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3.大学からの帰り道で 『その参』

新山由紀子の視点となります。

楽しんで頂けたら幸いです。


先週は更新をお休みしてしまい、すみませんでした。

 鍵のかけられた研究室に二人。

 由紀子(わたし)は少し不安を覚えた。

 流哉(りゅうや)とはまだ彼が幼い頃に会ったきり。

 少し年下だけど大人びていた子、悪く言えば(しゃ)に構えた子だった。

 恩師の過去を知り、少しの驚きと何故か納得してしまった。

 幼少期からの知り合いと恩師が割り切った上で戦場にて相対していたというのは、衝撃過ぎたけど……


「さて……そこまで警戒しなくていいさ。

 別に取って食う訳じゃない無いし、どうこうしようって訳でもない。

 単純に誰にも邪魔されない場所に案内してやろうと思っただけだ」


 誰にも邪魔をされない場所?

 既に今いる研究室には鍵をかけられていて、室内には由紀子(わたし)流哉(りゅうや)の二人きり。

 今更何を気にするというのだろうか。

 由紀子はこんな場所に二人きりだという状況に戸惑っている。

 そもそも、恩師が魔術なんていうトンデモに関わっている人で、幼馴染の一人が魔法使いだというトンデモ話しまで出てきている。

 既に由紀子の処理能力を大きく逸脱しているというのに、まだ何かあると言うのか。


「既に外から鍵をかけられたこの部屋でも十分だと思うけど?」

「いや、この部屋程度じゃオレたちは気を許したりはしない。

 こんな所で何の対策もしないで話しをするなんてただのマヌケか素人だ。

 まあ、少し待って居てくれ。

 今道を繋げるための調整をしているから」


 流哉(りゅうや)はそう言うと目を瞑り、また研究室には静寂が訪れた。

 由紀子(わたし)は何をするのでもなく、黙っていることにした。

 何かを言おうと口を開いたものの、言葉を発することは出来なかった。

 流哉の雰囲気にのまれたと言えばそこまでだけど、そんな生易しいモノじゃない。

 喋ることを由紀子は許されなかった。

 止められた訳でも、命令された訳でもない。

 喋るということを由紀子の本能が拒否した。


「よし、何とか繋げられそうだな。

 本当に面倒な結界を構築してくれたもんだ……」


 流哉(りゅうや)がそう言うと、今までの重く圧し掛かったような雰囲気が一瞬で消えた。

 若干イライラしているようではあるものの、先程よりかはだいぶマシに感じる。

 おそらく私に向けられた感情ではないからだろう。


「さっきから何をしていたの?」

「ん? ああ、魔術師でもなければ神秘に関わったことのない由紀子(ゆきこ)さんには分からないか。

 やろうとしているのは扉を繋げること。

 別の場所とこの場所を一時的に繋げるための扉を開けようとしているって感じかな。

 簡単に言うと、目的の場所に繋がる扉を呼んでいるって感じか」


 流哉(りゅうや)の言っている事は半分も理解できない。

 とりあえず何処かへ通じる扉を呼ぶということらしい。

 ハッキリ言って、何をしているのかなんて分かる訳がない。


「まぁ、こういうのは見た方が早い。

 百聞は一見に如かずと言うが、正しくそれだ」


 流哉(りゅうや)由紀子(わたし)の様子を見てか、『はじめるか』と言って何かをしだした。

 理解できない言語のようなモノを口にして、足元には幾つかの円と幾何学模様(きかがくもよう)で構成された何かが光っている。

 もれなくその何かにもドコの言語か分からないモノがビッシリと書き込まれていた。


「さあ、扉を開くぞ」


 流哉(りゅうや)がポケットから取り出した鍵のようなモノに由紀子(わたし)は視線を奪われた。

 メッキなどではないことが一瞬で分かる純金の鍵の形をした何か。

 おおよそ、この世のどの扉であっても相応しいものは存在しないと言い切れるほどのモノ。

 そんなものでもしっかりと相応しい扉が存在する。

 先ほどまで本棚しかなかった場所に扉だけが現れている。

 堅牢という言葉がコレほど相応しい扉は存在しないと、この扉は入る資格無き者を拒むと無意識の内に理解した。


「こんな所へ呼び出したのが気にくわないのか?

 でも、呼びかけに応えてくれてありがとう。

 あまり外で扉を開かないようにするからな」


 流哉が自身で呼び出した扉に向かって話しかけているのを見て、若干引いてしまった。

 それでも流哉があの扉を大切にしているのは伝わってくる。

 ただ、その扉には鍵穴が存在しない。

 急に現れた扉というのも普段の由紀子(わたし)であれば処理できない情報として混乱していたと思う。

 今回は魔法使いだの、恩師が戦場に行っていただの、既に混乱している状態だからだと自己判断を下す。


「ありがとう」


 流哉(りゅうや)がそう言い、黄金の鍵を縦に一線。

 堅牢な扉は最初から開かれていたかのように口を開ける。

 開かれた先に広がるのは、とてもこの世のモノとは思えない景色。

 砂漠と忠誠の町並みと深い森が混在している景色なんて現実にある訳がない。

 そして浅黒い肌の男性が槍を構えて立っている。

 コレが現実の景色であるならば、由紀子(わたし)は妖精やドラゴンが居ると言われても信じるだろう。


「出迎えご苦労、レクス」

「おいおい、正門が開くからいよいよ侵入者が来たのかと思えば……まさか主殿が鍵を使って入り口を開けるなんてな」

「こんなことはそう滅多にないさ。

 今回は特別。

 オレだって正門の扉を召喚するなんてことはしたくない」

「よく召喚に応じたもんだな……まあ、入ったらどうだ?

 後ろに居るのは客人か?」

「ああ、オレが招いた人だ。

 しっかりと客人としてもてなしてやってくれ」


 由紀子(わたし)流哉(りゅうや)に招かれるままに入り口をくぐる。


今回の話し、どうでしたか。


由紀子の視点となる珍しい回かと思います。

流哉が邪魔されない場所として選んだのは、自身の宝物庫の中でした。

久しぶりにレクスウェルも出てきました。

何故、彼が出迎えたのかは、次回の話しで。


お読み頂き、ありがとうございます。

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今後ともよろしくお願いします。

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