第55話 包囲網解散
「ところで、こんな時間になぜ、“インシピット”に?」
「私もガイウス殿の将来の妻として、冒険者登録をしようかと思いまして。」
「へっ!?」
笑顔で普通に答えてくれたけど、これって大丈夫なの?ということで率直に聞いてみた。
「えっと、辺境伯様やヴィンフリート様は許してくださったんですか?」
「いえ、お爺様とお父様は簡単には許してくれず、条件を出されました。1つはアンスガー叔父様の許可を取ること、もう1つは“シュタールヴィレ”に入り、ガイウス殿と行動を共にすることです。」
「ファッ!?」
アンスガーさんの許可を取ることはわかるけど、なぜ“シュタールヴィレ”に加入し、僕と行動を共にすることが条件なんだ。ちょっと理解が追い付かない。というか、行動を共にすることって結婚もしてないのに、いいのだろうか?
「あー、確かに冒険者をするならガイウスの側にいたほうが安全かもしれないわね。数分でオークガーディアン100体とオークロードを倒せる冒険者なんて、この町の近くにはいないでしょうからね。」
「えぇ、叔父様も似たようなことを仰っておりました。」
「でも、僕は冒険者になってまだ4日目ですよ!?御付きの騎士の方たちとパーティを組んだ方が良いのでは?」
「ガイウス殿に敗れた者たちにですか?」
そう言われると、何も言い返せない。ローザさんは賛成のようだし、エミーリアさんはどうなのだろう。
「エミーリアさんはどう思われますか?」
「将来の正室となる方と一緒に過ごせるなら、私たちの結婚後の生活も安心できる。それに、ガイウスはクリスティアーネ様が、普通の貴族令嬢でないことは知っているはず。」
「確かに、クリスティアーネ様の体つきは、想像していた貴族令嬢の体つきとは違い、鍛えているように見受けられました。でも、それとこれとは・・・。」
「嬉しいですわ。私のことを、そこまで見ていてくださったなんて。」
そう言いながら、僕の言葉を遮り、クリスティアーネ様が飛びついてくる。それをしっかりと受け止める。うん、貴族らしい華美な服装で隠れているけど、受け止めた感じだと女性らしく柔らかな感触だけど鍛えている体だ。それに、【鑑定】で視たステータスもほとんどが50前後で、知力に至っては70前後と14歳の女性としては中々のモノだった。ちなみに、19歳のローザさんとエミーリアさんは大体80前後だ。
でも、僕たち“シュタールヴィレ”が加入に同意しても、アンスガーさんが反対すればお終いのはず、そこの確認を、
「そういえば、アンスガーさんは許可を出したんですか?」
「ええ、最初は厳しいお顔をなさっていましたけれども、“シュタールヴィレ”加入とガイウス殿の件を伝えましたら、了承してくださいましたわ。」
「何も言わずにですか?」
「えーっと、確か「クリスティアーネを危ない目に遭わせるのは、叔父として本意ではないが、ガイウス君が一緒なら大丈夫だろう。ガイウス君が受け入れてくれたら、冒険者登録に来るといい。」と仰いました。ですから、あとはガイウス殿のお返事だけです。」
ズルい。アンスガーさんズルすぎる。最終判断が僕の返事で決まるなんて。今から、1階の食堂に下りていって、全身の関節の骨でも折ってあげようか。人間の骨は200本以上あるって、教会に置いてあった本に書いてあったし、アンスガーさん頑丈で痛みに強いから、ヘーキ、ヘーキ。
「そういえば!!」とユリアさんが“パンッ”と手を叩き、
「今日、助けていた8人の女性冒険者の中にも、貴族家の女性がいましたね。」
新たな火種を投入した。抱き着いているクリスティアーネ様の目が見開かれる。その状態で、
「どういうことですの?どういうことですの?私以外の貴族家の女性と懇ろにされておりますの?」
と聞いてきた。美人なだけあって、凄い迫力がある。僕はのけぞりながら、「違います。違います。助けただけです。」と、必死に否定した。ローザさんとエミーリアさん、火種を投入したユリアさんも説明に加わってくれて、数分後にはクリスティアーネ様は落ち着いた。
頬に手を当て顔を赤らめながら、
「私としたことが、早とちりしてしまい、取り乱してしまい、申し訳ありませんでした。」
と謝罪された。その様子も可愛いなぁと思いながら眺めていたら、ローザさんとエミーリアさん、ユリアさんにジト目で見られた。いいじゃないですか!!可愛いんだから!!
「それでは、私たちは此処で失礼いたします。宿は別に取っておりますので。また、明日の朝、冒険者ギルドで。」
「はい、また冒険者ギルドでお会いしましょう。」
そうして、馬車に乗ったクリスティアーネ様と御付きの騎士たちは、別の宿へと向かって行った。アンスガーさん?もちろん、僕を見捨てたそれ相応の報いを受けてもらったよ。
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