第40話 そういえば、褒美貰ってないや
「あらあら、ダヴィド様は私共にご相談なく、このような場でクリスティアーネの婚約者候補を決めてしまいましたわ。」
「ええ、お義母さま。ヴィンフリート様もですわ。」
2人の女性の声が響くと同時に、先ほどまで鳴っていた拍手がやむ。そして、ダヴィド様とヴィンフリート様は顔を青くしている。なんとなくだけど、2人の女性が誰なのか鑑定を使わなくてもわかる。お2人の奥方様だろう。
「アライダ、お主に相談なく決めたのは悪かった。しかし、可愛い孫娘の頼みなのだ。悪い虫がつく前に早く手を打とうと思ってな。」
「そうだ、ドーリス。母上とお主に事前に相談しなかったのは悪かったと思っている。しかし、娘の頼みなのだ。叶えてやるのが親というものであろう。」
おぉ、青い顔をしながらも言い返している流石だ。
「私もドーリス殿も、模擬戦を見ていましたし、ガイウス殿の功績はアンスガーから聞きました。ええ、可愛い孫娘の頼みです。相手が平民であろうとも、これから功績をあげ、騎士爵や準男爵を授爵していただければ異論はありませんとも。」
「ならば、なぜそこまで怒っている?」
「先ほども言ったでしょう。なぜこのような場で発表するのです。クリスティアーネの婚約者候補の発表をするならば配下の貴族家を集め、きちんとした婚約発表の場を設けてするべきでしょう!!」
凄い迫力だ。ドーリス様も同じような思いらしく、お2人が発する圧は、ダヴィド様とヴィンフリート様を萎縮させている。うぅむ、この場で発表という流れになったのには、僕にも原因がある。怖いけどここははっきりと言おう。
「アライダ様、ドーリス様、お目にかかれて光栄です。9級冒険者のガイウスと申します。この度は、自分の発言のせいでご迷惑をおかけして申し訳ありません。如何なる罰でもお受けいたします。」
頭を垂れながら、一気に言う。するとアライダ様が、
「お顔をお上げになって、ガイウス殿。貴方が悪いわけではないのよ。一部始終を私たちは見ていました。あのような状況では、ああ言うしか無かったでしょう。悪いのは、変に圧力をかけたダヴィド様とヴィンフリートです。それに私とドーリス殿はガイウス殿、貴方のことを思いの外、気に入りました。ですから、必ず、クリスティアーネを迎えに来て、幸せにしてくださいね。」
「ハッ、自分の人生をかけ、幸せにしてみせます。フォルトゥナ様に誓います。」
「フォルトゥナ様に誓われたら、私どもから言うことはありませんね。」
「はい、お義母さま。ガイウス殿、お願いしますよ。」
「ハッ。」
お2人とも、僕の返事を聞くと柔らかい表情に笑みを浮かべた。その笑顔を見ると、クリスティアーネ様と家族なんだなぁと思う。横目で、ダヴィド様とヴィンフリート様を見ると2人ともホッとしているようだった。これで一件落着かな。
「お爺様にお婆様、そしてお父様にお母様。私のことでお忘れでしょうが、これは、模擬戦の交流会ですよ。そして、勝者であるガイウス殿に報奨を授ける場でもあるはずです。」
そうクリスティアーネ様がいうと、ダヴィド様が「あっ」という顔をした。完全に忘れていたらしい。まぁ、可愛い孫娘の婚約者候補が決まっちゃったんだから、その衝撃が大きいのは仕方ないね。ダヴィド様はすぐに執事さんを呼んで、何かを取りに行かせた。恐らく報奨だろう。なんだろうなぁ。僕としては、クリスティアーネ様の婚約者候補という地位を得たのが最大の報奨だと思う。
数分後、執事さんを先頭に使用人たちが何かを持って入ってきた。革袋が二つに大きな木箱が一つ、さらに長い木箱が一つ。「ふむ、勝者である僕以外にも、優秀な戦績を収めた騎士か兵士に渡すのかな。」などと考えていると、ダヴィド様が再び壇上に上がり、
「これより、模擬戦の報奨を授与する。ガイウスよ、壇上へ。」
呼ばれたので壇上に上がり、頭を垂れる。しばらくして「顔をあげよ。」と言われたので、顔をあげると、さっき見た革袋に木箱が目の前に置かれていた。あれ?
「この度、勝者であるガイウスに授与する報奨は、金貨800枚、宝石一袋、そして、我が家に伝わる鎧一式と槍である。」
僕は、鑑定して倒れそうになった。金貨と宝石の量もだけど、勇者や英雄の伝承とか伝記に出てくる希少金属、ヒヒイロカネ製の鎧と槍なんて・・・。恐る恐る木箱の蓋を開けると、書物の記述通り、太陽のように光り輝いていた。
「・・・ありがたく、いただきます。戴いた装備を使いこなし、名を馳せるような人物になれるよう、精進いたします。」
「うむ。お主なら大丈夫であろう。決して力に驕るでないぞ。」
「はっ!!」
拍手の音が会場を包み込む。僕はその中を使用人の手を借りて報奨と共に壇上から下りる。しばらくしてダヴィド様が片手を挙げ、会場に静謐が訪れる。
「それでは、これにて報奨の授与を終える。各々、時間と料理はまだあるので、存分に楽しんでほしい。」
そう言って、壇上を下りる。すると、だんだんと喧騒が戻ってきた。僕は、貰った報奨を、偽装魔法袋に入れるふりをして【収納】する。さてと、料理を楽しもうっと。
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