第148話 嘆願書?
「まずは何があったのかを説明してください。」
「うむ、そうだの。アルノルト、頼む。」
「はっ、陛下。ガイウス殿。昨日の演説は見事だった。いや、見事過ぎた。簡潔に説明するが、お主の演説が終わった約1時間後に最初の減刑を求める嘆願書と厳罰を求める嘆願書が内務省に届いた。その後は、時間を追うごとにそれが増えた。問題なのは、それの大半が貴族と文官、武官からということだ。」
「民からのではないのですか?」
「ハハッ!!それはもう今朝から届いておるよ。今頃、休日出勤の内務省はてんやわんやだろう。なあ、マテウス殿。」
「うむ。それでだガイウス殿。此処に有るこれらはどうすればよいと思う?」
「えっ!?それを考えるのが宰相閣下と内務大臣閣下のお仕事でしょう?」
「そうは言わずに、余を助けると思って力を貸してはくれんか?」
「陛下がそのように仰られるならば・・・。」
取り敢えず、手近な嘆願書を見てみる。なになに、
“ガイウス閣下の演説には大変共感致しました。罪を犯したとはいえ、救国の英雄であるピーテル閣下に重い刑罰を処すのは如何なものでしょう。法治国家であるとはいえ、情状酌量の余地がある罪の場合は十分に検討するべきだと思われます。ピーテル閣下には降爵と領地の削減か召し上げが妥当かと思われます。その他の者については、通常よりも重い刑罰を望みます。”
うん、普通だね。次は、
“フォルトゥナ様の使徒であるガイウス様のお手を煩わせるとは言語道断。しかし、ガイウス様も仰った通り、ピーテル殿は虫を炙り出し、捕縛するのに一役買っておりますので、減刑で良いかと。他の者共は地獄を見るべきでしょう。”
うーむ、少し狂信的だねえ。お次は、
“ああ、ガイウス様があの美しい純白の翼で、あのお声で演説してくださったことに感謝を。そのような場を設ける機会を与えたピーテル・オリフィエル侯爵は罰を減じてもいいでしょう。他の虫どもは処刑でいいのでは。”
あ、ちょっと危ない人だね。さて次は、
“ガイウス様ガイウス様ガイウス様ガイウス様ガイウス様のお声ガイウス様ガイウス様ガイウス様ガイウス様ガイウス様のお姿ガイウス様ガイウス様・・・。”
僕はそっと書状を閉じた。そして目線を上げると3人から逸らされた。僕は呟いた。
「狂信者・・・。」
その言葉に3人ともビクッと肩を跳ねあがらせた。
「あれですね。僕の狂信者がいるんですね。というか、僕の狂信者からのが大半を占めているのでは?」
「大半は言い過ぎだが、今のところ三分の一を占めている。」
アルノルトさんの言葉に頭を抱える。
「やり方が間違っていたんですかね・・・。」
「いや、余はあのやり方で良かったと思っておるぞ。民にあまねく伝えることができたのだからな。」
「うむ、私も陛下と同意見だ。まあ、なんだ、ガイウス殿のあの姿はまさしく神が遣わした者、フォルトゥナ様の使徒の名に恥じぬものであったからな。フォルトゥナ教に熱を入れている者達にとっては発奮する機会となったのであろう。ああ、信仰が悪いと言っているのではないぞ。まあ、マテウス殿は大変だったらしいが。」
「内容を聞いてもよろしいですか。マテウス殿。」
「いや、治安部が苦労してな。正確に言えば衛兵隊だが。ガイウス殿の演説のあと、教会に人が殺到したようでな。その対応に追われていたというだけだ。」
「なるほど。なら、そちらは引き続き衛兵隊に頑張ってもらうとして、取り敢えずは目の前の問題ですな。内容で分けてあるようなので、私個人の崇拝傾向が強いモノは排除していきましょう。嘆願書としての体を成しているのであれば、そのまま受け付けましょう。後は司法部に丸投げでいいでしょう。それと、私個人を崇拝するような書状は教会にでも渡しますか?ああ、いや燃やした方がいいですかね。」
手の平に【火魔法】でファイヤーボールを出しながら言う。
「ガイウス、ガイウス、落ち着くのだ。お主の気持ちはわからんでもないが、折角の書状なのだ。燃やしてしまうのは当人たちの気持ちを無碍にしてしまうものではないかの?」
「・・・。納得できませんが、承知しました。これらの書状は、私が責任をもって持ち帰りましょう。」
「うむ、そのようにしてくれると助かる。それでだ。残りの嘆願書について如何様にするべきかのう。」
「それこそ、アルノルト殿とマテウス殿の管轄では?ただの辺境伯であるあたしが口を挟む資格は無いかと思いますが。」
「無論、まともな嘆願書は私とマテウス殿で事務処理を行なう。問題は・・・。」
「ああ、私が言ったから従うといった内容の類のものですね。ふむ、これも普通の嘆願書と同じような事務処理で良いのではないでしょうか。私の言葉とは、陛下とアルノルト殿、マテウス殿と私が考えた演説の内容なのですから。」
「ふむ、確かに。アルノルト殿、それでは、狂信的なモノを除いていこう。ガイウス殿にもお手伝い頼めるかな。」
「ええ、いいですよ。しかし、陛下に許可をとらなくてもよろしいのですか?ここは陛下の執務室でありましょう?」
「ガイウスよ、気にせんでよい。余も手伝おう。執務室から出ると謁見を申し込んでくる者が多いのでな。しばらくは、他の貴族とは会いたくないのだ。」
陛下が遠い目をされて仰られる。何かあったんだろうなあ。でも、聞いたらきっと後悔する。だからそんな目で見られても聞きませんよ、国王陛下。
見てくださりありがとうございました。




