第9話 冒険者になる前に一仕事・その3
召還した呂布に軽い自己紹介とこれからのすることを説明した。ちなみに呼び方は「呂布」でよいということだった。説明を聞いた呂布はニヤリと笑うと、
「その程度の賊ならば、拙者1人で十分でござる。ガイウス殿とローザ殿、エミーリア殿には拙者の戦働きを見ていただければと思いまする。」
僕は呂布のステータスを確認していたので、この言葉はおそらく本当だと思った。なにしろ体力が945、筋力が1054、知力が783、敏捷が887あり、能力は【剣術Lv.987】【槍術Lv.1012】【弓術Lv.1000】【防御術Lv.975】【回避術Lv.956】というまさしく人外じみた数値となっていたからだ。僕は呂布の提案に頷き、
「それじゃあ、呂布に任せるよ。道案内はそこのおじさんがしてくれるから。」
「ガイウス殿の信頼に存分に応えてみせましょうぞ。さて、賊よ仲間の所まで案内せい。大声を出したり、逃げたす素振りを見せたらその首、斬り飛ばすぞ。」
大男で迫力のある呂布に脅された盗賊その3は、顔を青くさせながら首を何度も縦に振った。そうしてその3を案内役として盗賊のアジトに向かって進み始めた。
「そういえば、呂布のその槍みたいな武器は何ていう名前なの?」
「これは戟と申します。突く、斬るの両方に対応しております武器です。」
「へぇ~。面白い武器だね。」
「そうね。まるでハルバードみたいね。」
「その、ハルバードとは?」
「簡単に言うと槍の穂先に斧とその反対に突起が着いたものよ。」
「ほぅ、それは興味深い武器ですな。一度使ってみたいものです。」
「今度、召還するときに準備しておくよ。」
「おぉ、是非ともお願いいたします。それとわが愛馬「赤兎」もお願いいたします。」
しばらく雑談をしながら進むと先導していたその3が立ち止まった。
「この先の森が途切れた広場と洞窟の中がアジトだ。」
その言葉に僕たちは姿勢を低くしながらしばらく進み木が途切れる手前で止まった。確かに洞窟があり、その入り口に見張りだろうか2人ほど盗賊が立っていた。
「呂布いける?」
「無論。」
呂布が弓に矢を2本つがえて構える。まさか2人同時に射止めるつもりなのかな。弓を引き絞る音が聞こえたと思った次の瞬間には、呂布は矢を放っていた。矢は狙いを違えることなく2人の盗賊の眉間に深々と刺さった。
「す、凄い・・・。」
思わず声が漏れてしまった。冒険者の2人も驚きのあまり声が出ないみたいだ。そんな僕たちをよそに呂布は洞窟に向かって大声で、
「賊ども出てこい。征伐に来てやったぞ!!」
しばらくすると、洞窟からワラワラと武装した男たちが出てきた。数は16人。先に倒した2人も含めて18人だからこれで全員だ。最後に出てきた周りの男たちよりも少し立派な装備を見つけた男が盗賊の頭だろう。
「どこに居やがる出てきやがれ!!」
「おう、今出てきてやる!!」
言うが早いか呂布は森から飛び出し盗賊の頭めがけて走る。走りながら弓で4人仕留め、盗賊の頭を守るように立っていた2人を戟で薙ぎ払い、これで6人仕留めた。盗賊の頭が反応する前に一瞬で間合いを詰め、腰の剣を抜きざまに首を刎ねた。
辺りが一瞬の静寂に包まれるがすぐに「か、頭がやられた・・・」「逃げろ!!」「コイツは化け物か!?」と残りの賊が慌てだす。その隙を逃す呂布ではない。逃げようと背を向けた賊には弓で、向かってくる賊には、戟と剣で斬り捨てていた。しかし、何事にも不測の事態が起こるようで、1人の賊が僕たちの隠れている方へ逃げてきた。僕はすぐに飛び出した。
「ガキがぁ!!邪魔だあぁぁぁ!!」
賊が剣を振り下ろす、その剣の腹に手を当て軌道を逸らして呂布を真似て抜刀と同時に斬り上げた。その衝撃で賊が倒れたのでそのまま首を刎ねた。呂布のほうを見ると最後の賊の首を刎ねたところだった。
その後は、死体を一カ所に集め、洞窟の中に捕らわれている人がいないか捜索した。結果として誰もいなかったけどそれなりの財貨があった。これはあとでみんなで山分けだね。こうして僕の初めての実戦は幕を閉じた。
見てくださりありがとうございます。
主人公には次の話ぐらいには冒険者になってもらおうと思います。たぶん・・・。