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冬の匂い  作者: 桃アゲハ
15/21

第15話 再会

「優奈元気?花見しようぜ。」



突然の連さんからの電話だった。

3年ぶりにお花見の誘い。



「彼氏に聞いてみるね。」



そう、一応聞いてみないとね。



「彼氏いるんだ。そっか。じゃ、また連絡して。」



「うん。」




わたしは早速彼に聞いてみることにした。

返事はNO。

昔の仲間に会いに行く必要はないと言われ納得いくはずもなく、わたしは別れ話を切り出した。

そんなことで?と思うかもしれないけど、結局自分が好きなのかもわからない状態で相手を思えない恋に嫌気がさしていたのもあって言ってしまった。

いや、やっと言えたのかもしれない。

簡単な別れだった。



別れても全然悲しくない。

こんな恋でいいのだろうか。と思うことは何度もあった。

でもいつかは本当に好きになれるんじゃないかって思っちゃうんだよね。

今はまだそんな人には出会えてないけど・・・。


いつかは・・・

いつかはきっと。

出会える気がして。


ねっ。










3年ぶりのお花見は3年前と同じ場所だった。


「懐かしいね。」


みんなを待つわたしと希は3年前のことを思いだす。


「あの辺りに座ったんだよね?」


「うんうん。で、涼くんが菜の花採ったら放送で注意されたよね。」


「そうそう!!みんな注目してた!!」


思い出すだけで笑えてくる。


あの時思った寂しさ切なさが今ではいい思い出になってよみがえってくる。

時間ってすごいな・・・。




「ねぇ。きみたち、一緒に花見でもいかが??」



後ろから聞こえた声に聞こえない振りをして振り向こうともしないわたしと希。

無視したわたしたちの頭をクシャクシャと掴むその男。

「何?」っと振り向くわたしの前。







・・・・。







「ヒロさん・・・。」








忘れていた胸の高鳴りが一気に思い出したかのように動きだす。

ビックリして目を丸くするわたしに微笑むヒロさん。




「髪の毛セットしてきたのに!!もぉ〜ヒロさんのバカ!!」



希がヒロさんを叩く。

みんな笑ってるのに・・・

笑えない。動けない・・・。



3年前のあの日から一度も泣くことはなかった涙がこぼれそうで・・・

桜を見る振りをして上を見上げた。



ヒロさんが来ることを知らなかったのはわたしだけだったみたい。

希になんで教えてくれなかったの?って言ったら、聞かれなかったからって。

あえて聞きませんよそんなこと。



それにしてもこの3年間忘れられなかった笑顔が目の前にある。



「久しぶり。」



「うん。」



目を合わす事もできないくらいの緊張。



「なんか変わった。」



「ん?」



「昔とはなんか違うな〜って思って。」



「そうかな??変わってないよ。」



わたしの気持ちも。

全然変わってない。



「またここでいいか。」



3年前と同じ所に座って、同じ景色を見る。

でも一つ違うことがある。

ヒロさんがいる。



ー あなたの存在だけで景色が全然違うんだよ。 ―



持って来たお酒とお弁当を広げ懐かしい話に花が咲く。

あのころは・・・って言ってるけど、わたしからみたらみんなそんなに変わってないよ。


少し外見が変わったくらい?

歳を取ったってことだよね。



「たこ焼き食べたくない?」



そう言い出した涼。



「じゃんけんで負けた人が行ってこようぜ〜」



連さんの掛け声でじゃんけんが始まる。



・・・。

やっぱり運が無いんだよね。


負けたのはわたしと涼。


涼はお酒でテンションも上がり気分良さそう。

わたしも今日はすごく気分いいけどね。



「たこやきどこのお店にする??」



「どこでもいいんじゃん?」



そうですか・・・。

涼のいかにも適当な返事に呆れるわたし。



「涼、東京の生活には慣れ・・・」




「お前もう男作ってんのかよ?」



突然腕を思いっきり掴まれた。



「痛い。」



いきなり現れた男、この前まで付き合っていた人だった。

どこかに連れて行こうとするその人に気が付いた涼がその人の腕を掴む。



「何すんだよ。」



涼が声を張る。

人の賑わう屋台前が一瞬静まり返った。



「涼くんごめん。元彼なの。少し彼と話してくるから先に戻ってて。」



「大丈夫なのかよ。」



「大丈夫。」



そう言ってその人と人が少ない場所に移動した。



「お前もう男できたの?早いんじゃない?」



「涼くんは友達だよ。この前話したじゃない。昔の友達って。」



「へぇー。あれがね。ろくな友達じゃないね。」



・・・・。

今何て言った?

頭の中で何かが切れる。



「うっさい。涼くんのこと何も知らないくせにそんなこと言わないで!!あなたなんかより全然いい人なの!!」



「あいつのこと好きなんだろ?」



「バッカじゃないの?好きだってどうだって関係ないでしょ?」



「まっ、関係ないけど。」



「うざい。もう会っても話しかけないで。」



「さぁね。」



「最低。あなたもあなたを少しでも好きと思った自分も・・・最低。」



「あっそ。」



その人は人混みに戻って行った。



もう・・・何なの?

苛立つ気持ちを落ち着かせる。



戻らなきゃ。

きっと涼が心配してる。



急いでみんなのいる場所に戻る。



「優奈大丈夫?」



「うん。ごめんね。」



「大丈夫なの??」



「ホント大丈夫。ごめんって。」



心配そうにわたしを見る涼と希。

迷惑かけちゃったな・・・。



お花見はそんな感じで嫌な事があったけど、それ以上にヒロさんに会えた喜びが大きくてすごく楽しかった。


またこれで繋がりができた感じがする。

きっとまた会える。

きっとじゃなくて・・・必ずね。



車で来た涼たちとは別れバス停に歩くわたしと希。

何気なく振り向いた後ろにはヒロさんの姿が。

走るヒロさんに気が付き足を止める。



「優奈、またな。がんばれよ。」



腕を伸ばしてきたヒロさんの手をギュっと握った。



「うん。」



誰にも見せたことがないくらいの笑顔を返す。



「じゃーな。」



「バイバイ。」



一生分の幸せを感じるくらいうれしかった。



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