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西旅007.お礼の握手?おや、嬉しい。

監視員と話しをしていると誰かが近付いて来る気配がな。

そちらへと目を遣ると、さきほど助けた女の子と、彼女に付き添うように寄り添う女性監視員だった。


少しモジモジしつつ目を伏せがちに俺へと近付いて来た彼女が俺へと告げる。


「あのぉ~、あのですねっ!

 アナタが助けてくださったって、くださったって聞いたんです。

 私ぃ、空から落ちているように思えて慌てちゃってて…


 訳が分らなくなってて…気が付いたら、この人に看病されてたんです。

 あんなに恐いこと、初めてで…


 えっとぉ…私ったら、なにを言ってるんだろ?


 そうじゃなくててですね。

 アナタが助けてくれたって聞いたんです!

 救ってくださって、本当にありがとございましたぁっ!」


手を差し出して来る。

これは握手と言うことなのだろうか?


東洋人と違い西洋人は挨拶や感謝の念を伝える際には握手をするのだとか。

俺としては親しくなった西洋人、いや、外人さんはいないからさ、握手を挨拶や感謝の念として行って来る相手は初めてなんだよ。

いや、手を取らないのは失礼となることは知ってるからな、流石に手を取ったけどね。


しかし…艶々で滑々した柔らかく小さな手に、思わず驚いてしまったぜっ!

いやな、姉と妹が居るから女性が不得手と言う訳でもないんだけどさぁ…

2人が怒るかもしれないが、絶対にこの子の手の方が綺麗だぞ、これ。


う~ん、知り合いには居ないから断言できないけどさ、御嬢様って感じの華奢な手だな。

姉のように母の家事を手伝っているような手ではない。

妹のように空手や剣道なんかの武道に手を出しているようなてともな。


姉と妹とは違う意味でさ、思わず守ってしまいたくなるような感じの子って言えば良いのか?

今迄に出会ったことのなかったタイプの女の子だね。


俺が手を軽く握り返すとな、含羞(はにか)むように俺へと告げて来る。

この場合に俺の目をジィィッと見て来っからさ、思わず目を背けたくなるのを堪える訳なんだけど…

うん、結構、辛いぞ、これ。


「アナタは命の恩人です!

 ありがとうございましたぁっ!」ってね。


うん、それは、さっき聞いたけれど…改めて言われると更に照れ臭いな、これ。


「いやいや、そんな大層なことはしてないからさ。

 俺が先に潜っていて居合わさせただけなんだよ。


 それにさ、あの場に居て見て見ぬ振りなんか普通はできないから。

 当然のことをしたまでだよ」


そう俺が告げるとな、監視員の男性がな。


「いや、それはちょっと…

 我々のミスを補って貰っておいて言うのは筋違いかもしれないが、ちょっと待って貰えないかね」っとね。

なんだろね?


「確かに溺れている人を助けた君の行為は賞賛に値するだろう。

 けれど、素人が無闇に溺れた者に近付くのは関心しないな。

 助けようとして逆に巻き込まれて亡くなるケースが多いのが実状なんだ。


 出来れば、我々へ知らせて欲しかった所だな」っと。


うん、彼が言うのは間違いではない。

素人が無闇に救助へ向かい身罷ったニュースが毎年流れているからさ。

けどなぁ。


「いや俺さぁ、ある意味では素人じゃないから」っと告げるとな「えっ」って驚かれたよ。


「俺、こう見えてもシュパングの剣士だから。

 玖藤流って言う龍覇術剣士の端くれさ。

 そんな俺がさ、目の前で溺れてる者を放置なんてしたら後で折檻ものだから」


俺がシュパング剣士って名乗ると…「オウ、シュパング・サムライかぁっ!」っと。


いやいやサムライってさぁ、何時の時代やねん。

まぁ、ある意味では間違いではないがな。


玖藤流は今では少ない古武術の流れを汲む流派であり、古来より龍覇術の技を面々と受け継いでいるからなぁ。


シュパングの剣士、それは古来に存在した侍や武士と言われた武人の流れを継いだ者達のことだ。

そして俺達剣士は天帝様の士として認められている存在でもある。


今では過去のような地位を失ってはいるのだけれども、何かあれば天帝様の士として立ち上がる存在でもな。

その力は世には秘匿されているから詳しくは知らされてはいないんだけれど、一騎当千どころでは無い武力を秘めていたりな。


特に龍力溢れるシュパング内での剣士ならば近代兵器を一蹴できたりするぞ。

内緒だけどな。


なにせ龍覇術てぇのは御伽噺や漫画、アニメ、ゲームなんかで言われる魔法や魔術に近い…いや超える力を誇ってたりする訳よ。

この力を刀に纏い戦ってたってぇ言うから驚きさね。


実はな、現在のシュパングの地形は過去の戦闘の名残なのだとか。

島の中央へ須弥山(しゅみせん)と言う世界最高峰と言われる霊山を頂く中央島・麒麟。

天帝様が座す地であり、世界遺産でありながら入山を禁じられ立ち入ることが叶わぬ山を崇める地としても有名だな。


その中央島を挟むように東西南北に菱形に近い列島が存在する。


南の島である炎島(えんとう)・朱雀。

北の島である氷島(ひょうとう)・白虎。

西の島である巌島(がんとう)・玄武。

東の島である嵐島(らんとう)・青龍。


実はな、この4島と中央島は1つの島だったそうな。

そう、過去の戦乱にて5つになぁ…いったい、どんな戦いが繰り広げられたんだ?

随分とヤンチャな御先祖様達だよなぁ。


まぁ、5つの島の間には零れ落ちるように残った島々が存在するんだけど…

その島々を調べれば削り取られたような名残が見付かるそうな。

なにしとんねんってね。


そんな龍覇武士達の力も平和な世界となった時には無用とな。

逆に人々に恐れ慄かれることから統治に邪魔と。

だから武威を隠し世を忍んで生きることとなっちまったんだとか。


まぁ、ぶっちゃけ、須弥山内では獣龍や龍鬼なんちゅう物騒な存在が跋扈していたりする。

そんな存在が世に出ないように間引いたり調整する仕事が現在の義務だったりな。

いやな、そんなら仕事として金くれってばよぉ。


それが仕来たりであり、古来から与えられた役割なんだとか。

っうことでさ、俺も何度か須弥山へと。

だからさ、それって児童虐待ってレベルを超えてるかんなっ!


ちと嫌なことを思い出したりしたけどさ。


「いやいや、サムライではなくて剣士ね、剣士。

 まあ武道の1つだと思ってくれて良いですよ。

 鍛練の1つに水練も含まれてますから、水難救助なんかも鍛錬中に何度も行ってたりしますよ。


 まぁ…助けに行って巻き込まれたこともありますから…」


思わず遠い目に。

命じられて救助に行ってさ、逆に溺れて助けられて…ははは、嫌なこと、思い出しちまったぜっ!

まぁ、子供の頃の話しさね。


っか!小学低学年の俺へ何させとんねんやっ!

ったく、玖藤流の連中ときたら…特に爺ちゃんね、言えんけどさっ!

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