第158話 お客様・その2
今日の夕食はお肉料理だ。それも牛肉といった豪華さ。お客さんであるエレメーイさんが来ているナイスタイミングでの料理だ。ステーキやスープは勿論、サンドイッチにもローストビーフが使われている。内臓は綺麗に処理して、煮込み料理として出ている。うん、いいね。
さて、配膳をしてくれたユリアさんにローザさん、エミーリアさんが席に着いたのを確認して、食前のフォルトゥナ様への祈りを始める。ちなみにこの祈りには定型句は無くて、みんなそれぞれの言い方がある。
それこそ、「フォルトゥナ様に感謝していただきます。」という短いモノから「この世に生まれし者を見守られているフォルトゥナ様。今回、私はその中のモノをいただきます。どうか罪深い私を許して云々。」と長いモノまで様々だ。朝食や昼食は時間が無いので、みんな基本的に短い。しかし、夕食は時間に余裕があることもあり長い人が多い。
僕たち“シュタールヴィレ”の面々は貴族であるクリスやユリアさんがそれなりに長くて、孤児院出身のローザさんとエミーリアさんは長い、アントンとレナータさんは普通かな。僕は冒険者になってから短くなったかな。エレメーイさんは普通ぐらいだった。
お祈りを済ませ、食事を始める。1人1人の前にそれぞれ料理は取り分けて置かれてはいるが、食卓の真ん中には料理が盛られた大皿があり、各人、足りない場合はそこから自分で取る。はっきり言って、貴族の食卓とは程遠い。どちらかというと庶民風だ。みんなそれをわかっているが口には出さない。もちろん、僕も。エレメーイさんも最初は戸惑っていたみたいだけど、料理に手を付けたらみんなを真似しておかわりもしていた。口に合ったみたいでよかった。ユリアさんも嬉しそうにしている。
「ガイウス様、美味しいお食事ありがとうございます。」
「気にすることはない。お客人への通常のもてなしだ。さて、私の執務室へ行こうか。先程の事と、イオアン殿への返書を用意せねばならん。」
「お気遣いいただきありがとうございます。」
そして、エレメーイさんとともに執務室へ向かう。応接用のソファをエレメーイさんに勧め、紙と万年筆を貸す。礼を言い、すぐに先程の情報やクレムリンのことについて書き始める。僕はそれを確認し、執務机でイオアンさんへの返書を書く。
“ニルレブの北にできた城塞は私、ガイウス・ゲーニウスの住居です。帝国への侵攻の意図を持ってして造成したわけではありません。もし、仮に此処を軍事施設とするならば防衛拠点として機能することでしょう。”
もっと、装飾した言葉を使って長く書いたけど、要点はこんな感じでいいかな。後は封筒に入れて。封蝋印を押して終了。エレメーイさんはもう少しかかりそうだ。僕は各【魔法】を手の平の上で発動させながら時間を潰す。うん、前よりも発動時間が短くなっている。ステータスを確認してもいい時期かなと思っていると、
「ありがとうございました。これで、イオアン様への土産話ができました。」
エレメーイさんがそう言って、万年筆と残った紙を返してくれる。
「よく書けたかな?」
「はい、それはもう。」
「よろしい、ならば、客室に案内しよう。」
エレメーイさんを客室に案内すると、あまりの豪華さにビックリしていた。うん、気持ちはわかるよ。僕もビックリしたもの。お風呂に入るかも聞いて男性用浴室へ案内した。丁度、アントンさんが使い終わった所だった。アントンさんにエレメーイさんへ浴室の使い方を教えてあげるようにお願いして、執務室へ戻った。
執務机の上に紙を一枚広げ、現状の整理を始める。
「さて、拠点はできた。ここがあればみんなを呼んでも問題ないかな。アダーモさん、ジギスムントさん、クスタ君、ベドジフさんの4人には書状を出そう。グイードさん達は家族と共にこちらへ向かっている最中だからいいし、パーヴァリさんもツルフナルフ砦の守備隊司令としてそのまま置いておけば大丈夫。ジギスムントさんも書状は出すけどオツスローフ方面の司令官として留任してもらうっと。こんなところかな。呂布たちは【召喚】された者だから純粋な常備戦力として見るのは危ないかもね。ああ、学園出身者とかで、職に就いてない人を探すのもいいかもしれない。常備軍は、基本的には志願兵のみで固めておきたい。しかし、すぐに志願をしてもらえるものか・・・。」
ううむ。と唸っていると扉がノックされた。「どうぞ。」と声をかけるとアントンさんが入ってきた。手には2本のボトルと2つのグラスを持っている。
「よう、ガイウス。眉間にシワが寄っているぞ。よく冷えた果実水を持って来た。ちょいと休憩でもせんか?明日は日曜で休日だから、時間が無いとは言わせんぞ。」
「そうですね。少し休憩しましょう。」
アントンさんはニッと笑って応接机の上にグラスを置き、僕の分には果実水を自分の分にはワインを注いだ。
「では、乾杯だ。」
「何にですか?」
「今日も生き残れたことにだよ。」
「ああ、そうですね。それでは、」
「「乾杯。」」
「ところで今日の獲物は何だったんですか?夕食時に聞きそびれてしまって。」
「ん?ああ、オーク、ハイオーク、オークリーダー、ハイオークリーダーだったよ。久しぶりに苦戦したが、レナータ嬢が大活躍だったな。」
「確かにレナータさんなら容易に想像がつきますね。」
「だろう?剣技や格闘術もそうだが、あの尻尾を使った一撃は中々のもんだ。直撃を受けたオークの首が180°回っていたからな。」
「でしょうねえ。」
「ま、おかげで楽をさせてもらったさ。あ、そうだ、そろそろエレと子供たちを呼ぼうと思っているんだが、いいか?」
「ええ、大丈夫ですよ。」
「なら、よかった。さて、今夜はもうちょい飲もうかね。」
「二日酔いは勘弁ですよ。」
そう注意すると、笑いながら「わかっている」と言って、杯を重ねるのだった。
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