第146話 演説
「それでは、ガイウス殿が明日の12時に王城上空で演説を行うということでよろしいでしょうか?」
「うむ、余は構わん。」
「内務省としても問題ありません。」
「それでは、今回の議題はこれにて終了ですな。」
「はっ!?どういうことですか、アルノルト殿。先程は、まずは場所から決めようと言っていたばかりではないか。他の議題は?」
「ああ、ガイウス殿。貴殿が残りの全てを解決してくれました。場所を決めた後は、どのようなに王都の民をそこに集めるか。どのように分けるか。来ることのできない動けない民にはどのように告知をするのかなどを話し合う予定でした。しかし、貴殿の提示してくれた案はそれらを全て満たしました。ですので、話し合いは終了です。」
「演説の内容はよろしいのか?」
「ええ、マテウス殿と修正を加え、陛下にも裁可を戴きました。こちらになります。」
アルノルトさんから演説文を書いた用紙を受け取る。
「今日の昼の分と変わりませんな。」
「ええ、何処か問題でも。」
「ありませんな。ああ、マテウス殿、衛兵は各所に班か分隊を配置しておいた方が良いかと。暴れる輩がいるやもしれません。また、貴族以外でもこの件に関わっていた者がいるでしょうから、私の演説の前後は門の検査を厳重にお願いします。」
「衛兵の各所への配置は承知した。検査は既に厳重にしてあるのでご安心を。」
「では、これにて、明日の演説についての話し合いは終わりとなります。陛下、マテウス殿、ガイウス殿、ありがとうございます。」
「3人とも、ご苦労であった。ガイウスよ。明日は頼むぞ。」
「はい、陛下。」
そして、【召喚】したモノを片して、【風魔法】の障壁を解き、頭を下げ執務室を後にする。すぐに、グイードさん達と合流し、馬を受け取り王城を出る。そのまま、王都の正門まで行き、模造アルムガルト王都邸へと向かう。
屋敷に着くと、囲っていた壁に【召喚】で頑丈な鉄門を付ける。壁をいちいち取っ払ってまた設置するのが面倒くさくなっちゃった。鍵は代表としてグイードさんに渡す。分厚い鉄の門を開け屋敷の中に入る。購入してきた服を広げると歓声が上がった。主に女性陣からだけど。
そして、僕とグイードさん達は王都に戻り、アルムガルト王都邸へと向かう。用意された夕食を摂り、明日に備えて休む。
日が明けて5月5日土曜日になった。なってしまった。僕は今日の12時に王城上空で演説をしなければならない。昨日はそこまで緊張しなかったけど、いざ本番が目の前に迫るとかなり緊張するね。取り敢えず、朝食を摂り、軍装よりの服に着替えさせてもらう。メイドさん達がきっちりと選んでくれた服装だから問題ないとは思うけどね。
みんなの見送りを受け、グイードさん達と共に王城に向かう。正門での誰何はいつもの事だけど、それ以降はスムーズに進んだ。そして、僕は今、国王陛下の執務室にいます。勿論、宰相のアルノルトさんと内務大臣のマテウスさんがいる。
「おはようございます。陛下、宰相閣下、内務大臣閣下。」
「堅苦しいのは無しだ。ガイウスよ。本日の事はお主の双肩にかかっておる。無駄にプレッシャーをかけたくはないが、お主にしかできぬことだ。頼んだぞ。」
「はい、陛下。上手くやらせていただきます。」
12時の10分前には練兵場に向かう。練兵場には、近衛兵は勿論の事、武官さん達に文官さん達、他の貴族達もいた。僕は陛下と共に彼らの前に進み出て、翼を生やし大きく広げる。そして、飛び立つ。グングンと高度を上げ、王城の尖塔よりも高い位置に止まる。ここからなら、王都中が見渡せる。こちらから、見ることができるということは相手からも見ることができるということだ。
さて、時間になった。翼を最大限大きくし、【ライト】を使い、目立つように頭上に光点を出現させる。そして、【風魔法】を使い、王都の隅々まで僕の声が行き届くようにする。
「王都に暮らす者達、また偶然にもこの場に居合わせた者達に告げる。王城上空を見よ。私はフォルトゥナ様の使徒であるガイウス・ゲーニウス辺境伯である。これより、一昨日深夜から昨日早朝にかけて起こった出来事について説明していこうと思う。
街中の掲示板や噂話で既にどのようなことが起こったのか知っている者も多いことではあろうが、改めて聞いてほしい。今回、国王陛下のお名前を使用し私の殺害を企て、さらに軍との離間の計を企んだ者たちがいた。だが、安心してほしい。その者らはすでに私と衛兵隊の手によって捕縛されている。
また、国王陛下の側室であるベアトリース・オリフィエル他数名がその名を罪人の中に連ねていることに驚いた者も多いであろう。ベアトリース達は偽の書状を用意するために、連日の公務によってお疲れの陛下に対して、緊張がほぐれる夕食後に飲酒を促し、酔いが回り思考能力が低下したところで、白紙に署名と捺印をさせ、祐筆に圧力をかけ、ゲーニウス領にて帝国と黒魔の森に対応していた私を呼び出し、亡き者としようとした。
だが、王族の縁者であろうとも法から逃れることはできない。
そもそも今回の騒動は、王国に巣くう獅子身中の虫どもを一掃するためにピーテル・オリフィエル侯爵が命を懸けて行った義挙である。そう、彼は自分の姉であり国王陛下の側室であるベアトリース・オリフィエルでさえも王国に巣くう害だと判断した。私人では情があっただろうが彼は公人としての己を優先したのだ。
国の中枢からそれらを排除できた今、法に定められているモノよりも重い刑罰を課してしまうと独立している司法権の暴走に繋がりかねない。今回の事件の被害者である私もそのようなことは望んでいない。この声が聞こえている者達もそうであると私は信じている。今回の事件をもって我らの王国が法によって統治されている国であることを内外へと証明するのだ。このことには貴族であるとか平民であるとか身分については関係ない。我ら1人1人の思いが大切なのだ。
さすればアドロナ王国はより栄えるであろう。
ご清聴ありがとう。」
僕がそう締めくくると、ワッと王都中が沸いた。暴動かなと思っているとどうやら違うようだ。よく耳を澄ませてみると、
「「「「「王国万歳、国王陛下万歳、ガイウス閣下万歳、ピーテル閣下万歳!!」」」」」
うーむ、どうしてこうなるかなあ。僕については万歳は必要ない気がするんだけど。
見てくださりありがとうございました。




