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冬の匂い  作者: 桃アゲハ
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第1話 リゾートバイト

新幹線のドアが開くと全身に冷たい空気が刺さった。



一瞬、新幹線の中に戻ってしまおうかと思うくらいの衝撃。



 

「希。わたし無理かも。」


「・・・・。」



わたしの隣で希は寒さで言葉にならないようだ。



こんなに寒い所だとは思わなかった。

なんでこんな所に来ようと思ったかな・・・わたし。





『後悔』の文字が現れる。




「とりあえず行こうか。」



わたしと希は肩を縮めながら歩きはじめた。





わたし。押成おしなり 優奈ゆな。高校3年生の18歳。



隣に居るのは親友の間中まなか のぞみ。同じく高校3年生で18歳。




わたし達の通う学校が3年生の3学期は自由登校と言うことで冬休みに入った今日からリゾートバイトをしに新潟県の湯沢という街にやって来た。



なぜリゾートバイト?と思いますよね。

わたしも正直、意外な展開にビックリしている本人。


ただ単に、希と一緒に何かをしたかった。

たまたま開いた求人雑誌に書かれた『温泉・スノーボード』の文字に惹かれ、なんとなく応募したリゾートバイト。見事採用され2人仲良くここ、新潟に来てしまった。






「希。すごいよー。」



駅を出たわたし達の前には白銀の世界が広がっていた。


『キレイ』としか言いようが無い、真っ白な世界。



都会に暮らすわたし達には新鮮な景色。



雪ってこんなにキレイな景色を作りだすんだね。





しばらくすると、お世話になるバイト先のオーナー婦人(早瀬さん)から電話がきた。

駅に着いた事を伝えるとすぐに迎えに来てくれた。 




「はじめまして。早瀬ナナです。わたしはあまり苗場のお店には行かないんだけど何かあったらいつでも私に言ってね。」



わたし達がバイトをすることになったお店は苗場と言うスキー場のある街で、そこに4店舗、他の街にも4店舗経営している大きなお店。


早瀬さんとオーナーでお店を管理していて忙しく、山の上にある苗場にはあまり行かないらしい。




車に乗り込むと無言のわたしと希。

今更ながら不安がこみ上げてきた。




「苗場にいる子たちもみんなバイトで来てる子だからすぐに仲良くなれるわよ。」



早瀬さんがわたしたちの気持ちを察したのかいろいろと話をしてくれた。 



「優奈。見て。」



希が指さす方向を見るとライトに照らされて綺麗に光るゲレンデが見える。


 


「あれが苗場スキー場ね。もう暗くなってきたからライトアップされて綺麗でしょ。」



早瀬さんが笑顔で話す。きっとここに来るバイトの人はみんな同じ事を言うのだろう。



「キレイ・・・。」


「すごーい。」




二人して見とれてると車が急に止まった。



「あなたたちの寮は少し先なんだけど。ここにいる子がリーダーだから挨拶しとこうか。」




そう言って車を降りるとお店のなかに入って行く。わたし達も後ろから付いて行くと少し怖そうな顔をした女の人がいた。 




「きのう話してた子たち。今日は遅いし寮に連れていくから、明日から少しずつ教えてあげてね。」



「あっ、わかりました。」



ニコっと笑うお姉さんはエリカさん23歳。 

このニコニコ顔はきっと愛想笑いだろうと希も思ったはず。 



ビビり気味のわたしたちは


「明日からよろしくお願いします。」


と、軽い挨拶だけで何も話せなかった。 

明日からどんなことが待ってるんだろう。




その店を出て1分しないうちに寮に着いた。 

寮の一階もお店になっていてコンビニとビリヤードができるようになっていた。

でも今日は人数が足りなかったのでコンビニはお休みしているらしく人は誰もいない。 



二階に上がり部屋を案内してもらうと早瀬さんは用事ができたらしく急いで帰って行った。

2つ用意された部屋。

今日からここで暮らすんだね。



「広い部屋だね。コタツ付きだなんてすごくない?」



希が暖房をつけながら話しはじめた。



「さっきのエリカさんって人わたし苦手かも。」


「わたしも。明日から大丈夫なのかな・・・。」



苗場到着初日は二人とも興奮してなかなか眠れなかった。 







つぎの日からバイトが始まりわたしたちは一人づつ別々のお店の担当を任された。 

レジ打ちは以前にコンビニのバイトを一年やっていたので慣れていたがお土産屋さんということで品物を包装しなくてはいけない。 

お客さんの少ない午前中は包装の練習をしたり少ない品物の補充や発注をし午後はお客さん相手にお話したりと楽しんで1週間が過ぎた。


 



夕方仕事が終わって部屋に戻ろうと寮の下のコンビニに行くとエリカさんがいた。 



「これから飲みに行くけど行かない?」



エリカさんが誘ってきた。 

わたしと希は二人で顔を見合せる。



「行きます。」



希が言うとそのままみんなで居酒屋に向かった。 



「今日は全員いるから軽く自己紹介ね。まずはわたしから。エリカ23歳。(はじめ)と一緒にバイトに来ててここ(店)は今年で3年目。苗場には4年間バイトにきてまーす。ちなみに基は彼氏なんで。」



エリカさんの横に座る男の人が基さんね。無愛想だけどなかなかかっこいい人。



次に話し始めたのが修士(しゅうじ)さん。ここのバイトは2年目らしい。

他にわたしたちと同じ歳のアキとかおり。この二人は短期で正月前には帰ることになってて、それが明後日。同い年だからか初日から仲良くなれたのに淋しいな。

 


今年はバイトの人が少ないらしくまだ募集中なんだとか。 



やっぱり来てよかった。あんなに怖そうで苦手だったエリカさんとも距離が近くなった気がしてうれしかった。


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