第6話 旅立ち
気がつくと自分の部屋にいた。そしてなぜかフォルトゥナ様もいた。
「さっき能力を2つ授けましたが、あのバカは3つも授けたから私も3つ目を授けようと思ってね。」
「よろしいんですか?御姿をその、下界に・・・。」
「あまりよくはないけど能力を授けたらすぐに戻るから大丈夫でしょう。さて、ガイウスあなたに授ける3つ目の能力は異空間収納よ。ようは魔法袋ね。魔法袋はそれぞれ容量があるけど、あなたの場合は好き勝手に空間からモノを出し入れできるわ。収納するときはそのモノを空間にしまいこむことを意識して、出すときはそのモノを思い浮かべて見るのよ。試してみなさい。」
そう言われて、じいちゃんから貰った両手剣をなおすのを意識して手に持った。するとあっという間に、どこかへと消えてしまった。そして、今度は取り出すのに意識を向け両手剣を思い浮かべた。すると何もない空間から両手剣が持ち手から出てきたので手に取った。すると残りの刀身の部分も出てきて、なおした時と変わらない姿で出てきた
「上手くできたじゃない。そうそう異空間に収納したものは時間が停止するから、食料を入れておいても腐ったりしないわよ。ただ、人前で使うのは気を付けないなさいね。適当な袋を使って魔法袋から出し入れしているようにみせるのがいいわね。」
「なぜですか?」
「もし、貴方が軍の補給担当者だとして、馬匹を100必要とする輸送をたった1人で補える人物がいたらどうします?」
「それは、もちろん軍に入れて他に行けないように・・・・。あっ!?」
「わかったようね。自由を奪われたくなければ気を付けなさい。いいわね。」
「はい。ご忠告ありがとうございます。」
「さて、もう夜も明けるわ。私はこれでサヨナラね。」
「ありがとうございました。フォルトゥナ様。」
フォルトゥナ様は微笑みながらスゥーっと消えるように戻っていった。窓を開けると空が白み始めていた。もうひと眠りと思ったけどそんな時間はなさそうだ。朝食までの時間に装備に漏れがないからもう一回確認でもしとくかな。
さて、そろそろ朝食の時間だ。1階に下りると父さんとじいちゃんがもう席についていた。母さんとばあちゃんはみんなの朝食の準備をしている。
「おはよう。」
「おはよう。ガイウス。もう少しでご飯ができるから待っておいてね。」
僕が席についてしばらくしてから弟のトマスと妹のヘレナが目をこすりながら起きてきた。
「おはよう。2人とも」
「「おはよう。ガイウス兄ちゃん」」
2人が席につき、母さんとばあちゃんが配膳を終え席についた。食事の前に女神フォルトゥナ様へ祈りをささげる。しばらくみんな無言で食べていたが不意に父さんが、
「辛くなったらいつでも帰ってこい。」
と言ってきた。それを合図にしたかのようにみんな口々に「心配だ」とか「身体に気を付けて」とか言ってきた。それでも最後に、
「何やかんや言ったが、ガイウスの人生じゃ。悔いのないようにな。」
というじいちゃんの一言でしめられた。朝食もそれとともに終わり、とうとう僕が出発する時間になった。装備はじいちゃんから貰った両手剣と狩人のイルガおじさんと一緒に作った弓と矢、それと食料とか生活雑貨の入った背嚢と財布だ。ちなみに背嚢の中身の一部と財布は途中で無くすといけないので【収納】した。
家族みんな家の前で姿が見えなくなるまで手を振ってくれた。ここから僕の冒険が始まるんだと思うと、心が躍った。
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