第63話 進むか退くか
さて、この後の活動方針だ。依頼分のロックウルフは倒したから、“インシピット”の町に帰還してもいいし、日がまだ高いから森の浅いところで狩りをしてもいい。どうしようか。まずは3人に相談だ。
3人にその話しをすると、ルプスが加わってきた。
「ガイウスよ。今、この森はおかしい。魔物の数が異常に増えている。この前まではオークロードにゴブリンキングがいた。そして、今日まではロックウルフリーダーがいた。だが、まだいるぞ。我らの群れが確認しているのはオーガに、ガーゴイル、コボルト、飛竜だな。」
「なるほどね。ちなみにオークロードとゴブリンキングを倒したのは僕たちだったんだけど、まさか狙っていた?」
「とんでもない。我の群れにはこの春に生まれたばかりの仔らがいるのだ。脅威が少なくなって感謝しておるよ。しかし、ガイウスは本当に人間か?あんな動きをする人間を我は見たことが無い。」
「一応人間さ。貴重な情報ありがとね。」
そう言いながら、ルプスを撫でる。
「退きましょうか。今回は。」
そう言うと、3人とも頷き、
「折檻が待ってる。」とエミーリアさんがボソッと呟いた。忘れて無かったのね。ガックリと肩を落としていると、ルプスが前脚を僕の肩に乗っけて、
「妻にはかなわんよ。そう落ち込むでない。」
と慰めてくれた。「ルプス~。」と言いながら、モフモフの毛皮に顔を埋める。あぁ~癒される。しばらく、ルプスをモフモフしていると、【気配察知】に反応するものがあった。おそらくは、人、それに1人だ。でも、この状況はマズイ。グレイウルフに敵対するような人だと戦闘になってしまう。“ルプス”に説明をして、今回は、これでお別れすることにする。“ルプス”達が拠点にしている場所を聞いたので、会いに行きたいときはいつでも会いに行ける。
“ルプス”達を見送り、散らばったロックウルフの骨をエミーリアさんの【土魔法】で穴を掘り、そこに骨を投げ入れ、また土を被せる。鋼鉄の壁も【送還】して消す。何とか間に合った。ついでに【土魔法】も覚えた。
もうすぐで視認できるはずだ。一応、戦闘態勢をとっておく。が、ガサガサと茂みから出てきた人物を確認し、すぐに戦闘態勢を解く。
「アントンさん、今朝ぶりです。なんでこんなところに?」
「おう、ガイウス達だったか。いや、なんかでっかい鉄の壁?みたいのが見えたからな。いきなり消えたけど、一応確認しておこうと思って来たというわけさ。」
「あー、すみません。その鉄の壁は僕たちが出したもので、撤去しました。迷惑をかけました。」
「いや、別に迷惑とかじゃなくて、好奇心で来たようなもんだから、気にしなさんな。」
そう言いながらアントンさんは周りを見渡す。「どうしましたか?」と聞くと、
「お前さん、また、大立ち回りをしただろう。そこらへんの木々に血は飛び散っているわ、木がなぎ倒されているわで、一体何を相手にした?」
「ただのロックウルフの群れですよ。」
「ウソこけ。お前さんなら、ただのロックウルフの群れなんて、周辺に影響を与えず、綺麗に片づけるだろう。」
「ええ、嘘です。846体のロックウルフの群れと、率いていたロックウルフリーダーを相手に戦いました。御覧の通り、1体も残さずに。」
アントンさんはそれを聞き、口笛を吹く。その後、ニヤリと笑い、
「ガイウスよ。やっぱりお前さんはスゲェよ。後ろの嬢ちゃんたちもな。ますます、パーティに加入したくなった。」
「なんで、そんなに加入したいんですか?」
素直に疑問に思ったことを聞く。するとアントンさんは照れくさそうに、
「家族がいるからな。今まではソロでもいけたんだが、寄る年波には勝てん。冒険者としての限界が見えてきてな。しかし、俺は食い扶持を稼ぐ方法をこれしか知らん。だから、他人と力を合わせて依頼をこなしていきたいと思った。それが理由だ。」
「家族?まさか結婚していたんですか!?」
「まさかとはなんだ。まさかとは。あぁ、結婚しているとも、それに子供も5人いる息子が2人に娘が3人だ。・・・ハッ、娘は嫁にやらんぞ!!」
「いやいや、娘さんを貰うとか誰もそんなこと言ってないじゃないですか!?というかクリスティアーネ達も本気だと受け取らないで睨まないで!!怖いよ!!」
いや、こう無言の圧力がですねクリスティアーネ達の方からビシビシと来るんですよ。はっきり言って、ゴブリンキング、オークロード、ロックウルフリーダーが小物に感じるほどの威圧感ですよ。
「とりあえず、僕たちは“インシピット”に戻りますけど。アントンさんはどうされます?」
「俺は、飛竜狩りだから、もうちっと時間がかかるな。」
「じゃあ、ここでお別れですね。また、ギルドで会いましょう。その時にはパーティ加入の件も答えを出せていると思いますので。」
「おう、それじゃあな。」
そう言って、片手を挙げアントンさんは森へ入っていく。さて、後ろを振り向くと表情を消して、目からも光が消えた3人がいた。あっ、折檻の内容が重くなるんですね。わかりました。
見てくださりありがとうございました。




