西旅053.毎日コレ食ってるって?けしからん!
グレッグ曹長が行ってしまった後、俺はルイ伍長に連れられて食堂へ向かうことに。
本来は既に閉まっている時間なのだが、体験入隊者と言えば客扱いらしく、しかも身体検査と体力測定で遅れたとなれば提供は吝かではないらしい。
むろん、ルイ伍長は既に食事は終えているそうな。
「まぁ、軍隊食なんで、余り期待しないでね」っと。
「美味しくはないってこと?」
そう尋ねると、困ったようにな。
「流石に不味いってことはないんだけどさ。
街のビストロ程度ってとこかな。
旅行客なんでしょ?
なんだかさぁ、海外から来る人達って妙にシュランプ料理に幻想を抱いている人が多いみたいなんだよ。
だからさ、レストランレベルって思われても困る訳」
分る?って感じでな。
いや、ま、シュパングへ来る海外からの渡航者達も似たような感じだしなぁ~
けどな、流石に、それは思わないって。
「いやいや、俺の大学の学食レベルがどれ位かしらないけどさ。
ま、そのクラス程度って思っときゃ良いってことっしょ?」
ってもな、OBやOGからは、昔とは比べられん程に美味くなったらしいからな、家の大学食堂はさ。
「う~ん、どうだろね?
まぁ、量だけはあるから」って言いながら連れて行かれた食堂。
おおっ、結構な広さがあるねぇ。
外が明るいかんな、食堂内も明るいってね。
っかさぁ…酒臭くね?
「あはははっ、消灯間近までは酒場と化してるからねぇ。
摘み程度は提供してるんだよ。
だから食事も一応は頼めばね。
ただし、時間外だと軽食程度しか出して貰えないんだよ。
ま、任務などの正式な理由があれば、申請したら出して貰えるんだけどね。
今回は、そのケースだね」
なるほどねぇ。
軍隊ってヤツぁ規律が大事なんだろさ。
時間にルーズってぇのは頂けないってね。
だから理由なしに時間外での食事提供は断ってるってことかねぇ。
「ま、特例でも食べれれば良いさ。
いい加減、腹ペコでさ」ってからカウンター内で腕組んで此方を見ているオヤジの元へと。
此処さぁ、オヤジ率、高ぇよなっ!
っか、禿頭率も高過ぎじゃね?
半袖シャツから出てる二の腕や胸の筋肉、腹筋もシャツから透けて見えるほどにバキバキってね。
顔は曹長様より温和だが…そのガタイを見たら避けて通りたい人種様だよね。
そんなんおもいながら、そのオヤジの前へとな。
「すんません、今日、体験入隊した龍秀・矢鷹って言います。
グレッグ曹長様より話しは行っていると思うんですが、夕食貰えますかね?」って言ってみた。
「おぅ、話しは聞いてんぜぞ、坊主。
家は決まった料理しか出してねぇっ!
だから好き嫌いは許さんし、残すことも許さん!
出されたら黙って食えっ!それが漢ってぇもんだっ!
分ったか?分ったら持ってけっ!」
いや、返事も受諾もしてないんっすが…強制ですか、さいですか。
はぁっ、美味いんかねぇ?
って、料理が乗ったトレイを持ったおばちゃんが奥から出て来て…
カィィ~ンッ!
ありゃ痛いっ!貝杓子の一撃ぃっ!
おっちゃん、頭抱えて蹲ってんよっ!
「こん宿六が偉そうにして御免ねぇ。
まぁ、こんなんだけどさ、口に合ったら嬉しいねぇ」って、おばちゃんがトレイを差し出してくれる。
「席に着いたらさ、パンとか持っててあげるからさ」
そう言ってから奥へ。
優しそうな、おばちゃんだったんだが…チラッと、未だに頭抱えて蹲るオヤジを見てから席へと。
うん、突っ込まねぇぞっ!
しかし…表面がパリッパリのチキンがな。
香辛料を付けて焼き上げてんのかな?
マッシュポテトとポタージュスープ。
チーズが盛られた皿。
野菜とパン、ドリンクが欲しい所って思ってたらさぁ、おばちゃんが持って来た。
って、いやいや。
1人分にゃ多過ぎないか、これ?
「兵隊さんは良く食べるからねぇ、少し減したんだけど…食べられるかい?」って。
むっ!キャツらがニヤニヤと此方を伺ってたのは、そう言う意味か!
なれば、この龍秀、受けて立とうではないかっ!
なぁ~にぃっ!龍力を制御して消化吸収を強化すれば、この程度ぉ、なんてことないぜぇっ!
「軽いもんですよ」ってね。
っか…美味い…美味いぞぉぉぉっ!
何が、大学の食堂レベルじゃ、ヴォゲェェェッ!
「お、美味しいっすね。
このレベルの料理を毎日?」
「あらあら、お世辞が上手い子だよぉ~」って嬉しそうに、おばちやん後に来たオヤジの背中をバンバンと…
うん、見なかった。
しかし、マジで街のビストロ並、下手したら上じゃね?
量もあるしさ、コレを毎日なんて、なんて贅沢な…
一昨年の夏休みなんてぇ、須弥山頂上の天龍皇様前へと飛ばされて死に掛けて…
その後、決死の下山ってね。
食い物は生。
食うか食われるかってぇ生死の狭間を潜り抜けて…
あんな食事?と比べたらさぁ、街のビストロ料理なんざぁ天上の味ってね。
そんなことを思いつつ食べてたらさ、完食です。
ごっつあんですってね。
「ほぉ~ぅ、本当に、全部食いやがったか、大したもんだ。
どうだ、坊主、一杯…」
「アータァ?」
「あははははっ、それは今度で。
正直、体力測定で汗掻いて気持ち悪いんっすよ。
シャワーを浴びたいんでね」
「シャワールームの使用時間も制限がありますから。
では。
リュシュ少兵客、案内するよ」
ルイ伍長が告げてから席を立つ。
彼は彼で軽く遣ってたようだな。
俺の世話で、済まんね。
そしてシャワールームへと。
個室なんだが、スルリとガードナーが滑り込んで来やがった。
なんぞ?
『ピピピプピ。
マスタ、イチド、ネックレス、ハズス、コトヲ、スイショウ』ってね。
なんだろね?
そう思いつつ、封印具のネックレスを外し…
あ、ぁあ゛ぁああアーっ!なんてぇこったいっ!
伊藤さんから借り受ける時に「精神的にハイになる」ってたが…
色々と遣らかしてんぞ、コレぇっ!
どうすんだよっ!
っても、封印具なしじゃぁ…封印していて、あれだぞ。
完全に加減を間違えてんだが…高揚した分、抑えが効いてねぇっ!
ハイ状態だったから気にもしてなかったんだが…
いや、こんなん寄越した伊藤さんが悪い、そう決めたっ!
開き直って参りましょうかねぇ。
大丈夫なんか?これ?




