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24.大学からの帰り道で 『その弐拾肆』 魔眼点検

流哉の視点となります。

楽しんで頂ければ幸です。

 由紀子(ゆきこ)がハーブティーの味の違いに気付いたのは驚きだが、ハーブティーに詳しい人ならば分かるのかも知れない。

 月光草(げっこうそう)のハーブティーが野性味あふれる味ならば、今出しているものは飲みやすいモノだろう。

 月光草で作ったハーブティーを限りなく親しい友人に向けて出すモノならば、来客用としておいてあるハーブティーはレルたちが楽しむように置いてある嗜好品(しこうひん)

 流哉(オレ)の為に尽くしてくれるレルたちを労うためのモノだが、魔力が微塵も混じらないタダの茶葉はあまり消費してはくれない。

 あまり歓迎していない相手に出して無理やり消費させている。

 あくまでも月光草に劣るというだけで、それなりに良い茶葉を置いてある。

 たまに流哉自身が飲むこともあるからだが、レルたちに与えるモノに中途半端なモノは選ばない。


「まあ、それなりのモノを置いてあるからな。

 滅多に客を連れて来ることは無いが、誰が突然来ても恥ずかしくないように用意はしてある」

流哉(りゅうや)君はそういうところはしっかりしているわね」

「祖母の教えが良かったんだろうな」


 カップに注がれたハーブティーを飲み干し、次を注ごうとするレルを手で制す。

 これ以上飲む気はそもそもない。

 それよりもレルには頼みたいことがある。

 席を立ち、レルに向けて手招きをして呼ぶ。


「どうかしましたか?」

「左目の調整を手伝ってくれないか?」


 自身の左目を指さすジェスチャーを交えて伝える。


「分かりました」


 レルは直ぐにお茶と由紀子(ゆきこ)の世話をシルフェイアに引き継ぎ、厚手のエプロンを身にまとう。

 長椅子にクッション代わりの厚手の布を引き、準備が完了したことを告げる。


「主様、準備が出来ました」

「ああ、頼む」


 流哉(オレ)は用意された長椅子の上で横になり、目をつぶり準備をする。

 頭の下には直前に置いたのかクッションの感触があるが、わざわざ用意しなくて良いと言っているが一向に聴いてくれる気はないようだ。


 左目に向けて意識を集中する。

 いつも通りに発動するだけなら特に意識する必要は無い。

 

 瞳に映した全ての対象を(あお)き炎で焼き尽くす魔眼、概念の世界である『煉獄(れんごく)』へ赴き手に入れた『煉獄の業火』と呼称される蒼色に輝く瞳。

 生まれつき持っているモノではなく、自身の力で手に入れた能力ではあるが故に定期的にズレがないか確認する必要がある。

 流哉(オレ)のみでも出来るが、神話の時代に語られる大魔女である『レル=リューウェン』に手伝いを頼んだ方が確実である。


 手伝いを頼む以上、その相手を焼いてしまう訳にはいかない。

 無論、レルが燃やされる未来など見えないが、余計なことに時間を割きたくはない。

 今回は客人もいる以上、より気を張る必要がある。

 由紀子を帰した後にここへ戻って来ることを考えもしたが、流哉が若干の違和感を自覚していること、この違和感にレルが勘付いていること。

 薬草部屋を出る直前に言い出す可能性も考慮し、なら先に終わらせようと思い立った。


「準備はよろしいですか」

「ああ」


 レルの声かけに合わせて目を開く。

 真っ先に瞳に映るのはレルの顔だが、発動しかける魔眼を無理やり抑え込み、魔眼の神秘へ接続しやすいように回路を整える。

 レルが覗きこみ、その瞳と視線が合う。

 レル自身が持つ魔眼が開帳し、流哉(オレ)の魔眼へ魔力の接続を始める。

 周りから見ればただ見つめ合っているだけのようにも見えるが、時折レルが薬液を瞳に垂らしているのを見れば、目薬を差しているようにも見える。

 どちらにせよ、見られているのは気恥ずかしい。


流哉(りゅうや)くんは何をしているの?」


 気になったのか、由紀子(ゆきこ)が訪ねて来る。

 応えてやろうかと思ったが、今は魔眼の制御に集中しなければならない。


「主はレルと魔眼の整備をしているのです」


 流哉(オレ)の気持ちを察してくれたのか、シルフェイアが応えている。

 ディーアでは応える程の知識を持っていない。

 最適な行動をとってくれたシルフェイアの様子にいつものグウタラな姿を想像できようか。

 常にこうであってくれればと思わなくもないが、ソレはソレでつまらないし、シルフェイアにそうであれと強制する気もない。


「詳しいことを知りたいのであれば、主の調整が終わるのを待っていて下さい。

 それよりもお茶のお代わりはどうですか?」


 シルフェイアが上手く由紀子(ゆきこ)の気持ちを()らしてくれている。

 今が好機と見たのか、レルの調整も進む。

 魔眼に施してある制御用の術式の開錠が進み、それに伴い調整が進んでいる。

 流哉(オレ)に出来ることは暴走させないように制御することだけ。

 レルの腕を信じ、邪魔が入らないように気配りをしてくれているシルフェイアに感謝をしながらレルとの調整は進む。


「コレで終わりです」


 魔眼の調整が終了したことをレルが告げる。

 瞳を閉じ、魔眼に封印を施して再び開く。

 違和感はドコにもなく、相変わらずの腕の良さに感心する。

 その一方で、レルの視線が少し厳しいのを感じる。


「ありがとう。いつもながら見事な腕だ」

「誉めて頂くのは嬉しいですが、今後は暴走仕掛ける前に来てください。

 主殿の事ですから、そのようなヘマはしないと思いますが……」

「ああ、肝に銘じておく。

 一度や二度で調整が必要とは思わなかったんだが……過信し過ぎるのは良くないな」

「その通りです。

 まして主の魔眼は私たちが持っているようなモノとは違い、込められている神秘の濃度も違うのですから」


 レルから説教を受けることはよくある。

 そして、流哉(オレ)にも説教を受けるだけの理由に心当たりがあり、普段は心優しいレルを怒らせることに若干の罪悪感を覚えている。

 改善していく必要はあるが、無茶をし続ける限り流哉が謝り続ける事は変わらない。


今回の話し、どうでしたか。


流哉の魔眼の整備にはだいたいレルが手伝います。

流哉にとってレルが信用に値するということ以上に、レルの腕が優秀だからです。

魔眼の話しは次回にも続きます。


お読み頂き、ありがとうございます。

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今後ともよろしくお願いします。

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