第32話 アルムガルト辺境伯騎士団
アンスガーさんとヴィンフリート様の制止の声を振り切って、練兵場まで使用人の後を着いて行く。使用人には2人が僕を制止しようとするのが不思議だったみたいで、「お2人ともいかがしたのでしょう?」と聞いてきたので、僕はわざと「さぁ?何があったんでしょうね。」と、とぼけた。
練兵場には正門ではなく裏の通用門から行った方が近いようで、そちらから案内された。ちなみに僕の後ろには黒い笑顔を浮かべたローザさんとエミーリアさん、呆れたというような表情をしているユリアさんが着いて来ている。アンスガーさんとヴィンフリート様は、さらにその後ろを青い顔をして歩いている。
さて、練兵場に着いた。案内してくれた使用人にお礼を言い中に入る。目の前にギルドの練習場よりも広大な敷地が広がる。そして、その敷地には騎乗した騎士が30騎、歩兵が50人。フッと陰ったので、上を見上げれば空には竜騎兵が10騎も遊弋していた。
ざっと全員を鑑定したけど、僕よりも強い人はいない。1対1なら負けないだろう。しかし、今回は90人もの軍人を相手に戦う。まぁ、ゴブリンの集落を潰した時よりは楽だろう。ローザさん達も入ってきたが、離れた観覧席に案内されている。手を振ってきたので笑顔で振り返す。アンスガーさん達はダヴィド様の所に駆けて行った。おそらく、この模擬戦を止めようとしているのだろう。だが、ダヴィド様は聞き入れなかったようだ。
僕は練兵場まで歩いていく。すでに短槍と長剣、弓矢の準備は万端だ。騎士たちと対峙するように立つ。距離は100mほどだろうか。騎士たちが話しているのが聞こえる。
「子供とは聞いていたが本当に子供ではないか。」「我らに子供を討てとおっしゃるのか。」「すぐに勝負を決めよう。歩兵や竜騎兵に出番を与える必要などない。」「早く終わらせて業務に戻りたいものだ。」「おい、口が過ぎるぞ。あんななりでもゴブリンキングを討ち、アンスガー様に勝ったのだ。油断してはならん。」などなど、最後の人以外は完全に僕を舐めきっている。ま、そのほうがやりやすい。
ダヴィド様が観覧席から声を発する。
「これより、我が辺境伯軍の選抜隊と9級冒険者のガイウスの模擬戦を始める。装備は通常戦闘に使うものと同じものとする。勝敗は選抜隊の全滅か、ガイウスの降伏または死亡で決着とする。異存はないか。」
僕は頷き、騎士たちも頭を垂れて答える。
「それでは、これより試合を開始する。」
ダヴィド様の宣言と共に大太鼓が打ち鳴らされる。僕は嗤う。さぁ、殺し合いの開始だ。
相手の騎士たちが突撃槍の穂先をそろえ騎馬を駆けさせてくる。騎馬突撃だ。まともにくらったら僕は挽き肉よりもひどい姿になるだろう。けど僕も走って距離を詰める。その間に左手にジョージから教えてもらった“Ⅿ18スモーク・グレネード”を召喚し、ピンを抜いて投げる。あっという間に緑の煙が広がり、僕と敵の騎士たちを包み込む。視界が効かない中【気配察知】を使い、敵の場所を把握する。
いきなりの煙に騎士たちは混乱しているようで、馬の足を止めた。まずは騎馬突撃を防げた。さて、ここからは1人ずつ処理していこう。まずは、一番近くの騎士の手綱を斬り、短槍の石突で思いっきり鳩尾付近を突き、落馬させる。馬は邪魔だからお尻を少し刺して、どこかに行ってもらう。これがさらに混乱に拍車をかける。
その間にまずは1人目の戦闘力を奪おう。落馬してやっと起き上がった騎士と至近距離で対峙する。さすがに煙の中でもこの距離なら僕を視認できるようだ。「おのれ、煙とは卑怯な手を。」などと言っているが、模擬戦に卑怯もクソもないだろうに。
僕は、彼が戦闘態勢を整える前に短槍で、両肩と両膝を突く。鋼鉄製の短槍は鉄製の鎧を易々(やすやす)と貫く。そして最後に下腹部を貫く。「がっ!?」と呻き地面に倒れ伏す。血が流れ広がる。急所は外してあるから死んではないはずだ。他の騎士たちにも同じような末路を辿っていただこう。さらに“M18スモーク・グレネード”を【召喚】し、四方に投げる。
さあ、ただの子供と舐めたつけを、己の体で払ってもらおうじゃないか。
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