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エピローグ.蠢く影

今回は主人公たちの視点ではありません。

以後注意書きとなりますので、読んでから話しを読んでいただけると幸いです。

※残酷な描写を含んでおります。

 一応15禁の範囲に収まっていると思いますが、それでも不快に感じる人はいると思います。

 今回の話しを飛ばして読んでいただいても、物語に大きく影響しません。


2021年7月8日 改訂

加筆、修正を行いました(2024/12/23)

 廃病院跡より程よく離れたビルの屋上から三人を見ている黒い影が動く。

 怒りに任せフェンスを蹴りつける。


「クソ、三ヶ月もかけて用意した僕の人形ヲ。許さないゾ、リュウヤ・カミシロ!

 まさか魔法まで使ウナンテ!

 情報屋から仕入れた話しの中に蒼い火を使うなんて書いてなかったゾ、次は炎への対策ヲシトカナクテハ……」


 黒い影は廃病院跡の屋上で(うごめ)く。

 指の先から銀色に光る筋が幾つも月明かりに照らされ(きら)めく。


「ウン? 何ダアレハ」


 人形を操るために延していた糸を回収していると、糸の先に青い光が灯っている。

 不信に思いつつも、人形を始末されてしまった以上は糸を回収しなければ自分の痕跡(こんせき)を残す。

 憎き魔法使いを始末するはずが、逆に自分が消されてしまう。

 気づかれる前にヤラなければならない。

 あいつらはあざ笑うようにこちらを踏みにじるのが好きなのだ。


「よう。こんな夜更けに何しているんだ? 人形遣い」


 不意に、背後からかけられる声。

 やはり罠だった。

 手元まで回収した糸の先に灯っていたのは魔法使いが人形を始末した時に出した残り火だった。

 声の方を向くと、そこには先ほどまで廃病院跡地にいた魔法使いがフェンスに腰掛け、青く光る眼でこちらを見下ろしていた。


「ヨクココガ分かったな、魔法使イィィィ!」


 魔法使いを睨みつけ、雄叫びを上げるとともに身体中に魔力を過剰気味に回す。

 相手の魔力に飲まれないようにする為と、魔法使いが得意とする豊富な魔力量に物を言わせた精神麻痺を回避するためだ。


「ほう。回路(サーキット)過負荷(オーバーロード)させてまで魔力を回すとは……魔法使いとの戦い方をよく分かっているみたいだな」

「オ前ヲ倒す為ニ編み出した術ダ」

「なら、こんな手もあるってことは知っていたか?」


 魔法使いがこちらを指さし、指先に魔力が急速に集まったと認識した瞬間、小さな魔力の弾丸は自身の体を直撃した。

 特に何も起きず、拍子抜けだと口に出そうとした時、


「グフォッ」


 自身の口からは血液が流れ出る。


「ナ、何ヲ、シタ!?」

「お前の身体へ《呪い撃ち(ガンド)》に乗せて圧縮した魔力を撃ち込んだ。

 呪い撃ち(コレ)自体は広く知られている魔術であり、対抗手段も備えているだろう?

 コレはそれに付け込んだ手法なんだよ。

 呪い撃ちだと身体に錯覚(さっかく)させ、本命の圧縮した高密度の魔力をサーキットへ直接打ち込む。

 過剰気味に魔力を回していた身体は耐え切れずに文字通りの決壊を起こす」

「ソ、ソンな姑息(こそく)な手を魔法使いの癖に使ウノカ!」


 驚愕(きょうがく)だった。

 魔法使いの癖に魔術師のような手を使うのかと軽蔑(けいべつ)した

 魔法使いの癖に小賢しい手を使い、ソレを語らう姿に強い怒りを覚える。


「ふむ。何故と来たか……

 答えはいたって簡単でシンプルなものだよ。

 お前らごとき虫ケラに魔法を使う価値などないからだ」

「――――――」


 魔法使いの言葉を聞き、何も言えなかった。

 自分には魔法を使われる価値すらない。

 どこまでもコケにされ、(みじ)めな気持ちも湧かず怒りと憎しみだけが残る。


「今回ハ、ワタシノ負ケノヨウダ……ダガ、必ズオ前ニ復讐(ふくしゅう)スル!

