行ってたのもあってあっさりOKのメールをした。
その夜、修さんとファミレスの中。
「優奈さぁ、ヒロくんのことまだ好きなの?」
口に含んだ水を思わず噴出してしまいそうだった。
修さんからこんな質問が出るとは思っていなかった。
「なんで??」
「いや、この前久しぶりに会ってどうなのかと思って。」
「修さんだから正直に言うね。」
修さんは誰にでもやさしくてみんなのことすごくわかってた。
昔から変わらない。
人の気持ちをすごくわかってあげられる人。
きっとわたしの気持ちも全部わかってると思う。
でも自分の口で言っておかないといけないよね。
「わたし、今でもヒロさんが好き。3年間ずっと忘れられなくて、バカみたいだけど、好きなんだよね。」
「バカじゃないよ。でも、また優奈が悲しむ恋だったら俺はして欲しくない。」
「・・・もう悲しまないよ。」
「わかんないじゃん。」
「大丈夫だよ〜。」
修さんの真剣な顔に違った空気を感じ雰囲気を変えようと笑いだすわたし。
「昔みたいに夜中メールしたってなぐさめてあげられないよ。」
わたしの気持ちがわかったのか修さんも笑顔になる。
夜中、寂しくなるといつも修さんがいてくれたんだよね。
『眠れないの?』っていつも優しく話し聞いてくれて。
「昔は下に行けば修さんがいたからね。」
「泣きべそかいてよく夜中起きてきたよね。」
「え〜、泣きべそはかいてないよぉ。」
いつの間にか戻った空気にホットする。
送ってもらい車を降りるときだった。
席を立とうとするわたしの腕を修さんが掴んだ。
「本当にヒロくんが好きなの?」
ビックリして腕を引っ込めてしまった。
「ヒロくんじゃなきゃダメなの?」
・・・。
修さん。
今まで見たことのない修さんの顔に戸惑うわたし。
「どうしたの修さん。」
「ごめん。 おやすみ。」
何も言えず「おやすみ。」っとドアを閉める。
一瞬だったけど張り詰めた空気が苦しいと感じた。