第58話 黒魔の森
ギルドマスター執務室に入ると同時に、頭を下げたアンスガーさんから「輪切りはやめてくれ。」と懇願された。「冗談ですよ。」と笑いながら言ったら、「その笑顔が恐い。」と言われた。解せぬ。
「まぁ、座って。」とソファーを勧められる。全員で席につくと、
「用件は、クリスティアーネのことかな。さっきの試合を見せてもらったけど、ガイウス君のお眼鏡にかなったのかな?」
「えぇ、十分な実力があると僕は判断しました。“シュタールヴィレ”に正式に加入していただこうと思います。」
「そうかい。良かったね。クリスティアーネ。ユリアさん。クリスティアーネの冒険者証に処理をお願いします。」
そう言って、クリスティアーネの冒険者証をユリアさんに渡し、ユリアさんが処理のため退室した。
「はい、叔父様。これからは、冒険者として領民のために頑張りたいと思いますわ。」
「はは、本音はガイウス君と一緒にいたいからだろうに。まぁ、命の危険が無い程度に頑張ってくれ。父上と兄上には、私から報告しておくからね。」
「お願いします。叔父様。」
「それでは、アンスガーさん、僕たちはこれから黒魔の森に潜ってきます。クリスティアーネ様に実戦を体験させたいので。」
「ああ、気を付けてね。ちゃんとユリアさんから冒険者証を受け取ってね。」
そうして、僕たちは執務室を退室した。1階に下り、ユリアさんを探す。受付カウンターで依頼受注処理をしているようだ。あとで声を掛けよう。あっ、アントンさんのことについて相談するのを忘れていた。ま、いいか。急ぎじゃない用件だし。
僕たちはそのまま依頼掲示板に行き、クリスティアーネの初仕事にふさわしい7級相当の依頼を探す。う~ん、なかなかいいのがないなぁ。常設依頼には、何かあるかなっと。あ、あった。
“ロックウルフの討伐:数は最低5体。銀貨1枚。1体追加ごとに銅貨20枚”
これなら、大丈夫だろう。でも、クリスティアーネが初めて受ける依頼だから、彼女にも確認をとろう。
「クリスティアーネ。今回はこの依頼を受けようと思うんだけど、どうかな?」
「ロックウルフですか。実際に戦ったことはありませんが、受けたいです。」
「それじゃあ、依頼受注処理してもらわないとね。ユリアさんの窓口でしよう。クリスティアーネの冒険者証も受け取らないといけないしね。」
ということで、受付カウンターはユリアさんの窓口に行く。ユリアさんは僕たちをみとめると、笑顔になりながら、
「依頼受注処理ですね。・・・はい、処理は終わりました。それと、クリスティアーネさんの冒険者証です。どうぞ。」
「ありがとうございます。これから頑張らせていただきます。」
「それでは、僕たちは行きますね。今回も日帰りの予定なので。」
「はい、お気を付けて。」
ユリアさんのいつも通りの笑顔で送り出される。さて、このまま“黒魔の森”といきたいけど、僕の防具を整えたい。ヒヒイロカネ製の鎧と槍では目立ちすぎるからね。というわけで、ギルドに近い防具屋で鎖帷子、革鎧、籠手以外の鋼鉄製の上等な鎧、それに大盾だ。デュエリング・シールドの中でも上下に槍のような穂先の着いたソードシールドを買う。占めて銀貨40枚。装備品にはお金かけないとね。【不老不死】でも痛いモノは痛いし。
お店の試着スペースで装備をする。兜はフルフェイスなので、町の外で付けよう。その後は、“黄金の尾”で昼食を買い込み、偽魔法袋に【収納】する。これで、準備万端。
門でドルスさん達に挨拶をして、森へと向かう。フルフェイスの兜を被ると、試着の時からわかっていたことだけど、視界が一気に狭まる。なので【気配察知】をフルに活用する。Lv.が15(75)あるので、半径6kmぐらいのモノの動きがわかる。ホントに便利だなコレ。
さてさて、近い獲物に向かいますか。陣形とは言えないけど先頭は僕、中衛をクリスティアーネとエミーリアさん、後衛をローザさん。なるべくお互いが離れすぎないように進む。もうちょっとで、一番近い獲物が視界に入るはず。
6分後、獲物を視界にとらえた。幸運なことにロックウルフが3体だった。しかし、何かと戦っている。何だろうと思って目を凝らしてみてみると、1匹のグレイウルフだった。グレイウルフは普通の獣で魔物ではない。さて、どうするかな。
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