 我ガ一族ノ無念ヲ晴ラス為、我ガ誇リノ為ニ」

「お前の誇りだとか、一族の無念だとか言うのは聞き飽きた台詞だな。

 何故そうなったのか、始まりを考えずに聞いただけの理由で復讐されるこっちの身にもなって欲しいが……まあ、そこまでの期待はしていない。

 立ちはだかるというのならそれ相応の覚悟をしておけ。

 邪魔をするものにオレは一切容赦しない」


 魔法使いに動く気配はないが、コチラを見逃す気もないというのは、あの虫けらを見るような眼で分かる。

 何としてでも隙をつき、次の機会へ繋げるのだ。


「オレの隙をついて逃げ、次の機会に繋げようっていう算段なのだろうが、それは叶わぬ夢だ。

 お前はオレの日常に土足で踏み込んできたんだ。

 オレは、オレの前に立ち塞がるものに容赦しない」


 ゆっくりと近づく魔法使いの眼に油断も隙もない。

 死へのカウントが一歩、また一歩と刻まれるが、何としてでもこの場をしのぐのが先決。

 数体の隠し持っていた人形を展開し、魔法使いへ攻撃する。

 この程度の人形で倒せるだなんて微塵(みじん)も思っちゃいないが、足止めくらいにはなるはず。

 その一瞬の隙に離脱するのだ。

 

「その程度で足止めとは笑わせてくれる」


 魔法使いの瞳が強い青色に輝いた瞬間に展開した人形は一体たりとも残ることを許されずに焼き尽くされた。

 出鱈目(でたらめ)大概(たいがい)にしろ。


「もう一度言ってやる。

 逃げ切れるなんていうのは叶わぬ夢だ。

 その程度で足止めしようなんて片腹痛い」


 ここまで追い詰められては仕方ない。

 切りたくはなかったが、最後の手を切るほかないようだ。


「我々ヲ甘ク見ルナ魔法使イ!」


 人形操りに使う糸を広げ、這わせることで一つの魔法陣を織り上げる。

 魔法陣には先ほど地面に吐き出した血を媒介にして一つの術を構築。

 緊急時における拠点脱出にのみ使う人形遣いだけに伝わる秘術。

 

「外法勾引(カドワ)シノ陣」


 自身を中心にして発動し、すぐさま術の効果が発動する。

 これで確実に魔法使いから逃げ切れる。


「緊急脱出用の魔法陣魔術を人形遣いが使うとは……油断したよ。

 今回は仕留めそこなったが、まあ次の機会でも何も変わるまい。

 面倒ごとが先に延びただけ、そう思うことにしよう」


 魔法使いの悔しそうな顔が目の前に……そこにあるのは悔しそうな顔でも怒りを(にじ)ませた顔でもない。

 ただただ無機質な感情のない顔だった。

 底冷えするような恐ろしさを感じ、一刻も早くアジトに転送されるのを待つ。


「まあ、このままただ逃がすっていうのも(しゃく)に障るし……片腕の一つでも置いて行ってもらおうか」


 魔法使いの不気味な一言と共にその瞳が再び(きら)めく。

 転送される最中の身に危害は加えられないはずなのに、自身の右手が蒼い炎に侵されている。

 ゆっくりと燃え広がる炎を前に、悲鳴を上げるよりも早く術式用のナイフで自身のそれを切り落とす。

 鈍い痛みが広がるが、切り落としたそれは蒼い炎に焼き尽くされていた。


「魔法使イィィィィ!」

「今回は腕だけで勘弁しておいてやるよ。

 だが、次はない。どこに隠れ潜もうと必ず探し出して消し炭にしてやる」


 転移陣の効果が発揮され、魔法使いの姿と共に景色が薄れていく。

 影は魔法使いを前にその場を立ち去ることに成功した。

 失った代償は大量の人形と、自身の右腕。

 次の戦いの前に義手を用意しなければならなくなった。


今回の話しはどうでしたか。

注意書きを読んでから本編を読んで頂いたと思います。

主人公が善人ではないということを書いた話しです。


お読み頂き、ありがとうございます。

「面白かった」「続きが気になる」等、思って頂けましたら、ブクマ・評価頂けると大変励みになります。

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今後ともよろしくお願いします。

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