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9.大学からの帰り道で 「その玖」

レクスウェルの視点となります。

楽しんで頂ければ幸いです。


GW中の更新、一回目です。

 セレイネは流哉(りゅうや)の話しが出たことで落ち着いたように見える。

 少なくともレクスウェル(オレ)にはそう見えている。

 これで、少しでも落ち着いて話しが出来れば良いが……


「さて、主殿が居ることは分かりましたが……レクス殿、私が来たという事はどういうことか、分かっていますよね?」


 セレイネの言葉に、一切の駆け引きなんていうモノの気配はない。

 本当に切羽詰まっているということか。

 そこまで愚かな判断をしないと思っていたが、レクスウェル(オレ)の見込み違いだったという訳か。


「砂鮫に動きがあった……そういうことか」

「ええ、何匹化の配下を伴って図書館へ向かってきています」

「時間の猶予はどのくらいある?」

「残念ながら、そう悠長に構えていられるほどの時間はありません」


 向かって来ているのが、例の一匹だけであればそう焦る必要は無い。

 だが、同胞(どうほう)(ともな)って図書館へ向かうというのは、砂鮫の一族が反旗(はんき)(ひるがえ)したと捉えても良い。

 たった一匹の裏切りであれば、流哉(りゅうや)も捨て置いただろう。

 今回、裏切り者の始末を許可したのは、流哉なりの恩情だ。

 何回も裏切りを許すほど、我らの主はぬるく無い。


 今、レクスウェル(オレ)にある選択肢は二つ。

 主の言いつけを守り、客人を守り続ける事。

 間違いではなく、思考が停止した選択肢だ。

 もう一つは、主の言いつけに背き、砂鮫狩りを完遂させる。

 命令には背くことになるが、結果としてこの場所の為の行動になる。


 どちらを選ぶべきか、考える余地など無く後者だ。

 主の不利にならないように、主の宝物を守るために。

 ソレがレクスウェルの門番としての仕事だ。


「セレイネ殿、案内を頼む」

「レクス殿!?」

「ミスティ殿、図書館には主の大切なものも収められている。

 あの場所への襲撃は許される事じゃない」


 多くの書物が収められ、主の為の本棚には先代から受け継いだモノもあったはずだ。

 それに被害が出ては、それこそ主の逆鱗に触れることになるだろう。


「それにしても、どうおびき出すんだ?

 アイツ等は魚にしては頭がいい。

 レクス殿が待ち受けていても、ソコには現れないだろう」

「何か考えはあるんでしょうね、レクス殿」


 ミスティの心配は十分な答えを用意できている。

 だが、杞憂が無いわけでもない。

 悪知恵が働くあの問題児を相手に、どこまで策がバレることなく行けるか。

 そこに対する考えをセレイネは問いてくる。

 完全な策でない以上、自身を持って回答は出来ない。

 そして、ずっと黙ったままの少女に対して、どの程度負担をかけるのか。

 考えれば考えるほど問題だらけだ。


「策はある。

 先導をしている、あの一匹だけを潰せば終わる。

 陸に上げてしまえばコチラの勝ちだ。

 釣り上げる為の算段もある……が、確実ではない。失敗した場合、長丁場になってしまう。

 セレイネ殿、その時は二人を守り抜いて頂きたい。

 少なくとも、主の客人を危険な目に合わせる訳にはいかない」


 自身の後ろに隠れたままの少女をセレイネに託す。

 砂鮫を切る以上、レクスウェルの近くはお世辞にも安全とは言えない。

 紀元前の魔術師である彼女ならば、レクスウェルの近くにいるよりは安全だ。

 主の客人に傷一つ付ける訳にはいかない。


「分かりました。

 主の客人の身の安全は私が保証します、我々の主と我が王の名に誓って」


 彼女が主と、生涯でただ一人仕えた王の名にかけて誓うと言った以上、何に代えてでもやり切ってくれることだろう。

 レクスウェルがすべきは目の前の魚を釣り上げる事。

 後ろを気にすること、心配することは、セレイネへの侮辱だ。


 セレイネを先頭に、図書館へと繋がる扉を潜る。

 図書館の入り口付近、砂漠の方へと視線を向けると、砂をかき分けて進む群れが見える。

 まだまだ十分な距離はあるモノの、視認できるほどまで近づいているというのは明確な契約違反だ。

 砂鮫という一族が、流哉に反旗を翻したことを意味している。


「さて、調子に乗っているだけなら見逃してやっても良かったが……主の書庫を狙った罪は重い。

 ここの守りを任されている以上、これ以上の振る舞いは許されない」


 流哉から暇を潰すのに良いだろうと与えられた愛用の釣竿を手に、糸の先へ骨で出来た釣り針を取り付ける。

 あの砂鮫一匹釣るくらい訳はない。

 ただ、釣り上げて、その場ぶった切るだけの単純な作業だ。


「さあ、砂鮫の長よ、力を貸してくれ」


 釣り針に使った骨は、先日亡くなった砂鮫の先代族長。

 博識であり、彼からは色々な知識を得た。

 力が衰えていたのもあるが、新たに生まれた変異種。

 砂鮫達は先祖返りだと言っていたが、アレはただの偶然が生み出した変異個体だ。

 それほどの力を持っているようには感じず、だから放っておいた。

 ソレに始末をつける為に、先代の亡骸から製作した釣り針で引導を渡してやる。


 僅かに残されている先代の砂鮫族長の力を引き出す。

 砂の海を泳ぐ奴等を釣り上げる為には、砂の中を自由自在に動き回り、獲物へ追い付くと同時に深く食い込ませるだけの力を引き出す。


 砂漠へ放り投げると、針は獲物へ向かい突き進んでいく。

 砂という物質の抵抗を一切受けず、獲物へ向かい一直線に突き進む。

 最短距離を駆け抜け、群れの先頭を突き進む個体へ針は伸びて行く。


 釣竿に突如として襲いかかかる衝撃が、獲物に食い込んだことを報せる。

 いつも通りに竿を思いっきり振り上げ、その先には無防備な獲物が居る。

 空中の無防備な姿を視界に収め、愛刀をゆっくりと引き抜く。

 一振り。

 ソレだけが全ての結果。

 視界に映るのは真っ二つになった獲物の姿。

 今回の騒動はコレで終わる。


今回の話し、どうでしたか。


遂に鮫退治が始まりました。

レクスウェルにとって優先するのは流哉の所有物と流哉自身を守る事。

その為に言いつけに背くことも良しとします。


無法者は退治できたのか。


お読み頂き、ありがとうございます。

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今後ともよろしくお願いします。

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